下から見た ERATO

うちの air 氏(笑)、湘南鎌倉の斎藤先生を表敬訪問。

「この才能豊かな天才的 Software (+ Hardware) Engineer」(『いるかの棲む闇』より)ってベタ褒めじゃん。いーなー。

色々不都合ある内容なので先生消されたかな? こんな感じの記事でした。興味ある方は覗いてみてください。

いーなー、air さん(棒読み)。


ただ、齋藤先生のこの記事、私系列と air 系列の混交が見られる(わざとやってそうだがw)。

ネット上などでは、基本、

医師 = H. Inomata (猪股弘明)

エンジニア = air-h-128k-il

設定で通している。私は、医学生・医師になってからもエンジニア仕事はたびたび引き受けており、ちょっとした案件で「あ、お医者さんなんですかー、なんでまた?」みたいな面倒臭い展開を避けるためにそうしている。最初に「エンジニアです」と言い切っておけば、まず疑われることはない。
(ただし、臨床業務やプライベート諸々でネットやっている時間がないような場合は、air-h-128k-il の方のアカウントは技術系に明るい知人などに運用してもらってます。過去にも何度かありました)

あと、時系列が若干おかしく、私が「開いたイルカ」プロジェクトの一部から迫害をうけていたのは、クリニックを閉じる直前(2015年末)~今年の 7 月くらいまでだ。

また、死亡説を流したのも、イルカ絡みも確かにあるが、一部東京医大関係者からの追手をまくため。

有難いことに両者ともほぼ自爆してくれたので、私はようやく大手を振って表通りを歩けるようになったのだ。悪いことって長く続かないものだね。HorliX の問答無用の強さもあるが。

イルカはよく指摘されているようにコメント周りのバグがある。例えば、通院精神療法絡みのコメントをスタンプに移動させることができない。私のできる。開業時に精神科を標榜する場合、通院精神療法を取らなければいけないので当然だ。

ところが、イルカ開発元の方針でイルカは「純正品」を限定して他のプロダクツを「類似商品」としているため、私のリポジトリからバックポートを受けられない。その結果、現在(2018年10月)でもバグが残ったままになっている。(→これは、その後の状況の変化でかなり変わってきている。本家 LSC さんも「商用版とオープンソース版は別物とお考えください。商用版はフォークして独自機能を追加していただいてけっこうです。プルリクエストも考慮します」と方針を変えてきている。悪い膿が出て、膠着状態を脱してきた感じだ)

向うも困っているのか人を介して元プロダクトマネージャーの方から、オープンソース版のとりまとめ役になってくれないかという依頼もあったが、それまでにかなり不愉快な思いをさせられたことと HorliX の開発が待っていたため、流石にこれはお断りさせてもらった。(その後もお世辞だとは思いますが LSC さんの方から「中心になってもらって・・・」という感じで直接何回かお声をかけてもらったこともあります。有り難い限り。さらに、その後、メドレーさんに運営権がうつりましたが、こちらからもたまにですが連絡などもらってます。なお、担当者はかなりユニークな方です)

プライドかなぐり捨てて私に頼むくらいだから、本家の開発能力はかなり落ちているのではないかと思う。→結局、メドレーに事業譲渡。今後は、既存ユーザーに対するメンテのみおこなうようです。
ただ、私のバージョンは、商用版とは独立して自力で導入している施設などからたまに技術内容に関して相談を受けるので、細々とながらメンテを続けています。
現在でも動くことは動きますし。

また、東京医大の自爆っぷりは、ニュースなどでさんざん報じられたと思うのでここで繰り返すまでもないでしょう。

 

なんでエンジニア資質がここまで残っているのかリアルでも驚かれることがあるが、それはたぶん、学部の時から ERATO という研究プロジェクトで働いていたため(と医学生時代のプログラマ業務。が、これは別で書いてます)。

私は、学部 4 年次にも大学研究室とは別にさる ERATO のプロジェクトでれっきとした「技術員」として働いていた。当時の ERATO は管理が緩かったのだ。このプロジェクトでやっていたのは、STM (Scanning Tunneling Microscopy: 走査型トンネル顕微鏡)の製作。STM の探針を使ってナノメーターレベルでの原子操作を狙っていたため、市販の装置では役不足で、自力で STM を作る必要があったのだ。

その当時の写真を一枚。

白髪の体格の良い外人さんが 1986 年、STM の開発でノーベル物理学賞を受賞した H. Rohrer 博士。日本に常駐してわれわれを直接指導…ということはなくて、確か顧問だったか何かで、まあ、これはほぼ接待といっていい歓迎会の一コマ。ノーベル賞受賞者を呼べるくらいの組織ではあったというアピールです、はい。

肖像権の問題にも配慮して、顔写真などを公開している方をのぞきモザイクはかけたが、みなさんこの後、いわゆるナノテクノロジーという領域でそれなりのポジションを得ている方々ばかり。

学部4年の段階でこの中に放り込まれれば、そらさすがに技術力つくでしょという環境でした。何度も溺れかけたが、最後は対岸に泳ぎついたと思う。エンジニアには飛躍的にその能力を伸ばす時期があると思うが、私の場合は、間違いなくこの時期。ここで2年ほどみっちり鍛えられた後は、どこいっても通用した。

大学の研究室にも所属はしていたが、こちらでの仕事の方が面白くなり、結局、ERATO での成果で卒論を書いて大学を卒業することになったのだった。

 


ERATO の件は、話がこれで終わっていれば、めでたしめでたし、というか美談の部類に入ると思うのだが、時代背景もあって残念ながらそうはなっていない。

プロジェクト内で評価されていなかったわけではない。例えば、J-GLOBAL で「STM 猪股弘明」あたりで検索をかけると、こんな検索結果が得られる。

口頭発表とはいえ、学会要旨4本に名前を載せているのは身分(学部4年)を考えるとできすぎともいえる。

『STM による超高真空中表面加工における探針形状の変化』は、その後、学会英文誌にも発表され( Fabrication of Atomic-Scale Structure on Si(111)-7×7 Using a Sccanning Tunneling Microscope(STM), JJAP(1992) pp4501-4503 )、その謝辞に私の名前も

 

としっかりとクレジットされている。実験の意味を把握した上でひたすら SEM の写真を撮り続けたのだから今の基準で行けば Data Acquisition ということで正規クレジットされてもいいくらいだと思うが、まあ、あの業界の当時の雰囲気を考えると致し方ない面もある。

なんだけど問題は

“Detection of Single Atom Extraction and Deposition Events during Nanolithographic Processing of Silicon with a Scanning Tunneling Microscope.” Proc. Jpn. Acad. Ser. B, Vol.69, No.5, p.101-106 (1993.05)
F. Grey, D. H. Huang, A. Kobayashi, E. J. Snyder, H. Uchida and M. Aono

あたりなんだな。
これは不審な点があって、まじで調査中。

しかし、なんでこんなことしたかなあ。

私なんぞ、ECT で口頭発表したときは(「猪股弘明 ECT」あたりで検索かけるとぱらぱらとでてきます)

という具合にそのときの病棟在籍医師(都立松沢病院のD40棟)すべてクレジットしたけどね。

 


あ、あと、データベースによっては私は別人登録されているみたいですが、上記の STM 関係の著者と ECT 関係の著者HorliX の開発者は同一人物ですので、そこらへんよろしくお願いします。

物理学と精神医学と医療情報と分野が飛びまくってるので、なかなか同一人物の著作・作品と認識されずたまに困るときがあります。別人扱いで都合良いときもあるんですが。

 

猪股弘明(精神科医)

 

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