Kamakura Live 2018 予習

日頃からお世話になっている湘南鎌倉総合病院の斎藤滋先生主催の「鎌倉ライブ」が今年も 12/15-16 横浜にて開催されます。

事前登録は 12/7 までですので、ご興味のある方はお早めに。

なお、HPは齋藤先生お手製。制作過程は

この10日間 悩み抜いたバグがようやく解決

などをご覧ください。

 

予習など…

? TAVI

Transcatheter Aortic ValveImplantation 経カテーテル大動脈弁置換術 の略。

外科的な大動脈弁置換術が受けられない患者さんに適応あり。
なお、一昔前だと、溶連菌感染症→リュウマチ熱→(確か、疣贅形成)→弁膜症という経過が多かったが(私はそう習った)、早期の抗生物質投与でこの数は激減。現在は動脈硬化性の弁膜症が増えている。高齢のため全身状態が悪く、外科手術の適応がないため、TAVI が行われるようになった、と。
なるほど。

齋藤先生、これを橈骨動脈からアプローチするんすか。
化け物ですね。

 

? FFR

Fractional Flow Reserve 冠血流予備比の略。

定義は「最大充血時の、病変よりdistalの圧力 / 大動脈圧」。

圧力はそれ用のワイアがあるらしい。直接測る。

FFR < 0.8 (=distal での圧力が大動脈圧に比べ小さい)あたりで要治療。

けれど、理想を言えば ∫vdS (速度場 v を distal 冠動脈の任意の断面で面積分) の方が指標(絶対量として定義できる)としてよくないか?

(追記)冠動脈から心筋への漏れがなければ、そう考えていいように思ったが、実際には、冠動脈から心筋へ直接流れ込む「伏流」みたいな量がけっこうあり、上記の理屈はうまくないようだ。コメディカル向けのレクチャーで、担当者(お名前は失念)がそのことに言及していた。したがって、各種スタディも FFR が用いられているようだ。なお、冠動脈造影 CT などから、シミュレーションなどを用いて FFR を推測する FFR-CT というものもある。私も、ちらっと解説記事を読んだが、ん???というような内容。血流を非圧縮性の粘性流体とみなしてナヴィエ・ストークス方程式などの数値計算に持ち込む、ということのようだが、ご存知のようにナヴィエ・ストークスの方程式は数値計算でも解くのが厄介で、ここをすっ飛ばしているように見える。なんか筋悪というか…。

 

? 冠動脈イメージング

測定装置は US, OCT, 内視鏡, 近赤外 色々ある。個人的に大好物。

 

? Mitral clip

僧帽弁の逆流防止のための治療。

確かにクリップですね。

 

? 3文字言葉

LMT (Left Main coronary Trunk) 左冠動脈主幹部

LCX (Left CircumfleX coronary artery) 左冠動脈回旋枝

LDA (Left anterior Descending coronary Artery) 左冠動脈下行枝

RCA (Right Coronary Artery) 右冠動脈

以上、4 区分が基本。さらに 15 くらいに分類している模様。


元画像はこちら

 

慢性完全閉塞 (CTO Chronic Total Occulsion) に関する問題の一つは、これらの部位で慢性に閉塞していった場合、閉塞・狭窄にどのような規則性があるか?ということだと思う。

 

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下から見た ERATO

うちの air 氏(笑)、湘南鎌倉の斎藤先生を表敬訪問。

「この才能豊かな天才的 Software (+ Hardware) Engineer」(『いるかの棲む闇』より)ってベタ褒めじゃん。いーなー。

色々不都合ある内容なので先生消されたかな? こんな感じの記事でした。興味ある方は覗いてみてください。

いーなー、air さん(棒読み)。


ただ、齋藤先生のこの記事、私系列と air 系列の混交が見られる(わざとやってそうだがw)。

ネット上などでは、基本、

医師 = H. Inomata (猪股弘明)

エンジニア = air-h-128k-il

設定で通している。私は、医学生・医師になってからもエンジニア仕事はたびたび引き受けており、ちょっとした案件で「あ、お医者さんなんですかー、なんでまた?」みたいな面倒臭い展開を避けるためにそうしている。最初に「エンジニアです」と言い切っておけば、まず疑われることはない。
(ただし、臨床業務やプライベート諸々でネットやっている時間がないような場合は、air-h-128k-il の方のアカウントは技術系に明るい知人などに運用してもらってます。過去にも何度かありました)

あと、時系列が若干おかしく、私が「開いたイルカ」プロジェクトの一部から迫害をうけていたのは、クリニックを閉じる直前(2015年末)~今年の 7 月くらいまでだ。

また、死亡説を流したのも、イルカ絡みも確かにあるが、一部東京医大関係者からの追手をまくため。

有難いことに両者ともほぼ自爆してくれたので、私はようやく大手を振って表通りを歩けるようになったのだ。悪いことって長く続かないものだね。HorliX の問答無用の強さもあるが。

