PHAZOR.JP

ところで、本サイトのドメインは phazor.info で、そのトップページは英語表記になっている。

もともとは HorliX 案内用のサイトだったので、英語ページ作成が優先になったのは半ば必然なのだが、今の今までトップの日本語ページは存在していなかった。
日⇄英切り替え表示も考えなくもなかったのだが、一手間かかる。

その一方で、ここ数年、サーバープログラムも個人的には書いていて、ドメイン(hogehoge.org とか人間が認識しやすいサイト名)もまったくないサーバで実験みたいなことをたびたびおこなっていた。

この前、apache サーバを立てる機会があったのだが、「そういやこれ利用してウェブサイト作れるなあ」と思いつき、結局、ドメイン名も取得してこれを PHAZOR.INFO の日本語サイトとした。なお、ドメイン名は phazor.jp 。

具体的にはこちら https://phazor.jp/

もともとテスト用サーバだったのでサーバマシンのスペックはそれほどいいものではないし、今でもサーバプログラムなどを走らせていたりするので、それほど凝ったコンテンツは載せられないと思うが、デモ兼用のサイトとしてはちょうど良いと思う。しばらくは、そういった運用をしていくつもりだ。

本サイト同様、phazor.jp の方もよろしくお願いいたします。

 

 

猪股弘明
フェイザー合同会社代表

電子聴診器 digital stethoscope

ちょっと興味があって、いわゆる「電子聴診器」を調べてみた。

日本だとパイオニアが U10 というのを製造・販売している。

以前に「これ、試作機ですか?」って感じの段階のものは、ネット上か何かで見かけたことがあったんだが、その頃より格段にデザイン性が向上していてびっくり。
ただし、データは専用アプリでしか閲覧できないようだ。

米国だと Eko というところが、かなり完成度の高いプロダクトを生産している。
見ての通りデザイン性はいい。
通常の聴診器としても使用でき、「電子聴診器」として使いたい場合は、トグルスイッチを押し込んでモードを変更するようだ。
デジタル化したデータは、ブルートゥースで iPhone・android の専用アプリに飛ばせるし、さらにそのデータに基づいて AI である程度の「自動診断」が可能なようだ。

さすが、リットマンの正規商品ラインナップに並んでいるだけはある。

おそらく、日本でも個人輸入で購入できるとは思うが、AI 判定などの機能は医療機器(電子聴診器だけでも日本の薬機法ではクラスII相当)に該当するので、この機能を日本の臨床現場でおおっぴらに使うのはちょっと差し障りがあるかもしれない。
アナログモードで使う分には問題ないと思いますが。
まあ、そこらへんは大人としての配慮を(笑)。

たぶん、こちらの方はデータも外部抽出できるかな。

 

ところで、なんで、「音」関係に興味を持ったかといえば、医療で出てくる波型データとしては、もっとも馴染み深いものだから。

同じ波型データとしては、心電図あたりはたびたび AI 研究の対象にもなっているが、こちらはあまり取り組まれていない。

電子カルテや DICOM ビューアを手がけている手前、こういったデータもデジタル化して取り込めないかと思った次第。

 

 

猪股弘明
医師:精神科医(精神保健指定医)
HorliX: developer
OpenDolphin-2.7m : developer

なお、心音図そのものの勉強は川崎先生の『心音図塾』などで。
非常によくまとまっています。

 

なぜ、西浦の予測は外れるのか?

