日本製スパコンの計算速度が世界一になったとか。
(→その後、転落。「2位じゃダメなんですか」発言があったり、その反動として「世界トップを目指す基礎研究の意義」みたいなことが議論されたが、ここでは実際に計算機を使って何かをしている人の個人的な感想みたいなものを述べてみたい)
私は、たまに計算機を用いた物理学的なシミュレーション(数値解析)をやることがあるのだが、その目処をつける段階では正直「計算機の多少の速度差は、ほとんど意味を持たない」という実感を持っている。
アイキャッチのフィギュアは、ECT 施行時の脳内での電流密度を描画させたものだが、この場合、そもそも計算機に与える信頼すべき基礎方程式自体がなかったし、だから、そのための理論とアルゴリズム一式を考案しなければならなかった。時間も集中力も消費したのは、正直そこだ。
スパコンの主要な応用分野の一つとしてシミュレーションがあると思うが、一般的に言って、この分野で苦労するのはモデル化であったり、モデルから実際の計算に落とし込むアルゴリズムであったりする。
速度や生産量というのは、一般の人にも理解が得られやすい指標なので、この点を中心に評価・議論されやすいが、だが、待ってほしい。
一昔前、日本は「半導体生産量世界一位」というプロバガンダを散々うったし、国民もそれに発揚されていたと思う。われわれはまだまだ naive だったのだ。このときの「半導体」は、CPU も RAM もひっくるめての生産量だ。もちろん、世界のトップ層は CPU (後には GPU も)や OS が次世代の計算機の要だ、という認識があり、裏では着々と研究リソースの再整備が行われていたと推測する。その後の計算機・ソフトウェア業界の覇権がどうなったかは、ここで言うまでもないだろう。一般国民は、騙されていたとも言えるし、間違っていたとも言えるかもしれない。ともかく、世界で戦うには、まだまだ未熟だったということだろう。
ここらへんの予算配分の問題は、もう一歩踏み込んで再考して欲しいなあと思う。
猪股弘明(都立松沢病院精神科)


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