大海薬局の在宅への取り組み方を変えたある患者様からの一言

薬子
今回は、「なぜ、在宅なのか?」について語ります。と言っても、文章はほぼ猪股先生によるものです。面目ない…

大海薬局は地域の患者様のお役に立ちたいという思いで開局しました。しかし、以前の在宅訪問は保険点数的にもそれほど評価されておらず、患者様が施設に入られたりお亡くなりになられたりするケースもあり、経営的視点からは安定した収入源にになりにくい業務でした。あまり損得勘定を考えたくはありませんが、在宅訪問の対象は近隣の患者様に限られ、頼まれればお引き受けする程度のボランティア的な位置付けでした。

近年、厚生労働省はかかりつけ薬局構想を打ち出しました。その一環として地域支援加算を 2018年に新設。その施設基準の一つに在宅訪問実績があります。在宅訪問を積極的に行う薬局は、安定した加算が得られるようになったのです。

この時私が想定していた患者様は終末期1)の患者様です。当初は「終末期対象の在宅に腰をすえて取り組める!」と喜んでいましたが、訪問看護師の仕事とかぶる部分もあり在宅医療チーム2)に入ることができず、なかなか患者数が伸びません。途方に暮れること1年。状況が変わったのは精神科疾患で通院/外出困難になり当薬局から「一時的に」お薬を届けていた(と私は思い込んでいた)若い女性患者様からの1本の電話でした。

「これからも薬は今までどおり大海薬局さんからもらいたい。(医師の)往診後にまた来てくれませんか?」

目から鱗が落ちる思いでした。私は対象を終末期の患者様に勝手に限定してしまい、それ以外の疾患で薬を取りにこれなくて困っている人がいることに気がついていませんでした。さらに、この経験から、ご自宅を訪問した際に「薬を媒介としたコミュ―二ケーション相手としての薬剤師」にニーズがあることも知りました。

これ以降は、在宅=終末期という思い込みを捨て去りました。医師やケアマネージャーとチームを組みながら比較的短期で訪問が終了する服薬指導中心の在宅訪問にも本格的に取り組み始めました。

このブログではこのような地域に密着した大海薬局の在宅訪問の実際を紹介しています。

1)いかなる医療の効果も期待できず、余命が数か月以内と判断される時期をいう。

2)医師をはじめ、歯科医師、訪問看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士などの医療関係者が患者様のご自宅で治療やケアを行っていくチーム

 

猪股弘明(精神科医師)

大海薬局というのはもちろん実在していません。架空の薬局です。これまでコンサルトしていた調剤薬局を適度に混ぜ合わせてます。

この手の記事を納品するのは、仕事の一貫(サービス)くらいに考えてますが、さすがに契約期間がすぎた後も使われるのは、当方にとってデメリットしかありません。特に薬局の管理者名義で当方の許可も取らず「さも、自分で書いた」みたいな形で発表するのはやめてください。

 

『薬剤師、現場に出る』kindle 版、配信開始

秋葉ちゃんの続きは? ねえ、続きは?」とせっつかれてるような気もしますが (^^;)、諸々の理由で『薬剤師、現場に出る』シリーズの電子書籍化に取り組んでました。
何日か前に完成稿を上げてたんですが、2019/2/10 にいつのまにか配信が開始されたようです。

例えば、Android の Kindle アプリでは、こんな感じで表示されます。

 

windows の Kindle アプリでは、このように。PC だとメモ機能も使いやすいですね。
今回は、私たちの希望もあって吹き出しなども画像でごまかさず、blog のようにテキストはテキストで処理してもらいました。

iPad で一部レイアウトが崩れた他は、おおむねのプラットフォームで問題なく表示できているようです。
ここら辺の仕組みは、私にはよくわかりませんが、ずいぶん苦労したんではないかと思います。ありがとうございます>担当者の方

【追記】「薬剤師 現場」あたりで検索すると、この本けっこう上位にくるようです。

最近(2019/7 月)では、日経あたりを抑えて堂々のトップ。

すごい売れているというわけではないようですが、この本の意図を伝えたいという薬剤師さんにはきちんと届いて支持されているようなので、その点はすごく嬉しいです。

 

nomad

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彼自身による秋葉太郎

秋葉太郎
前回登場したものの「影が暗すぎてよくわからないキャラになっている」とクレームいただいた…orz
製作者の演出ミスだな。
気をとりなおして、全身姿披露!