イルカはよく指摘されているようにコメント周りのバグがある。例えば、通院精神療法絡みのコメントをスタンプに移動させることができない。私のできる。開業時に精神科を標榜する場合、通院精神療法を取らなければいけないので当然だ。

ところが、イルカ開発元の方針でイルカは「純正品」を限定して他のプロダクツを「類似商品」としているため、私のリポジトリからバックポートを受けられない。その結果、現在(2018年10月)でもバグが残ったままになっている。(→これは、その後の状況の変化でかなり変わってきている。本家 LSC さんも「商用版とオープンソース版は別物とお考えください。商用版はフォークして独自機能を追加していただいてけっこうです。プルリクエストも考慮します」と方針を変えてきている。悪い膿が出て、膠着状態を脱してきた感じだ)

向うも困っているのか人を介して元プロダクトマネージャーの方から、オープンソース版のとりまとめ役になってくれないかという依頼もあったが、それまでにかなり不愉快な思いをさせられたことと HorliX の開発が待っていたため、流石にこれはお断りさせてもらった。(その後もお世辞だとは思いますが LSC さんの方から「中心になってもらって・・・」という感じで直接何回かお声をかけてもらったこともあります。有り難い限り。さらに、その後、メドレーさんに運営権がうつりましたが、こちらからもたまにですが連絡などもらってます。なお、担当者はかなりユニークな方です)

プライドかなぐり捨てて私に頼むくらいだから、本家の開発能力はかなり落ちているのではないかと思う。→結局、メドレーに事業譲渡。今後は、既存ユーザーに対するメンテのみおこなうようです。
ただ、私のバージョンは、商用版とは独立して自力で導入している施設などからたまに技術内容に関して相談を受けるので、細々とながらメンテを続けています。
現在でも動くことは動きますし。

また、東京医大の自爆っぷりは、ニュースなどでさんざん報じられたと思うのでここで繰り返すまでもないでしょう。

 

なんでエンジニア資質がここまで残っているのかリアルでも驚かれることがあるが、それはたぶん、学部の時から ERATO という研究プロジェクトで働いていたため(と医学生時代のプログラマ業務。が、これは別で書いてます)。

私は、学部 4 年次にも大学研究室とは別にさる ERATO のプロジェクトでれっきとした「技術員」として働いていた。当時の ERATO は管理が緩かったのだ。このプロジェクトでやっていたのは、STM (Scanning Tunneling Microscopy: 走査型トンネル顕微鏡)の製作。STM の探針を使ってナノメーターレベルでの原子操作を狙っていたため、市販の装置では役不足で、自力で STM を作る必要があったのだ。

その当時の写真を一枚。

白髪の体格の良い外人さんが 1986 年、STM の開発でノーベル物理学賞を受賞した H. Rohrer 博士。日本に常駐してわれわれを直接指導…ということはなくて、確か顧問だったか何かで、まあ、これはほぼ接待といっていい歓迎会の一コマ。ノーベル賞受賞者を呼べるくらいの組織ではあったというアピールです、はい。

肖像権の問題にも配慮して、顔写真などを公開している方をのぞきモザイクはかけたが、みなさんこの後、いわゆるナノテクノロジーという領域でそれなりのポジションを得ている方々ばかり。

学部4年の段階でこの中に放り込まれれば、そらさすがに技術力つくでしょという環境でした。何度も溺れかけたが、最後は対岸に泳ぎついたと思う。エンジニアには飛躍的にその能力を伸ばす時期があると思うが、私の場合は、間違いなくこの時期。ここで2年ほどみっちり鍛えられた後は、どこいっても通用した。

大学の研究室にも所属はしていたが、こちらでの仕事の方が面白くなり、結局、ERATO での成果で卒論を書いて大学を卒業することになったのだった。

 


ERATO の件は、話がこれで終わっていれば、めでたしめでたし、というか美談の部類に入ると思うのだが、時代背景もあって残念ながらそうはなっていない。

プロジェクト内で評価されていなかったわけではない。例えば、J-GLOBAL で「STM 猪股弘明」あたりで検索をかけると、こんな検索結果が得られる。

口頭発表とはいえ、学会要旨4本に名前を載せているのは身分(学部4年)を考えるとできすぎともいえる。

『STM による超高真空中表面加工における探針形状の変化』は、その後、学会英文誌にも発表され( Fabrication of Atomic-Scale Structure on Si(111)-7×7 Using a Sccanning Tunneling Microscope(STM), JJAP(1992) pp4501-4503 )、その謝辞に私の名前も

