OpenDolphin と職務著作と GPL

OpenOcean 怪文書の論旨展開などを見るに小林慎治という人は「職務著作」の概念を知らなかったのではないかと思う。

われわれが「著作権」で思い浮かべるのは、音楽作品や文芸作品のそれだ。が、そこまで創作性の必要とされない工業製品のマニュアルなども立派な著作物だから、それらの著作権の保有者を決める必要がある。

これらの権利関係は、著作権法15条で規定されている。

第十五条 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
2 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

日本の場合、プログラムの法的位置付けは、既存の著作権法の枠組みに後から押し込むような格好で規定されたので、条文でも 2 として別に取り扱われている。

社内やフリーのプログラマが、特定のプロジェクトにジョイン・・・(笑)、いや参加する場合、よほど特別な場合を除き、権利関係はデフォルトではこの条文が適用されている。
いわゆる職務著作というもので、この場合の著作者財産権は文句なしにそのプロジェクトを企図した法人だ。
問題は著作者人格権だが、職務著作が成立した時点で著作者人格権も法人が所有するという解釈も存在する。実務的には、参加するコーダーに事前に「著作者人格権を行使しない」旨の契約を取り交わしておくことで法人所有にしておくプロジェクトが大半ではなかろうか。(ここら辺の情報は検索するとたくさん出てきます。事前取り決めが曖昧だと外注業者などがソースコードを勝手に公開しても咎められない、というたまに世間を賑わす事態になる)

で、OpenDolphin/OpenOcean の文脈に話を戻すと e-Dolphin の時代から、このプロジェクトは職務著作的な取り扱われ方をしていたと思う。
例外は、参加者が後で学会発表などで使いたいというような場合で、コーダーがそのコードを書いた瞬間から著作権が法人に移ると考えると、公表権を行使してそれを主題に学会などの公的な場で広報することができなくなるという不都合が生じる。これを避けるために(内的な「別段の取り決め」などで)その箇所だけコーダーの著作者人格権を残しておくということはある。
思うに Junzo SATO さんの件はこれだったのではないかと思う。

だから、OpenDolphin は、「職務著作に GPL を適用したプロジェクト」とみなすと実態に近く、また興味深いとも思うのだが、怪文書には残念ながらこの視点は全くない。

怪文書に限らず、法曹資格を持たない「オープンソース評論家」が取り扱う OSS ライセンス論は、法的な側面を軽視したものが多い。
が、これはかなりおかしい。
現在、ほとんどの近代国家は法治主義であり、日々の生活の営みの国レベルでの基本的な秩序を定めているのは法だ。つまり、書いたり、歌ったり、プログラミングしたり・・・の権利関係を定めているのは、日本の場合は、著作権法や締結された条約ということになる。
が、プログラミングに関係する領域で著作権法を尊重し過ぎてしまうと、ソースコードの2次利用がしにくい、などの不都合が生じる。そこで考え出されたのがコピーレフトという概念で、文書としてある程度体系的にまとめられたものが OSS ライセンスだ。だから、OSS ライセンスは著作権法下での「使用許諾」(最近は 「使用許諾」+「契約」)と考えると理解しやすい、と大半の初学者向けのテキストには書かれている。
しかし、細かな議論になると、なぜか、この基本事項を忘れてしまう「評論家」が多い。

 

(適宜加筆修正)

 

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所属組織の公的な見解なのか個人的な意見なのか、コメントだけからでは判断してみようがないからです。

例えば、以前に以下のようなコメントが京都大所属(当時。保健医療科学院をへて現在は岐阜大)の小林慎治という人からありました。
「公共に益する」といった表現などからさも所属組織の公式見解のような印象を受けます。

ですから、このような場合には、
・京都大の IP アドレスから送信されているため、これが京都大の公的見解なのか
・その上で京都大がこのアイコンの使用許可を得ているのか
調べる必要があります。
この作業には、それなりの労力がかかりました。
内容的に吟味する前に、形式的に違法性がないか確認するだけでこれだけの手間がかかるわけです。

内容に関してはここでは細かい話はしませんが、一般に知的財産権(著作権も含まれます)と言われる事柄に関することです。コメントの「公開」を要望されても、そのコメント関連情報が著作権法的に違法が疑われる場合は、当然ですが掲載・公開はできません。

以上、よろしくお願いします。

 

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その他、『OpenOcean 騒動』などもご覧ください。参考になると思います。