 

 

秋葉太郎
これが俺氏。
ジーンズ、ネルシャツ、バンダナ、オキニのアニキャラ。
人から変に思われるのは知っているが、俺はこのスタイルが落ち着くし、スタイルを変える気はさらさらない。

秋葉太郎
自己紹介しておこう。
現在、29歳。
東北出身。地元では神童といわれ、地元の県立高校から、現役で東京の国立大に入学。
知的好奇心としては京都の大学にも興味あったけど秋葉原に行きやすいから東京
コンピュータが好きで情報分野を専攻。好きなプログラムを書きまくってたら、世界から評価されて、博士号を4年でもらって院修了。
教授? いたけど俺は興味なかったから、あんまり教わったとか教えられたって記憶はない。

秋葉太郎
博士号取得後は、メーカーに就職。
ここが最悪だった。
研究ができるのはよかったんだが、上司が無能。
俺氏の華麗にして美しいプログラムが理解できなかったらしい。
「周囲の人から理解されるようにもっとわかりやすくプレゼンしなさい」とか俺だったら恥ずかしくて口に出せないような当たり前なこと言ってた。けど、俺からしたらナンセンス。美しいものに余計な説明はいらない。それがあいつはわかっていない。あんまりうるさかったから、最後は胸ぐら掴んで「無能なお前に俺の管理は無理だ!」ってはっきり言ってやった。

同僚からも妬まれたね。
俺氏が3日で書ける内容を奴らは5年かけてやっとこさ形にする。で、うまく動かなかったりする。できないんだったら素直に聞けばいいのに、遠回しに言ってくるんだ。「仲間にならないか」みたいな感じで。まったく気持ちの悪い連中だよ。俺氏は、こういうとき、馴れ合いよりも高貴な孤立を選ぶ。仲間になんかならなかったから、さんざん嫌がらせされたよ。

OLっていうのか。会社の女子も苦手だったな。これに関しては時間があったらおいおい語っていこう。

結局、最後は、色々なむしゃくしゃが溜まって、会社の研究所で大暴れしてジエンド。

秋葉太郎
その後は、大変だったな。

病院に連れて行かされて、発達障害という有難い診断名をいただいた。会社はそんないきさつもあったんで、警察のご厄介にもならず、辞めるときは自発的退職という形になった。

田舎の両親は掌返し。それまでの神童扱いが、犯罪者扱い。縁切られた。

仕事もない(する気もなくなったけど)。家族にも頼れない。

これには、流石の俺氏も途方に暮れた。

秋葉太郎
そんな俺氏を救ってくれたのは、市役所の福祉担当の牧田さんと青空のとし子ヘルパーだった。

牧田さんは、自立支援制度による介護利用というけっこう裏技に近い(と思う。介護ってお爺さん・お婆さんのためにあるんだと思ってた)手段を使って、行政による支援の手を差し伸べてくれた。

とし子さんは、俺氏の病気に理解があったかどうかわからないが、お姉さんのように接してくれて、荒んでいた俺の魂を癒してくれた。

それなのになぜ引き離す!?

 

と、キャラ設定を1回で終わらせたいというこちらの意図を汲むかのように一気にこれまでの経緯を語った秋葉氏であった。

次回は、この人物設定を医学的に検証してみます。

 

監修: 猪股弘明精神保健指定医

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当ブログの患者様に関する個人情報に対する取り扱い・倫理的配慮に関しては、

phazor.info『ネット版 症例発表における倫理指針

で示された倫理規定に準じています。

つまり、個人が特定されないようにぼかして書いてます。ただし、モデルになった人物はいます。けれどご安心ください。該当する2〜3人の利用者さんの特徴を混ぜてますので、決してあなたのことを書いているわけではありません

 

高齢者介護だけが介護じゃないの巻

nomad
私と薬子さん、介護のカンファレンスに出席してきました。
今回は趣向を変えて、介護編。

精神科関連の地域医療/大人の発達障害 に興味のある方は是非どうぞ。

薬子
意外な人も登場します。

よろしく♪


とし子ヘルパー
ところで介護というと高齢者介護というイメージがありませんか?

