パルモディア -薬子的『モジュレーター』解釈-

薬子
2018年6月に興和から

高脂血症治療薬パルモディア®️(一般名:ペマフィブラート)

が発売された。

このとき出てきたのが「モジュレーター」という概念。

発売元は、『パルモディアは「リガンド」ではなくて「モジュレーター」です』と説明した。

リガンド? モジュレーター? 違いは何でしょう

 

勉強会などでこの話題が出ることは多いですが、曖昧に(そして多くの場合、間違って)理解している方が多いようです。

ベザフィブラート

まず、従来のフィブラート系薬剤、ベザフィブラート(商品名:ベザトール®️など)の特徴をまとめましょう。

ベザフィブラートは、他のフィブラート系薬剤同様、細胞質内の PPARα (ピーパーアルファ)という受容体と結合し、核内に移行。他のコ・ファクターと転写因子複合体を形成して DNA に結合。脂質代謝改善遺伝子産物を発現させることで、体内の LDL コレステロール・トリグリセリドを減少させ、HDL コレステロールを増加させる。このとき、肝機能を障害させる遺伝子産物も発現してしまうため、副作用として肝機能障害が出現することがあります。

軽くイメージを掲げておくとこんな感じでしょうか。

ベザフィブラートを載せた PPARα 車は、核内へ移行。脂質代謝改善遺伝子産物も肝細胞障害関連遺伝子産物も区別なく転写翻訳してしまいます。

 

ベザフィブラートの改良

ベザフィブラートを改良してより意味のある薬剤を設計したい場合、なんとかして副作用である肝機能障害を抑えたいと考えるのではないでしょうか。発想としては単純ですが。

まさしくそれをやったのがペマフィブラートです。

ここで、着目すべきは「PPARα という受容体と結合し、核内に移行。他のコ・ファクターと転写因子複合体を形成して DNA に結合」という点です。

この転写因子複合体が肝障害関連遺伝子領域と結合するときには、転写率を下げるような機構があれば、上記の目標が達成できることがわかります。転写率を下げる、例えば、DNA とユルく結合(かなり比喩的な表現ですが)させればいいわけです。

そして、転写因子と DNA を「ユルく結合」させる最も簡単な方法は、ペマフィブラートが PPARα と結合し転写因子を形成した際、この転写因子の立体構造そのものを変化させることです。

イメージ的にいえば、こんな感じでしょうか。

 

図では、「立体構造の変化」を車のタイヤの形状で表現してみました。パルモディアを載せた PPARα 車はタイヤの形状が変化してしまいます。脂質代謝改善遺伝子領域ではがっちりと DNA 路面にタイヤが吸い付くものの、肝機能障害関連遺伝子領域ではタイヤの形状と DNA 路面が不適合をおこしています。実際にも PPARα-パルモディア転写因子は関連遺伝子のイントロン領域と結合するようです。(ただし、繰り返しますが、この説明はあくまで比喩的なものです。実際の転写過程では、他の因子もパルモディア-PPARα 転写因子に結合し、転写因子複合体とでもいうべきものをつくっています。他の因子も転写活性に影響を与えます)

 

ポイントは

  • PPARα が核内受容体(膜受容体→シグナル伝達系を使った場合、このような制御はできません)という点
  • ペマフィブラート-PPARα 転写因子の立体構造が変化する点

でしょうか。

確かに、パルモディアはリガンドのように特定の受容体と結合します。ただし、結合後、受容体の形状を変化させ、最終的な遺伝子産物の産生量を調整するように振舞います。だから、「モジュレーター」と呼ぶのですね。(人によっては、アロステリック酵素の転写因子バージョンと言った方が理解が早いかもしれません)

この用語が適切なものなのか、本当に意味のあるものなのか、私にはわかりませんが、ここでは、そう理解しましょう。

それにしても、パルモディア、狙ったつくったのか、それともたまたま見つけたものかわかりませんが、かなり精巧な働き方をするものだなと思います。

 

今後の評価

ただし、このような凝ったつくりこみをすると、その反動もあるようで、具体的には、パルモディアの代謝に関連する CYP などの酵素は、他の薬剤と被るものが多く、結果、併用に注意すべき薬剤が従来のフィブラート系薬剤に比べ増えています(シクロスポリン・リファンピシンが併用禁忌。クラリスマイシン・カルバマゼピン・フェノバルビタールなどが併用注意)。

パルモディアそれ自体は安全性の高い薬剤といえそうですが、肺炎を併発し抗菌薬の投与を受ける場合や、他に基礎疾患を持っており薬剤投与を受けている患者に対しては、相互作用のチェックが必要になりそうです。

 

よくある間違い

「他のフィブラート系と異なりペマフィブラート自体が PPARα と高選択で結びつき… 」とかいう勝手な解釈。いえいえ、ベザフィブラートもかなり選択的に PPARα と結合します。

『おくすり110番』

なんか説明がおかしいですよね。

 

も一つ。色んな意味で「罪深い」間違いをしている例を

医療系まとめサイトは成立しないと思う

にあげておきましたので、よかったらご一読のほどを。

 

 

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“パルモディア -薬子的『モジュレーター』解釈-” への3件の返信

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