すごいね、大谷

ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手(まあ DH でもあるのだが‥)が、本日(平成 30 年 4 月 2 日)、6 回 3 安打 3 失点の内容でアスレチクスからメジャー初勝利をあげた。

いやあ、オープン戦時の不調はどこへやらって感じですな。

批評家は高速掌返し。

ところで、(今回は敵役ですが)アスレチクスの野球帽は子供の頃から憧れでした。今見てもかっこいいね。(クリックするとアマゾンのページに飛びます)

追記(2018/4/7)‥‥三戦連続本塁打。なにこの漫画的展開。

赤い野球帽流行りそう‥。

ユニフォームもかっこいい。週末になるとこれ着た兄ちゃんたちが大暴れしそう。

 

 

組み合わせと最適化と IT

糖尿病に限らず、治療薬の幅が増えるのはよいことだと思う。なぜなら、異なる治療薬を組み合わせることで、さらに良い効果が期待できるからだ。いわゆる併用療法というやつだ。糖尿病治療薬においては、いくつかの疫学的研究から実際の処方トレンドも変わってきていることがわかっている。具体的には、2 型糖尿病患者では SU 剤単剤療法が減り、DPP-4 阻害薬の使用率が増えている。これはわかる考え方だ。低血糖のリスクがつきまとう SU 剤のみを使うよりは、比較的安全な DPP-4 阻害薬をどこかで組み合わせた方がよいという判断によるものだろう。

次に問題となるのは、増えた選択肢の中から「どの薬を選び出し、どういった比率で投与するか」という最適化の問題だ。日本で使える経口糖尿病薬は 7 種類。単純に 2 剤選び出しただけでも 7C2 = 21 通りの組み合わせがある。これにインスリン製剤と GPL-1 受容体作動薬の注射剤 2 剤を足すと組み合わせ数は 36 通りに増える。さらに、これらを単剤での標準投与量の半分にして 0.5:0.5 で単純に投与すればよいかというとそういうわけにはいかないだろう。組み合わせの相性という因子の他に肝機能・腎機能による投与量調整も必要になってくるであろうからだ。

これに関連して(?)、興味深いニュースがあった。
日立製作所:電子カルテ解析を機械学習で、糖尿病治療の90日後の効果を高精度に予測

ビッグデータから、予後を機械学習で予測。。。流行りですね。

ですが、この手の研究結果は、吟味して受け止める必要があると思っている。

もちろん、これは素晴らしい研究なのかもしれないが、これだけではなんともいえない。まず、「HbA1c値を低減できる確率を、患者ごと、薬の種類ごとに予測可能なモデルを構築しました」とあるが、上述の通り糖尿病治療薬のトレンドは併用療法に移ってきている。単剤療法での予測が臨床的にみてどれほどの価値を持つのかという疑問がある。次に、「本技術をユタ大学の持つ残りの約2,200症例の糖尿病患者データに適用してシミュレーションしたところ、90日後の糖尿病の治療結果を高精度に予測できることを確認しました」とあるが、肝心かなめの検証がおこなわれているかどうかはこの記事は何もいっていない。シミュレーションによる予測ってただの予言にすぎなくないか? 予測は、検証して初めて意味を持つものだと思う。

次に、これは、単一大学機関でおこなわれる研究デザインにみられる共通の弱点だと思うのだが、「単一機関のカルテデータベースではすべての病歴・処方歴が集積しているわけではない」という問題点が挙げられる。例えば、虚血性心不全の発症リスクのある患者に SU 剤を極量まで投与するのは、かなり勇気の要る行為で、糖尿病治療を担当する主治医は投与量調整(減量)をおこなうと思うのだが、大学以外の診療所などで心臓病の治療がフォローされていた場合、こういった情報は解析対象の大学データベースには何ら反映されていない可能性がある。

さらに、カルテベースの解析につきまとう問題点として「保険病名の落とし穴」というものもある。例えば、 SGLT2 阻害薬は、1 型糖尿病患者に対する適応はないが、主治医がどうしても試してみたいと考えた場合、投与される可能性はある。この場合、主治医は、保険適応を通すためにカルテ上の病名に 2型糖尿病をそっと追加する。つまり、本来解析対象ではない患者が解析対象に混入されるのだ。今回は医師のチェックもはいっているようなので大丈夫だとは思うが、大規模病院向けの電子カルテシステムの開発を盛んにおこなっているとは思えない日立がこういった臨床上のニュアンスを汲み取れるのか、若干の不安は感じる。

目についた医療関係のニュースということ今回はこの報道記事を取り上げたが、特に日立やユタ大学に対して悪意があるわけではない。できれば正式な結果もみてみたいところなので、ぜひとも、オープンアクセスな媒体で公開してほしいと思う。