 

としっかりとクレジットされている。実験の意味を把握した上でひたすら SEM の写真を撮り続けたのだから今の基準で行けば Data Acquisition ということで正規クレジットされてもいいくらいだと思うが、まあ、あの業界の当時の雰囲気を考えると致し方ない面もある。

なんだけど問題は

“Detection of Single Atom Extraction and Deposition Events during Nanolithographic Processing of Silicon with a Scanning Tunneling Microscope.” Proc. Jpn. Acad. Ser. B, Vol.69, No.5, p.101-106 (1993.05)
F. Grey, D. H. Huang, A. Kobayashi, E. J. Snyder, H. Uchida and M. Aono

あたりなんだな。
これは不審な点があって、まじで調査中。

しかし、なんでこんなことしたかなあ。

私なんぞ、ECT で口頭発表したときは(「猪股弘明 ECT」あたりで検索かけるとぱらぱらとでてきます)

という具合にそのときの病棟在籍医師(都立松沢病院のD40棟)すべてクレジットしたけどね。

 


あ、あと、データベースによっては私は別人登録されているみたいですが、上記の STM 関係の著者と ECT 関係の著者HorliX の開発者は同一人物ですので、そこらへんよろしくお願いします。

物理学と精神医学と医療情報と分野が飛びまくってるので、なかなか同一人物の著作・作品と認識されずたまに困るときがあります。別人扱いで都合良いときもあるんですが。

 

猪股弘明(精神科医)

 

猫のいる病院

先日精神科病院に営業&開発に行ってきた時の話。
まず、建物外観に軽くときめく。


今どき、こんな昔ながらの精神病院精神病院した建物ってなかなかない。
古いが手入れはちゃんといき届いている。
まず、猫ちゃんがスリスリとお出迎え。


良い精神病院にはアイドル猫がいるものだが、ちゃんといた。
フレンドリーな職員さんに聞くと「以前は茶トラがこの地域のボス猫で白黒ブチをボコボコにしていた。ある時、ボランティア団体が去勢手術をしてボス猫の性格が一変。二人は仲良しになった」ということだった。
エピソードも完璧に近い。
しかし、その頃の名残なのか白黒ブチは今もボス猫の背中をふみふみ。


可愛すぎる。

管理職との方と2時間ほどお話してきたが、そのときの細かい話はビジネスっぽくなるので割愛。ただ、建物は現在の基準にあっておらず建て替えざるを得ない、経営的に苦しくなるが地域のためにも何としても精神医療は継続していきたいとのことだった。ぜひ、継続させてください。
まったくアタリの病院で、一回でファンになってしまったのだった。
あ、当直もしてきました。指定医業務もまっとうしたかと。

 

猪股弘明(医師:精神保健指定医)

HorliX, OpenDolphin-2.7m 開発者

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(追記)「精神医療は継続していきたい」とのことだったが、(継続はしているものの)残念ながら現在(2024)経営権は別の医療法人に移ってしまった。
初出時には病院名は伏せてたが、今はその必然性もないだろうから書いておくと大田区は蒲田にある南晴病院。

近年の精神病院経営のトレンド』という記事があるが、この手のトレンドに手を出しても経営が好転することは多くなく、大半がより大きな医療法人に吸収されるかファンドに身売りすることになることが多いように思う。

 

 

都立松沢病院の ECT

なんでこんな偉大な先生が HorliX のためにここまでしてくれたのだろう?
この感じ、以前にもあったなと思っていたのだが、思い出した。
都立松沢病院麻酔科のM先生だ。
M先生は、私の long brief pulse method を最後の最後まで擁護してくれた。long brief pulse method というのは、悪名高きECT(ElectroConvulsive Therapy: 電気けいれん療法)の一種の変法だ。
通常設定でECTの効果がなかったとき、刺激波形を決める各種パラメータを一施行毎に変化させ最適値に近づけていく。一種のテーラーメード医療といってもいいと思う。もちろん最適値が事前にわかるわけがないので、施行後に速やかに結果を評価して可能な限り最短手数で最適値を見つけ出す必要がある。
松沢病院では、サイン波 ECT が強く関係していると思われる医療事故がおこったため「サイン波ECTは危険」という認識が生じ(これは疫学的研究からまったく正しい)、それまでの
 ECT装置通常設定無効時→サイン波装置使用
から
 ECT装置通常設定無効時→パルス幅変更
 (つまり、サイン波装置は使わない)
といういわゆるlong brief pulse method というアルゴリズムに変わった。
ECTをかける技術が未熟な医師にインシデント・アクシデントおこされて麻酔科医として巻き添えは食いたくないというリスク回避も正直あったと思うが、そこにはそういったことを超えた何かがあったように思う(というかそう思いたい)。
 