もちろん高齢者の介護は介護保険制度の発足のきっかけとなった介護であるため今も重要であることには変わりありません。

ですが、従来の介護保険の対象にならない方でも介護が必要な方はおられます。例えば、まだ若いけれど精神的な病気や身体的な障害のため日常生活をうまくおくれないような人たちがそうです。介護保険とは枠組みが違いますが(自立支援医療や地方自治体の独自の制度が枠組みになる)、これも介護の一つの形です。

当事務所ではこのタイプの介護に積極的に関わっています

とし子ヘルパー
あまり抽象的なことを言っていてもぴんとこないと思うので、今回から何回かに分けて具体的な訪問エピソードを紹介したいと思います。

ちょうど新人の新子ヘルパーが入所してくれたので、彼女に当事務所の名物利用者さんの秋葉ちゃんを担当してもらうことにします。

いいかな、新子ヘルパー?

新子ヘルパー
新子(しんこ)です。

がんばります!!

 

とし子ヘルパー
そして、訪問は基本チームで動くもの。

当事務所と縁のある先生方を紹介しておくわね。

 

nomad 医師
フェイザークリニックの nomad (のまど)です。

秋葉ちゃんの主治医やってます。

なんでお前だけ名前がアルファベットなんだよ、というツッコミはなしで。

 

大海薬子
大海薬局の大海薬子(おおうみくすりこ)と申します。

薬剤師ですが、現場に出ています

よろしくね新子さん。

 

こうして名物利用者さん秋葉ちゃんに対する新しいチームが組まれたのであった。

一方、その頃、横浜市内某所で秋葉ちゃんこと秋葉太郎は…

 

秋葉太郎
仲良くなってきたとし子ヘルパーともお別れか。

かわりに新人をあてがうらしい。

俺氏がちょっと回復してきたからってすぐそれだ。しょせん医療や介護なんてそんなもんだ。信用できない。

やっぱり働いたら負けなんだ

俺氏をなめてかかるとどうなるか思い知らせてやる。

待ってろ、新人。

 

 

新人ヘルパー新子さんの運命やいかに?

秋葉ちゃんとはいったい何者か?

こてこての展開でひっぱる介護編なのであった。

(次回に続く)

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間質、の対になる言葉は?

薬子

むくみ」が好評だったようなので、付け足します。

そこで出てきた「間質」という言葉の連想からだと思いますが、「間質性肺炎って何ですか?」という質問をいただきました。

nomad
んー 、そういうのは質問というのか??? (´Д`)

じゃ、今日は私が説明。

 

 

ゲフィニチブ(イレッサ)の副作用ー間質性肺炎ー空咳

という試験対策用のキーワードの羅列丸暗記で「間質」を理解しているとそういうことになる。ちなみに「間質の対になる言葉は?」と訊くと、やはりというべきかほとんどの人がわかっていないので、たぶんそういうことなのだろう。

間質の対になる言葉は「実質」だ。臓器・組織においてその機能の中心となっている部分が「実質」であり、それ以外の部分はすべて「間質」である。

例えば、肝臓であればその機能の中心は「代謝・解毒」なので、実質は肝細胞そのもの、それ以外の血管内皮細胞・結合組織などはすべて間質である。肺の場合は、その機能の中心は「ガス交換」なので、実質は肺胞腔(肺胞+肺上皮細胞)、間質はそれ以外の肺胞壁モロモロということになる。

