X のアカウント「るま」という人が OpenDolphin 2.7.1 のソースコードを使って、Java のアップデート対応・クライアントのブラウザ化を目指した OpenDolphinNext というプロジェクトをやっている。
特徴的なのはコーディングを全て AI エージェントで行うという点だ。流行りの言葉で言えばバイブコーディングということになる。
OSSxAI と随分と野心的な試みで初期の頃(2025年11月頃)などは好意的に見ていた。実際、OpenOcean 開発チームのメンバーもそれに関する記事などを書いていた。
ところがその内容がるま氏は気に入らなかったらしく、軽く苦言を呈された。
当チームからするとそれは違和感のある内容だったし、一般に OSS コードを再利用する際に注意しておかなければならないことはある(コードが公開されているからといって無条件に利用できるわけではない)と思うのでそれらに関して述べる。
OSS コード再利用時の尊守事項とレビュー
るま氏がネット上でいわゆる chardet 問題(参考欄参照)に言及するものだからわかりにくくなるのだが、OpenDolphinNext(以下、Next などとも呼ぶ)は、現行の設計では AI による完全な再実装は実現できない。
というのは、モデルファイルはほぼ 2.7.1 のものだから。
従来のモデルファイル(群)である common プロジェクトの infomodel パッケージは、persistence プロジェクトに移動しただけで内容はほとんど変わっていない。
したがって Next のライセンスは GPL から変更できない。
われわれが Next のコードを調査したのは、技術的興味ももちろんあるが、改変が GPL の制約を満たしているか確認したいという動機に基づいている。
ところが、これがるま氏には気に入らなかったらしく、この記事で以下のようなコメントをいただいた。

われわれが違和感を持っていたのは、るま氏のこれまでの GitHub の使い方が独特(例えば、プルリクエストを送ってもレビューしない、指摘されるまで issues を開けないなど)だったという点だ。
ブロックするしないは個人の判断で、第三者が決めるものでもその可否を咎める性質のものでもないと思うが、ブロックした大槻氏がいうには
「指摘されてから issue を開けたにもかかわらず、さも彼が自発的に開けたかのように主張するので、違和感を持ち、距離を置こうと思ったから」
だという。
確かにるま氏は言われるまで issues を使う発想はなかったようだ。本人も認めている。

矛盾したことを言っておきながらそのことを認めず威圧的な態度を取る人をブロックするのは自然なことだし、GitHub の使い方が慣例的なものと異なる以上、議論を GitHub に限定する必然性は薄い。
細かいことは置いておくにしても dolphin が一種の「GPL ライセンス付きの公共財」になっている現状を考えると、ライセンス違反がないかチェックされるのは仕方ないと言える。
2018年頃から、われわれのチームはコミュニティ内では dolphin 2.7(m) 系の一種のゲートキーパーのような役割を担わされてきたように思うが、再利用時のコードをチェックするのはなにもわれわれだけの専売特許ではない。全くの第三者がレビューすることはありうるし、OSS の性質から言えばそちらの方が好ましい。だから、われわれだけを納得させれば、ライセンス的には問題ないということにはならない。
どうか第三者の意見を聞き入れる耳を持っていて欲しいと思う。
もちろん、クローズドで開発し個人で利用する分には、こんな制約はなく、改変したソースコードを公開する必要もありません。
われわれはあなたが誰なのか知らない
るま氏は、ご自分の出自が確定している、自分が何者なのか世界に明らかにしているかのように振る舞うが、これは誤認だろう。
われわれはこの人がどういう人なのか全くと言っていいほどわかっていないし、レビューするのにそのような情報はそれほど重要ではないと考えている。
確かに彼が開発したというアプリの案内ページを辿っていくと現実の医師の実名と思われる表記(Hayato Maruguchi)は見つかるのだが、かなり目立たないように書かれているし、これがあったからといって「るま」氏がその医師(丸口勇人氏?)と一致するとは限らない。