その long brief pulse method も現在の斎藤院長に変わり「パルス幅を2倍にすれば、電力は2倍になる。装置の設定を変えるなど言語道断」という電気回路工学的・物理学的には完全に間違った理由で放棄されてしまった。(この主張が成立するのは、系の応答を直流的に取り扱っても良いときだけだが、生体組織は一種の誘電体として振る舞うため、交流的に取り扱わなければならず、問題設定の把握という点から間違えている。また、「共鳴」とは異なる原理なのだが、最適値付近では必要な電荷量は少なくてすむことがかなり多くのグループから報告されており、この特性を把握していないという意味でも間違えている)
そのときもM先生は最後まで抵抗してくれたと聞いている(その時点で私はヒラの医員だったか非常勤だったかで幹部会には当然出席を許されていなかった)。
 
なお、long brief pulse method は無名のジャーナルとはいえ peer-review を通っているので、エビデンスの有り無しでいえば(一例モノでグレードは低いものの)「有り」である。
A case of schizophrenia successfully treated by m-ECT using ‘long’ brief pulse. Inomata H et al, International Journal of Case Reports and Images 2012;3(7):30–34.
有難いことに京大の川島先生・村井教授らも追試をおこなってくれているので、何らかの加点要素はあるのではないかと思う。
それに対し、従来アルゴリズムは単に経験的におこなわれているだけなのでエビデンスは「無い」(と思う。すみませんEBMに関してはそれほど詳しくないです)。少なくともAPAのガイドライン的にも「今後の課題」とされていて、はっきりとした指針があるわけではない。
なんでエビデンスのある治療法が、ない治療法に取って代わられなければいけないのか? しかもよくわからない理由で。
 
以前にこのことに関して「今から考えるとおかしい」と書いたのはそういった理由による。
 
そういえば、両先生、(斎藤先生にはまだ実際にはお会いしてないが)容姿なども似ているような…。
猪股弘明(精神科:精神保健指定医)
日本精神神経学会ECT・rTMS検討委員会委員

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医学部受験時カースト: 男子>女子>多浪>…>再受験

東京医大の贈収賄をめぐる事件は、受験時の点数調整の問題も明るみに出され、これが「医学部の適正な男女比」や「医師にとって幸せな働き方とは何か?」といった一般的な社会的な問題を惹き起こしている感がある。

こういう議論が今までなされこなかったという側面もあり、これはこれでいいことなのではないかと思う。

ところで「医学部受験時の個人属性による差別」は医師ならばある程度は知っていることであり、逆に一般の方はまるで知らなかったのかとちょっと驚いた。

医学部受験時に不利とされるのが「女子」・「多浪生」であるが、ニュースなどであまり取り上げられていない属性として「再受験生」というのがある。他学部在学中の学生や一度大学を卒業した社会人が医学部を受ける際に使われる呼称だ。

現在では学部(以上)卒業者を対象に学士入学枠なども設定されているので、差別云々というよりは特別枠として認められていると思うが、この制度が定着する以前は「再受験生」はほぼ「悪」・受験時の差別の対象の筆頭格とみなされていた。私が医学部を受験した20年ほど前はちょうど過渡期であり、群馬大などで学士入学枠が新たに設定され始めた頃であった。(参考:『今、医学部に入学する最も簡単な方法は学士入学かもしれない』)

その当時、再受験生に対し、一般受験時の差別、つまりあからさまな点数調整があったかといえば、(大学にもよるのだが)かなりの大学で「あった」と思う。では、それが絶対であったかというとそうでもなかったように思う。

例えば、私の出身大学は、当時、「再受験に対し厳しい」・「4浪以上は絶対に取らない」とされていたが、(入学するとわかるのだが)私を含め毎年何人かの再受験生が合格していた。では、点数調整がなかったのかというと(たぶん)そんなことはなくて、私の場合でいえば「センター+筆記試験」では中位以上で合格していたはずだが、実際には補欠合格であった。

正直、不公平では?と思わないでもなかったが、「試験問題に専攻分野が出た場合、現役高校生と比べ点数取れて当然」という事情もあり、私を含めそういうものだと受け入れていた。その代わり、そういった「差別」を乗り越えてきた学生は、細かいことに拘らない何かとパワフルな学生が多かったと思う。(だから決して「たまたま医師になった」わけではありませんw )

結局、何が言いたいのかというと、受験の選抜方法というのはどんなに議論を尽くしても不公平さは残るものだし、万人が納得する完璧に公平な選抜方法というものはおそらく存在しない、だが、それを絶対とはみなさず、しぶとく生き残っているマイノリティは存在するのだ、というようなことだ。

 

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