中学理科で学ぶ肝臓の構造と機能 ~がん細胞を撃つ!~

がんのことを悪性新生物と呼ぶときがあるが、大学でその手の知識を学ぶまでこのニュアンスがつかめなかった。なんか体内に魔物でも飼ってるような感じで、そんなにひどいものでもないだろうと呑気なことを考えていたのだ…。

が、今はがんは「悪い生き物」なんだと思ってます、はい。中学理科の知識を利用してうまく伝わるかどうかわかりませんが。

 

肝臓まわりの図を再掲します。

おさらいですが、f が肝動脈、g が門脈で、「肝臓は肝動脈と門脈の両方から栄養の供給を受けている」のでしたね。肝小葉での両血管の走行を思い出してもらえばより理解は深まるかと思います。

ですが、これは組織が正常な場合です。肝臓内のがん組織はこの原則が成り立たず「肝動脈のみ」から栄養されています。

肝動脈の幹から造影剤を注入するとその先の肝動脈の走行を反映した造影写真が上のように得られます。三か所濃い陰影が見えますね。これががん組織が疑われる個所です。がん組織が血管を巻き込んでいる感じがしませんか?

ダメ押しで門脈系も造影してみましょう。(実際には上腸間膜動脈を造影しているのですが、意図はいっしょです)

写真上部中央に薄い円形の陰影が見えますね。この部分の組織には門脈は栄養していないことが推測されます。

「肝動脈は栄養しているが、門脈は栄養していない」というわわけでこの部分はがん組織であることが強く疑えるわけです。

この技術をさらに極めると肝の治療法に応用できます。肝動脈の根本までカテーテル(ここから造影剤を注入する)を進めたわけですから、さらにもう一歩がん組織を栄養している肝動脈の分枝までカテーテルを侵入させて、そこから抗がん剤を投与したり、何らかの仕方でその分枝を閉じてしまえば、かなり局所的ながん治療になると思いませんか?

 

以上、中学理科の血液循環模式図をベースにがん治療を無理くり解説してみました。なお、造影写真は医師国試からです。




 

中学理科で学ぶ肝臓の構造と機能 ~国試をこすります~

前の記事でこんな図を載せました。

血液の流れは腸管→門脈→肝臓、胆汁の流れは肝臓→胆管→腸管なので、腸管で吸収される物質はものによっては腸管→門脈→肝臓→胆管→腸管とくるくるループすることがありうるわけです。いわゆる腸肝循環というやつですね。

薬剤師の国試でも出題される。

答えは 4 。必修なので教育的な問題ですね。ある意味、中学校の知識+αで解ける

ついでに…。

赤血球の成れの果てであるビリルビンもこの経路にのっているので、胆管が閉塞してしまうと胆汁(含ビリルビン)がうっ滞して血液中に漏れ出し高ビリルビン血症(いわゆる黄疸)になります。なお、この経路外で赤血球が溶血しても黄疸になりますが、肝臓でグルクロン酸抱合を受けていないのでこの場合の血中ビリルビンは間接ビリルビン(非抱合型ビリルビン)が優位になります(胆管が閉塞する場合は、抱合後なので直接ビリルビン優位)。両者は区別できるわけです。

ついでについでに…。

肝硬変になると肝小葉の微細な構造も破壊されるので、胆汁排泄がうまくいかずやはり高ビリルビン血症になります。肝の予備能の指標である Child-Pugh 分類ではビリルビン値が項目の一つになっています。



中学理科で学ぶ肝臓の構造と機能

あちこちで書き散らかしてきたものをまとめる。諸々の制約で本来の意図とは微妙に違ったものになっちゃってるので。心置きなくリライトする。

 

臨床で使う知識はなるべくコンパクトに頭にしまっておく方がいい!というわけで中学の理科レベルの知識から出発して肝臓の構造と機能に迫っていきたいと思います。

 

中学の理科ででてきそうな血液循環の模式図ですね。『みなみの香草屋』さんからお借りしてきました。

ちなみに「➂もっとも養分を多く含む血液が流れている血管」の答えは g で門脈といいます。肝臓は通常の臓器と同様、動脈によっても栄養供給を受けていてそれが f で肝動脈といいます。肝臓が門脈と肝動脈によって二重に栄養されているのは、臨床的にも重要で肝臓がんに対する治療(肝動脈塞栓術)に応用されています。e は肝静脈。