上記のコメント欄のやり取りからわかるように「あなたは XX さんなのですか?」と聞いても答えないのだから、むしろ異なる人物、医師の SNS の実運用を代行しているような人物だと考えるのが自然だろう。dolphin プロジェクトでは、開発したと自称する医師の一種の「代行」をするような人が過去にもいた。
では、どういう人なのか?になりそうだが、実はわれわれはこの人がどういう人で、どこに所属しているかといったことは興味がない。現時点での関心は「GPL の各種条件が守られているか」である。
ここでも触れるかも知れないが、レビュー内容にしても個人の特定につながるような情報は使っておらず、やっていることと言ったら「この構成では、このような結果になる(はず)で、実際の挙動もこれこれだ」といったよう無機質な技術的な内容ばかりである。
これがどうして「実害のある個人攻撃」になるのだろうか。
また、「実害」というのも不適切な表現のように思う。
OpenDolphinNext は現時点(2026年4月)でもプログラム自体が完成しておらず、われわれの論評によってアプリの使用者数が減ったというようなわかりやすい「実害」は出るはずもない。どのような不利益があるのかわからかった。
実際のレビューは「現状のモデルでは、これこれというデータ構造になるからこのように回避した方がいい」といったもので、むしろリリースしてしまった後に起こりうる実害を事前に回避するような実務的な助言だ。
技術的内容が汲み取れないためにレビューを悪口のような批難として捉えてしまったのかもしれない。
実際、参考にあげた記事では
(引用者注:BLOB から JSONB 形式への変更は)見る人が見れば PostgreSQL での保存形式が変わっただけで機能は一緒とわかる。
これは、AI が自力で発見したものではない。
モノが電子カルテであることを加味すると、形式を変えた分、むしろ改悪になっているくらいなんだが?
という表現があるが、「改悪」を非難のように捉えたのかもしれない。
OSS コード再利用時の尊守事項
今回の件に限らず、一般的に OSS では以下のようなことは普通におこる。
・見ず知らずの第三者からレビューされる可能性はある。
・レビューは必ずしも好意的なものとは限らない。
・レビューは自分の管理できないところで行われる可能性はある。
などなど。
煩わしく感じられるかもしれないが、逆にこのような制約のない世界、つまり
・レビューは必ず好意的でなければいけない
・PR はマージしても自分のものになる
・批判的見解も自分が管理している場所で自分が理解できる形で説明されなければならない。そうでないものは誹謗中傷とみなせる
という世界があったら、そちらの方が気持ち悪いではないか。それはもはや OSS ではないだろう。
(続く)
OpenDolphin 2.7m 開発チーム
参考
chardet 問題
Python の文字エンコーディング推定ライブラリ chardet を AI を使って再実装しライセンスを GPL から MIT を経て 0BSD に変えてしまった案件。再実装を行なったのは現役メンテナで、作業をわずか5日間で完遂させている。コーディングしたのは AI かもしれないが、アルゴリズムに通暁しているメンテナが関与している以上、AI が新規にロジックを書き換えたというストーリーは信頼性に乏しくライセンスの変更が成立しているかは議論を呼んでいる。実際、初期 author は GPL 違反を主張している。
どちらにせよモデルファイルをほぼそのままの形で流用している Next とは事情が異なる。
『電子カルテ自作派 2025』
上記で触れたが、コメントが残っています。
『バイブコーディングで電子カルテはできまぁす!』
実は、彼はこれにもコメントを残している。かなり問題ある内容なので公表は手控えています。
『OpenOcean/Dolphin GPL 2026』
現状の OpenDolphinNext の構成だと従来の dolphin 2.7 系のデータとデータ互換性はありません。また、この構成を考える際、AI がうまく設計できず、人的資源が投入されています。軽めですがその経緯が解説してあります。
dolphin の名を冠した電子カルテということであれば、データ互換性はチェックされるべき事柄です。このレビューを嫌う理由はないと思います。