ここまでくれば、「間質性肺炎」という言葉の理解はできる。肺炎のうち炎症が生じる場所が主に肺間質であるものを「間質性肺炎」と呼んでいる。実質性肺炎という言い方は聞かないが、これは、実質に炎症がある場合は原因がほぼ細菌性・ウイルス性に限られるので、それぞれ「細菌性肺炎」・「ウイルス性肺炎」と呼んでいる、という事情による。

また、間質性肺炎は、炎症の首座が、(人体「外」環境に直接暴露されているといっていい)肺実質ではなく、間質という人体「内」であることから容易に想像がつくように免疫が関与している場合が多い。(先ほどチェックしたが、ゲフィニチブの副作用による間質性肺炎の機序はいまだに不明なようだ)

なお、間質性肺炎の症状は、息切れ・発熱・咳などであるが、炎症は気管支などには及んでいないため痰などはさほど分泌されず、咳は乾性の空咳になる。

これでキーワードはつながったかな?

 

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医療系まとめサイトは成立しないと思う

現在(2018/07/28)、「モジュレーター」でぐぐると、私の記事が4位にくる。最近までトップ記事だったので少し残念。

 

2, 3 位の weblio は仕方ないとして、問題はトップの「沖縄バイオポータルプラス」の記事内容

こんな感じ。

 

ふむふむ…

代謝活動に関する酵素には、本来の基質と全く異なった化合物が酵素の活性部位以外に結合することにより、酵素活性が変化するものがある。このような酵素をアロステリック酵素といい、これに結合してその酵素活性を調節する化合物をモジュレーターという。

これ、最後、モジュレーターじゃなくて「エフェクター」じゃない?

なんかすごい基本的なところで間違ってるような気がするんですけど。

元記事となった AMBiS 社の記事は単なる勘違いですまされるけど、アクセス数欲しさにそれをノーチェックで掲載したまとめサイトは、色んな意味であとあとまで責められると思う。

公益財団法人がこれやっちゃいかんでしょう。

沖縄の人に悪い人はいないと信じている。

 

 

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東京医大の例のアレなど

東京医大の件

東京医大の裏口入学の一件が世間を騒がせているようだが、関係者の間ではこの事態はある程度は予想されていたように思う。

というのは、東京医大はどういうわけかその経営基盤が弱いようで、講師あたりをしている知り合いなども「お金なくて研究ができないんです」とよくこぼしていた。その拝金主義はどこかで破綻するだろうという予感はあったと思う。

私学医学部の経営事情一般に関してコメントするほど私はこの分野に詳しくはないが、こと東京医大で関係者の不信をかっていたと思うのは、臨床教授や臨床准教授という存在。

世間一般では「教授」や「大学の先生」というと研究業績もあってその分野の権威である偉い人とみなされていると思うが、医療関係者の間では「臨床教授」はそこまで評価は高くない。研究志向が強く、長くその教室で頑張っているが、教授になるほどの業績は上げられず、かといって単なる医員扱いするには忍びない…といった先生に与えられる通りのいい肩書きといった位置付けだろう。

もちろん、この特徴、つまり研究もある程度できて、臨床もできる、という特徴を活かして臨床教育などに立派に貢献されている尊敬すべき先生も数多くいることを私は知っている。

なのだが、こと東京医大となると…

なんで業績もほとんどないあんたが臨床准教授とかやってんねん

とツッコミ入れたくなるような人を教員にしていた。具体的には、それまで研究のケの字もしたこともないような私立病院の院長だとか理事長とかですね。その私立病院が教育的な病院ならわからなくもないのだが、ガチ経営重視のところだったりする。病院経営者のご子息の多い私立だからそれでもいいと言われれば元も子もないのだが、それであれば非常勤講師あたりの肩書きで留めておくのが良識というものだろう。

ここらへん、事情通からみたら「あ、あの院長、金で肩書きを手に入れたね」とわかると思うのだが、世間一般の人はなかなかそうもいかないだろう。

この騒動がどこまで広がるか私は予想もできないが、願わくば騒動後のこの大学(とその関連病院)の体制が健全化してくれるといいと思う。

 