肝臓の機能の一つとしてあるのが胆汁の産生で、胆管を経て腸管(十二指腸)内に排泄されます。上図を活かすならこんな感じでしょうか。

肝臓には、四本の管が接続されているので解剖学的把握がちょっとばかりややこしいわけです。

もうちょっと立体構造を意識するとこんな感じになります。(元画像はここ

胆嚢・肝管・総胆管とありますが、まとめて胆管系という理解でいいと思います。解剖学的には、胆管(系)・門脈・肝動脈は三本が束になって肝臓に接続されているわけです。

ところで肝臓がその機能を実現する上での最小構造は肝小葉です。肝小葉の模式図は以下のようになっています。(元画像はここ

スケールがミクロになっても胆管・門脈・肝動脈は三本組のままになっていることに注意してください。もちろんここに行き着くまでには何回か分岐してますが。

肝臓の機能は「解毒・代謝」ですが、その機能を担っているのは肝細胞です。栄養分リッチな門脈血・肝動脈血は上図では類洞を通って中心静脈へ注ぎ込みます(中心静脈は寄り集まって肝静脈になります)。そしてこの類洞を通っている間に門脈・肝動脈は栄養分を肝細胞に引き渡しているわけです。また代謝された物質の一部を速やかに(毛細)胆管へ排出することができます。

要するに肝臓はミクロでもマクロの構造をかなり維持していて、そのおかげでシンプルな構造ながらもその機能を実現しています。

ここらへんの構造と機能の関係は、解剖学・組織学を学ぶときに感動するものの一つではないでしょうか。まさに「人体の神秘」という感じですね。



むくみ

在宅など患者さんに近い位置で仕事をしていると患者さんやその家族が疑問に思っていることを訊ねられることが多い。高血圧だとか糖尿病などは、患者さん自体が外来の主治医の先生からレクチャーを受けている場合が多いので、質問を受ける頻度は意外に多くない。多いのは、疾患と目に見える症状との関連性がぱっと見わかりにくい病態に関するものだ。その一つに「むくみ」というものがある。

今回は「むくみ」に関して取り上げたい。なので、ちょっと専門家向けでしょうか。

「むくみ」は、医学用語では「浮腫」という。wiki では「細胞組織の液体(細胞質間液)と血液の浸透圧バランスが崩れ、細胞組織に水分が溜まって腫れる」状態と定義されているが、これで具体的なイメージが湧けばいいのだが、なかなかそうもいかないでしょう。ちょっとイメージを図にしてみました。

血液の液体成分(血しょう)は、心臓から送り出された後、①動脈→②組織(間質)→➂静脈・リンパ管の順に灌流し、再び心臓に戻ってくる。この流れが何らかの事情で阻害され、液体成分が②に留まっていると、組織はぱんぱんに膨れる、つまり「浮腫」の状態になる、という理屈です。

次に、どういう場合にこの流れが阻害されるか?考えてみましょう。

一番、わかりやすいのは、①→②の流量が増大する場合でしょうか。具体的には、炎症がおこって①動脈の血管透過性が亢進している状態や低栄養状態で血管内の浸透圧が低下し水分が過剰に組織に移行する状態がこれにあたります。

また、深部静脈血栓症などで➂静脈・リンパ管が物理的・機械的に閉塞した状態も灌流がうまくいかず浮腫をひきおこします。

わかりにくいのは、心不全で足がむくむ場合(下腿浮腫)でしょうか。これは右心不全では、静脈がうっ滞し静脈血圧が上昇し、結果として②→➂の流れが阻害されるためです。

以上、かなり図式的に浮腫に関して軽くまとめてみました。

ところで、「浮腫」からこのような病態をぱっとイメージできる医療関係者は医師や看護師をのぞいて、そう多くない、というのが私の印象です。あくまで経験的な推測ですが。理由はいろいろあると思うのですが、臨床的な訓練が不十分であったり、臨床生理に慣れていない(解剖用語や浸透圧だとかの物理化学的な概念が乱れ飛ぶので統合して理解することが難しい)のが背景にあるのかなと思います。

まずは、臨床で必要とされる概念を使える形で把握し、患者さんの症状と結び付けて考えられるか、というところから始めるのがよいのではないかと私は思います。



 

「新しい」糖尿病治療薬

糖尿病シリーズ第三弾。またかと思われるかもしれませんが、薬との絡みが書きたかったので。。。

一般的に言って、糖尿病の治療は、運動療法・食事療法・薬物療法の三つである。薬物療法にのみ目がいきがちであるが、「2 型」糖尿病が生活習慣と関係していることから考えて運動療法や食事療法の重要さも認識しておきたい。

しかし、医療人として知識をブラッシュアップさせておく必要があるのは、やはり薬物療法だ。特に、最近になって糖尿病治療薬は様変わりしている。従来にない機序に基づく薬が市場に投入されるようになった。これはなんとしてもついていかなくてはならない(信じられないかもしれないは、数年前までは、インスリン製剤の他には、メインを張る糖尿病治療薬は SU 剤やビグアナイド製剤くらいしかなかったのだ)。