8割おじさんこと西浦氏の評判は、周囲では最悪に近いのだが、その理由など。

感染症数理モデルの SEIR モデルは以下の通り。


すぐに気がつくのは再生産数 R は、このモデルには直接には入っていないことです。

細かい誘導は省略するが、R = β/γ (1/γ が平均感染期間、β は感染率)です。
βの方が基本的な指標なのは明らかでしょう。デルタ株では β が大きくなっているから、「結果」として R が増大しているんだ、と考えるのが自然です。

注目すべきなのは第二式で、その第二項を無視すれば

dE/dt = βSI

という高校生でもわかるような1階の常微分方程式になります。

これの意味するところは
「時間当たりのE(暴露者)の増分は、既に感染が成立している人数(I)とまだ感染していない人数(S)とβ(感染率)の積に比例する」
です。(だから、感染初期では指数関数的に陽性者が増えていくわけですね)
この時点でも確率的に考えているわけですから、E を増やしたくなければ β をコントロールして感染対策を考える、と思考を進めていかなくてはいけないはずです。

実際には β は、株の種類やワクチン接種率の関数になっていると思われますから、その関数型を仮定してモデルから予測→現実の数値と突き合わせる、というプロセスを踏まないと「科学」にはなりません。
反証可能性というのは、科学の基本だと思いますが、西浦の言い分は(モデルに基づいていないため)反証可能性が不十分です。

筋のいい人なら気がつくと思いますが、ある時点での結果として出てきた R をいじっても数理モデルとしては何の根拠もありません。
微分方程式の系は、それとは無関係に時間発展していくからです。

西浦の予測が外れる主な理由はこれでしょう。

 

猪股弘明
精神科医(精神保健指定医)
理学士(物理)

 

なぜECTでは「ボタンを押すだけ」ではダメなのか?

私が、ECT(ElectroConvulsive Therapy 電気けいれん療法)を初めて見学したとき思ったことの一つは「通電時の頭部の電磁気学的状況ってどうなってんの?」ということ。

まあ、そこらへんは腐っても物理出身、患者さんの DICOM ファイルもらってきてシミュレーションに勤しむことになった。

モデルの取り方は色々あるのだが、下のケースだと頭蓋骨が電気の侵入をむちゃくちゃ邪魔している。(pterion あたりから侵入してそうだが)


あとこの配置だと電気は海馬直撃(→健忘症状につながりやすい)になりそう。

実際の患者さんの頭部形状は様々で(例えば認知症高齢者なんて大脳自体がかなり萎縮している)、決まりきった配置にしても効率よく脳内に電気を送り込むことはできないということにすぐに気が付く。

要するにECTの試行ってのは「任意の形状の複合誘電体が与えられたとき、外部から電気侵襲を与える際、もっとも効率よくニューロンを発火させる条件は何ですか?」という問題に帰着されるんだが、そう思えない人は相当センスないと思う。

つか、それ意識せずにやったら、患者さんへの虐待でしょ。

 

猪股弘明
精神科:精神保健指定医
理学士:物理

ECT と電磁気学

マニアックなネタですが、関係者からは好評価だったようなので、こちらでも。

猪股弘明
医師(精神科:精神保健指定医)
理学士(物理)

ECT 施行時の吸入麻酔薬セボフルラン(sevoflurane)の使用ついて

日本からECT(ElectroConvulsive Thrapy: 電気けいれん療法)関係の論文が英文査読誌に出るのはけっこう稀なので紹介。

Sevoflurane in electroconvulsive therapy: A systematic review and meta-analysis of randomised trials』Aoki et al

ECTは『カッコーの巣の上で』で患者への拷問用具のように描かれたので、一時期評判悪かった。が、施行前に
・患者の意識レベルを落として恐怖心を下げる
・筋弛緩薬で全身のけいれんを抑える
処置をすれば、(少なくともこういった見た目上の問題は)解決できる。
健忘などの副作用は依然残りますが。

だから、現代では麻酔薬の使用はほぼ必須なのだが、「どの麻酔薬がECTに適しているのか?」という問題はまだ十分には調べられていない。

これは、関西医大-京都大チームの ECT 施行時の 麻酔薬に関するメタアナリシス。
さらっと読みましたが「セボフルランは他の麻酔薬に比べ、発作持続時間を短くするが、PSI(というECT の効果を評価する指標の一つ)などに有意な差はなかった」というような内容です。
メンテナンスECTのときなどに使えるかもしれません。

 

猪股弘明(精神科医:精神保健指定医)