ブログ記事とマネタイズ

私はこれまで各種メディアに記事一本いくらみたいな感じで雑文を提供していたが(これは私に限ったことではなく多くの医師がアルバイト感覚でやっていると思う)、こちらでブログを持たせてもらうにあたって執筆料の代わりにアドセンスによる広告料収入を選んだ。

連載当初などは1日0円なんて日が多く、正直、選択をあやまったかなと思わないでもなかったが、関係者が SEO (Search Engine Optimization 検索エンジン最適化。この言葉もこちらに来て初めて知った。現在勉強中)などを頑張ってくれたおかげか最近はアクセス数も増加し、それなりに収益が上がってきた。

まだまだ最終的な判断を下すには時期尚早だと思うが、「コンテンツを権利ごと売って一時的にまとまった収入を得るのと自前で発信して長期的にマネタイズしていくのはどっちが得か?」という問題は、似たような立場にいる方なら興味あるところだと思うので、もうちょっと観察を続けてはっきりとしたことが言えるようになったら、どこかで発表したいと思う。

 

モジュレーター

以前に某医療機関のブログに寄稿したモジュレーター関係の記事がおかげさまで好評で、あちこちで引用された結果、現在(2018/07/25)グーグルで「モジュレーター 」で検索するとトップにくる。

 

この医療機関にはこれまでの記事の働きでその知名度向上に十分寄与したと思うし、今後、もうちょっとモジュレーター 関係に関して書きたいことがあるので、関係者にお願いしてモジュレーター 関係のコンテンツを引き上げさせてもらった。

記事では、パルモディアという具体的な薬剤からモジュレーター を説明していたのだが、一般的に言えば、モジュレーターの一種としてパルモディアがあるという関係だと思うので、時間をみつけて 一般的な性質に関して書きたいと思う。

特定教員

臨床教授などが大学内において、どういう位置づけなのか書いたが、最近、増えてきているのは「特任講師」やら「特定准教授」といった肩書。
これも「准教授」やら「教授」やらという呼称が使われているため、かなり立派そうに見えるし、「特別」という文言はへたしたら一般の「教授」より上の階位なのかと思ってしまう一般の人もいるかもしれない。が、全然違う。真相はむしろ逆。

単なる任期制の教員です。

寄付講座だとか特定のプロジェクトで研究やそれに付随する教員が必要な場合、終身で雇うよりは、それらの資金提供期間やプロジェクトの設定期間に合わせて専従者を雇った方が自然だ。

医学部以外だとポスドクとよく比較される。ポスドクは「研究に従事する」のが仕事で、特定教員の場合は研究はもちろん「教育」にも従事できる。

上手くやれている人もいるし、上手くやれていない人もいるが、設立由来がそういったことなので、過剰に評価する必要はないし、どちらかといえば、その間で成果を出せるかどうか試されている期間とみる方が妥当だろう。

 

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モジュレーターって何?【新薬高脂血症薬パルモディア説明会に参加しました。】

nomad
以下が、『パルモディア -薬子的『モジュレーター』解釈-』の元記事になります。

一か所気に入らないところがあり、リライトするに至ったわけです。

どこかわかりますか?

 


新薬高脂血症薬パルモディア説明会に参加した。
まず、既存の薬ベザフィブラートの鍵と鍵穴の説明があった。【鍵穴:PPARα(ペルオキシダーゼ増殖因子受容体)、鍵(リガンドともいう):ベザフィブラート】
「新薬パルモディア(ペマフィブラート)は鍵穴(受容体)に入る鍵(リガンド)ではなく、モジュレーターです。」との興和(株)MRさんの説明がわからず、モジュレーターと鍵はどう違うんですか?と聞いてしまった。

その後、開発部門から模式図をいただいた。モジュレーターとは広義の意味で鍵であるが、生体の特定の機能のみを発現促進するように振舞うリガンドのことをいう。以下の模式図の通り、パルモディアは脂質代謝改善のみの機能を持つ(肝機能障害は従来のフィブラート系薬剤と比べおこりにくくなる)。

 

なぜ、このようなことができるのだろうか? 従来のフィブラート系薬剤も標的は PPARα で変わらない。

この機構を理解するポイントは、

・PPARα が核内受容体であり、直接 DNA の標的遺伝子部位と結合し他の因子により転写活性の調節を受けている

・ペマフィブラートは PPARα と結合することにより PPARα の立体構造を変化させ、他因子の結合状態を変えることで転写活性を調節している

にあると思う。アロステリック酵素の転写調節因子バージョンといえばわかりやすいか?