機序に意識して、糖尿病治療薬をまとめる。

インスリン‥‥糖尿病ではインスリンが産生されないか不足しているので、インスリンそのものを生体外から補充する。考え方は、わかりやすい。

スルホニルウレア‥‥ SU 剤と表記されることが多い。2 型糖尿病では、膵臓でのインスリン産生能が残されているので、β 細胞を刺激してインスリン分泌を促す。グリメピリドなど。

ビグアナイド‥‥肝臓に作用して糖新生を抑制する。インスリン分泌云々には関係しないので 1 型糖尿病にも使える。食欲抑制効果もあるので肥満を持つ患者に良い適応になる。乳酸アシドーシスに注意が必要。メトホルミン、ブホルミンなど。

ここまでは、古くからある薬だ。インスリンそのものを外部から補充する、残されていたインスリンをこそぎ出す、インスリンとは関係なく肝臓での糖の産生を抑える、とその機序もわかりやすい。この他にもチアゾリジンや α グルコシターゼ阻害薬、グリニドがあるが、ここではその説明は割愛。

時代がくだると糖尿病関係の創薬は目のつけどころがより戦略的になる。

一般的に、糖を経口投与すると経静脈投与時よりも大きなインスリン作用が現れる。この経験的事実から、消化管に由来する何らかのインスリン分泌促進因子の存在が仮定されていた。このような作用を持つ化学物質のうち、特に消化管ホルモンをインクレチンと呼んでいた。インクレチンが 2 型糖尿病治療薬に転用できることは容易に想像できる。

GLP-1 受容体作動薬‥‥GLP-1 は 1980 年にアメリカ毒トカゲの唾液から同定されたインクレチンの一つである。インスリン分泌促進作用の他、胃内容物排出遅延作用もある。リラグルチド(商品名ビクトーザ)、デュラグラチド(商品名トルリシティアテオス)など。GLP-1 はペプチドのため当然経口投与はできない(インスリンと同様に皮下注)。GLP-1 にヒト抗体を結合し腎での排泄を遅延させたものがデュラグラチドである。

DPP-4 阻害薬‥‥生体内では GLP-1 は DPP-4 という酵素により急速に(半減期 1 ~ 2 分)分解される。DPP-4 の活性を阻害すれば、GLP-1 の分解が抑制され、結果としてインスリンの分泌が促進される。シタグリプチン(ジャヌビア®)など。

上記二つはインクレチン関連薬ともいわれる。ところで糖尿病患者では尿糖がみられることは前にも触れた。このとき、血液中の糖は、単純に濾し出されるわけではなく、いったん濾し出された後、SGLT2 というトランスポーターで能動的に血液に戻されている。SGLT2 を阻害すれば、血液中の余剰な糖は尿中に排泄されるため、結果として高血糖改善につながる。

SGLT2 阻害薬‥‥機序は上述の通り。腎臓に作用する点はユニーク。本邦では 2014 年に発売された新薬。インスリン云々は機序に関係しないため、 1 型糖尿病にも使える可能性がある。が、評価はまだまだこれからというところだろう。

GLP-1 受容体作動薬であるエキセナチド(バイエッタ®)が日本で発売されたのが、2010 年。糖尿病治療薬を取り巻く情況は、ここ十年で大きく様変わりしたものだ。



「甘いものを食べすぎると糖尿病になりやすい」は本当か?

糖尿病シリーズ第二弾。

「甘いものを食べすぎると糖尿病になりやすい」は本当だろうか? 厳密にいうと違うが、あたっている節もあると思う。

まず、糖尿病の病態をもう少しほりさげてみよう。糖尿病の本質が「持続的に高血糖の状態にあること」であり、血糖を下げるホルモンはインスリン「のみ」であることから、「何らかの理由によりインスリンの効果が出なくなった状態」が糖尿病の病態の中心と考えられる。インスリンの効果が出ない機序には、①インスリン自体の産生が乏しくなる、②インスリンは産生されているものの各種臓器がインスリンに反応しなくなる、ことが考えられる。実際には、インスリン産生→反応悪い→無理やりインスリン産生(インスリンは膵臓 β 細胞でつくられる )→膵臓 β 細胞が疲弊→インスリン産生量減少、という両者絡んだ悪循環が進行していくようだ。なお、免疫系の異常で突如として膵臓 β 細胞そのものが破壊され、インスリン産生ができなくなった病態もあり、これは「1 型」糖尿病という。1 型糖病病は、食事などの生活習慣とは一切関係なく発症するため、甘いものを食べすぎたからといって罹りやすくなるものではない。

問題なのは上記の悪循環で進行する「2 型」糖尿病のことでしょう。「肥満」や「運動不足」が危険因子とされている。甘いものを食べて『運動もしなければ』なりやすくなるといえるでしょう。