あるいは、膜受容体と比較するとわかりやすいかもしれない。『膜受容体とアゴニストの結合→細胞内シグナル伝達→遺伝子産物の産生』のような系では、特定の遺伝子機能だけを発現・促進させるというのは、なかなか難しい。それに対し PPARα + フィブラート は、これ自体が核内に移行し特定の DNA 領域と特異的に直接結合するため、望まない遺伝子産物をつくりだすことがない。さらに、自身の立体構造を変えることで、関連する一連の遺伝子のうち、例えば「脂質代謝に関連する酵素」をコードする遺伝子部位の転写活性を上げることができる。

もちろん、現実的にはこのように図式的・理想的には働いていないだろうし、臨床的な評価もこれからなのだが、薬剤設計自体はかなり工夫されたものではないだろうか。


nomad
気に入らなかったのは図です。

「別の」タンパク質が結合すると説明していますが、図はほぼ同種のタンパク質のように見えます。

ここで、注目すべきはそこではなくて、これらのタンパク質との結合部に関する立体構造が変わっているところでしょう。だから、転写活性が変わってくる、変わってもいいんだという説明になるはずです。

ある種の薬剤師さんが物理学、特に原子レベルでの分子の立体構造をイメージするのが苦手だ、という事情はぼやっとは理解しているのですが、苦手なことがわかっているならば修正すべきです。

特に高校時代、物理不履修者は、基本概念だけでもいいから現場に出る前にこの分野を理解しておく方が望ましいと思います。

医療には、総合科学的側面があり、物理・化学・生物の基礎の上に立脚しているので、何か一つが欠けていると実務に必要な知識の習得に困難を覚えるようになります。それが理由で現場に出れないとか出るのがおっくうになる、というのはもったいない話だと私は思います。

 

nomad フェイザー合同会社

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パルモディア -薬子的『モジュレーター』解釈-

薬子
2018年6月に興和から

高脂血症治療薬パルモディア®️(一般名:ペマフィブラート)

が発売された。

このとき出てきたのが「モジュレーター」という概念。

発売元は、『パルモディアは「リガンド」ではなくて「モジュレーター」です』と説明した。

リガンド? モジュレーター? 違いは何でしょう

 

勉強会などでこの話題が出ることは多いですが、曖昧に(そして多くの場合、間違って)理解している方が多いようです。

ベザフィブラート

まず、従来のフィブラート系薬剤、ベザフィブラート(商品名:ベザトール®️など)の特徴をまとめましょう。

ベザフィブラートは、他のフィブラート系薬剤同様、細胞質内の PPARα (ピーパーアルファ)という受容体と結合し、核内に移行。他のコ・ファクターと転写因子複合体を形成して DNA に結合。脂質代謝改善遺伝子産物を発現させることで、体内の LDL コレステロール・トリグリセリドを減少させ、HDL コレステロールを増加させる。このとき、肝機能を障害させる遺伝子産物も発現してしまうため、副作用として肝機能障害が出現することがあります。

軽くイメージを掲げておくとこんな感じでしょうか。

ベザフィブラートを載せた PPARα 車は、核内へ移行。脂質代謝改善遺伝子産物も肝細胞障害関連遺伝子産物も区別なく転写翻訳してしまいます。

 

ベザフィブラートの改良

ベザフィブラートを改良してより意味のある薬剤を設計したい場合、なんとかして副作用である肝機能障害を抑えたいと考えるのではないでしょうか。発想としては単純ですが。

まさしくそれをやったのがペマフィブラートです。

ここで、着目すべきは「PPARα という受容体と結合し、核内に移行。他のコ・ファクターと転写因子複合体を形成して DNA に結合」という点です。

この転写因子複合体が肝障害関連遺伝子領域と結合するときには、転写率を下げるような機構があれば、上記の目標が達成できることがわかります。転写率を下げる、例えば、DNA とユルく結合(かなり比喩的な表現ですが)させればいいわけです。

そして、転写因子と DNA を「ユルく結合」させる最も簡単な方法は、ペマフィブラートが PPARα と結合し転写因子を形成した際、この転写因子の立体構造そのものを変化させることです。

イメージ的にいえば、こんな感じでしょうか。

 

図では、「立体構造の変化」を車のタイヤの形状で表現してみました。パルモディアを載せた PPARα 車はタイヤの形状が変化してしまいます。脂質代謝改善遺伝子領域ではがっちりと DNA 路面にタイヤが吸い付くものの、肝機能障害関連遺伝子領域ではタイヤの形状と DNA 路面が不適合をおこしています。実際にも PPARα-パルモディア転写因子は関連遺伝子のイントロン領域と結合するようです。(ただし、繰り返しますが、この説明はあくまで比喩的なものです。実際の転写過程では、他の因子もパルモディア-PPARα 転写因子に結合し、転写因子複合体とでもいうべきものをつくっています。他の因子も転写活性に影響を与えます)

 

ポイントは

  • PPARα が核内受容体(膜受容体→シグナル伝達系を使った場合、機序はまた違ったものになります。このような「直接的な」制御はできません)という点
  • ペマフィブラート-PPARα 転写因子の立体構造が変化する点

でしょうか。

確かに、パルモディアはリガンドのように特定の受容体と結合します。ただし、結合後、受容体の形状を変化させ、最終的な遺伝子産物の産生量を調整するように振舞います。だから、「モジュレーター」と呼ぶのですね。(人によっては、アロステリック酵素の転写因子バージョンと言った方が理解が早いかもしれません)

この用語が適切なものなのか、本当に意味のあるものなのか、私にはわかりませんが、ここでは、そう理解しましょう。

それにしても、パルモディア、狙ったつくったのか、それともたまたま見つけたものかわかりませんが、かなり精巧な働き方をするものだなと思います。

 

今後の評価

ただし、このような凝ったつくりこみをすると、その反動もあるようで、具体的には、パルモディアの代謝に関連する CYP などの酵素は、他の薬剤と被るものが多く、結果、併用に注意すべき薬剤が従来のフィブラート系薬剤に比べ増えています(シクロスポリン・リファンピシンが併用禁忌。クラリスマイシン・カルバマゼピン・フェノバルビタールなどが併用注意)。

パルモディアそれ自体は安全性の高い薬剤といえそうですが、肺炎を併発し抗菌薬の投与を受ける場合や、他に基礎疾患を持っており薬剤投与を受けている患者に対しては、相互作用のチェックが必要になりそうです。

 

よくある間違い

「他のフィブラート系と異なりペマフィブラート自体が PPARα と高選択で結びつき… 」とかいう勝手な解釈。いえいえ、ベザフィブラートもかなり選択的に PPARα と結合します。

『おくすり110番』

なんか説明がおかしいですよね。

 

も一つ。色んな意味で「罪深い」間違いをしている例を

医療系まとめサイトは成立しないと思う

にあげておきましたので、よかったらご一読のほどを。

 

 

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ネット版 症例発表における倫理指針

薬剤師、現場に出る』シリーズ

アルコール依存症患者では視床枕の体積減少がみられる

の影響か、医療・介護関係者の方々から、

「患者さん・利用者さんとのエピソードをブログやホームページに読み物として載せたいが、倫理的にどのような点に配慮したらいいか?」

という質問や

「開業しているが、臨床研究を始めたい。従うべき倫理基準は何か?」

というような質問を受けた。

いや、私は、バリバリの研究者でもなければ、その道の専門家ではないのだが…と思うのだが、今までの経験や調べた範囲内で有益と思われる情報をまとめる。

 

まず、後者はクリアカットなので、こちらから。

一言で言えば「所属学会の規定に従ってください」ということになる。たいていの主だった学会はこの手の倫理規定を制定し、公表しているのでそれに従う。

軽く検索をかけたのだが、例えば、消化器外科学会であれば『学会発表・論文投稿における倫理指針について』というページが公開されている。(消化器外科を挙げたのは、単に検索順位が上位だったからで他意はない)
たぶん、倫理委員会ウンヌンを気にされている先生が多いと思うが、

 

Q1:当院には倫理審査会がありません.学会発表はできませんか?
A:観察研究の倫理審査を行う倫理審査委員会やそれに準じた諮問委員会を常設していない施設からの本学会への研究発表や論文投稿については,できるだけ抄録登録時や投稿時に,関連の大学病院や医師会での倫理審査を受けてください

 

とのことなので、地元の医師会などに相談されるとよいと思う。気の利いた医師会ならば、常設はされてなくても、地元の弁護士さんや教育関係者などを集めて即席で審査会をつくってくれると思う。形式的になりがちな大学病院倫理委員会を通すより、こちらの方が話を吟味して聞いてくれそうで良いように思うのだが、どうだろう。

症例報告に関しては倫理委員会の承認すら不要のようだ。プライバシーに配慮して内容をまとめれば良いと思われる(ただし、症例 9 例以上は観察研究扱いになるようですね)。
なお、査読誌などに投稿する場合には、患者さんの書面同意が必要になると思うので、これぞと思われる症例にであったら、あらかじめ同意を取っておくと投稿時に患者さんの所在を探しまわる、というようなことがなくなるのでよいと思う。

 

問題は前者で、おそらく基準は存在しない。

私の場合は、「テクニカルには医師系学会の基準に従い、コンテンツに関しては『読み物』として割り切って本筋に関係ない余計な情報はどんどん捨てる」という書き方に徹している。

つまり、表記上のテクニックとしては、

【患者】秋葉太郎、35歳→ ×

「患者 A さん、30代」などとする

平成 30 年 7 月 6 日→×

たいてい話を始めたい日(初回訪問日など)があると思うので、その日を基準に X 日、X + 1日…などと表記する。

束大大学付属病院→×

A 病院、などとする

として、とにかく患者さんの特定に繋がりそうな情報はどんどん匿名化する。

また、患者さん・利用者さんとのエピソードを書きたいという場合、学術目的というよりは、「エピソードを通してその施設の特色を表現したい」とか「そのエピソードで得た学びを共有したい」ということだと思うので、内容を「症例報告風読み物」に寄せる。

これは学会発表ではないので、例えば、検査値が丸ごと記載されてなくとも、

会場最前列に陣取ったお年を召した大御所から「その時の○○の数値はいくつだったの? 覚えてない? それ、治療方針を決める上で最も重要な値だよ。君、患者さんのこと把握してんの」と突っ込まれ、発表者はおろおろ、指導医が大慌てでフォローに入る、という学会地方会で毎回のように繰り返される微笑ましいワンシーン

になるようなことはない。安心してほしい。むしろ、その執筆意図から考えて、ストーリーに関係ないものは積極的に捨てるべきだと思う。

患者さん・利用者さんの同意に関しては、「決まり」という意味では書面同意を取るのが安全なのだろうが、堅苦しい。医療機関ブログにはコミュニケーション・ツールとしての一面もあるため「ブログ面白いですね。今度、私のことも書いてくださいよ」と自然と自発的同意が取れるような関係になっているのが理想的と思われる。

 

以上、倫理関係に関して述べてみました。

回答になっているでしょうかね。

(追記)医療ジャーナリスト(兼医師)の中山佑次郎氏より「年齢、性別などを変えており、『これは私の話かも』と思っても当てはまりません」という記載を加えておくのもよいのではないかという提案を受けた。なるほど、これなら被害的になり注察妄想を持つ傾向のある患者さんに対しても「自分のことじゃない」という安心感を与えますね。良い工夫のように思います。

 

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