薬剤師、現場に出る -白昼の死角-

薬子
前回の患者さんの話の続きです。つまり

『50 歳代の女性。病名はついているが、いわゆる膠原病。肩と大腿の痛みが強いため通院困難となり、治療薬であるステロイドを届けるため当薬局の出番となった』(薬剤師、現場に出る -〇〇を主訴とする膠原病

という患者さんがいて、訪問前に予習が必要!みたいな話を前回までしました。

 

では、それで準備は万全だったかというと、やはりというべきか、全然、そんなことはなかった。

訪問前の経過をもうちょっと詳しく書く。

X月1日:背部痛を訴え A 病院受診。プレドニゾロン5mg、4錠/日、分2、21日分が処方された。

X月4日:痛みが治まらず再度受診。プレドニゾロン5mg、2錠/日、分2、16日分が追加され6錠/日。増量奏功し、その後、背部痛は消失。

X月20日:A 病院外来日。診察の結果、経過良好と判断され プレドニゾロン5mg、3錠/日、分1、21日分に処方変更(半量に減量)。

このとき、処方されたプレドニゾロンをお届けするために当薬局の出番となったのだった。何の問題もないようだが…。

訪問日:起床時より背部痛再燃。訪問していた介護担当職員が、 A 病院と当薬局にその旨を連絡。私は、医師にプレドニゾロン5mg、6錠/日、分2に戻してはどうかと処方提案。追加処方がなされた。

余裕、余裕と思ってたら、患者さん、突然痛みを訴え始めたわけです。

「痛がっている」といっても、目の前に患者さんがいるわけでもないので、どう痛いかわからない。

訪問前にその報告を聞いて、一瞬、うろたえましたが、そこはこれまでの精進の賜物、「基礎疾患はリウマチ関連であることに間違いはない。メインの処方薬はステロイド。だから」となんとか考えを推し進め、プレドニゾロンの減量で病勢が悪化したと判断し、ならば、再度増量するのが良いのでは?と考えたわけです。

少しは、成長できたかな>私

これでも間違えではなかったと思うのですが、実は、他にももっと良い正解がありました。

同日午後、訪問。ご家族が以前に購入されていた市販薬のイブプロフェンを介護担当職員が患者に服用させ、痛みは既に治まっていたことが判明。A病院担当医師と協議の結果、疼痛時の屯用薬としてあらためて(医科用)イブプロフェン錠が処方された。

介護職員さん、ナイスプレー

実際に訪問したら、患者さんけろっとしてました。

簡単に言えば、ステロイドの用量調整に気をとられすぎ、疼痛コントロールが盲点になってしまっていたわけですね。リウマチ性の疾患といえば、(新しい生物学的製剤が出てきたとはいえ)ステロイドはまだまだメインの治療薬といえる。だから、この領域の疾患では、治療面ではステロイドの用量調整が問題点のすべてだと思いがちだ。だが、実際には、ステロイドの導入時なども含めて薬剤調整時に疼痛コントロールが不良になることがしばしばあるし、この症例はまさしくそれであった。

また、この手の問題は、在宅医療に固有の問題のようにも思う(ちと大げさか)。例えば、これが病院であれば、最寄りの医師が『疼痛時:ロキソニン(60) 1 錠 タケプロン(15) 1 C 経口投与』と指示を出すだけでとりあえずは解決する問題だ。ところが在宅では、主な観察者は家族や介護職員になる。病状の評価や報告はどうしても、医療者のそれとは変わってくる。上の例では、結果的に介護職員さんのファインプレーで問題は早期解決をみたが、治療環境が変わると問題点も変わってくるのだなということがよくわかった。今回、私が市販の併用薬確認を怠り、倍量のステロイドを提案してしまったが、今後は、同様な場面では、非ステロイド系抗炎症薬の使用も考慮していきたい。

 


いちおう一般の方向けにもうちょっと説明しておくと…。

プレドニゾロンは、ステロイド系の抗炎症薬で、抗リウマチ薬・生物学製剤とともに関節リウマチの治療に使われる。治療が奏功すれば、結果として、リウマチに伴う痛みも消失する。

イブプロフェンは、非ステロイド系の抗炎症薬で、即効性があり(半減期は1.8時間)、一時的に強い痛みを取ることができる。

今回、ステロイドの用法が変更されたこと(分2から分1)、用量が減量されたこと(3錠/日から6錠/日)で、ステロイドの効果が減弱し、痛みが強まったと考えられます。

なお、ステロイドは少量でも長期投与すると、感染症、骨粗しょう症などを引き起こす可能性があることが知られている。ステロイド 2.5mg/日でも骨折リスクが1.5倍に増えるという報告もある。主治医は副作用を鑑み、早期減量を行ったわけですね。

ちなみに、ステロイド・非ステロイド系抗炎症薬の副作用は以下の通りです。

ステロイド:最も強力な抗炎症薬であるが、副作用が強い。ステロイドの副作用は軽いものとしてはムーンフェイス、中心性肥満、痤瘡(にきび)、白血球増多、多毛などがあり、特に注意が必要な副作用としては感染症、骨粗鬆症、骨折、動脈硬化病変(心筋梗塞、脳梗塞など)、ステロイド性糖尿病、消化管潰瘍、白内障、緑内障、高血圧症、脂質異常症、副腎機能低下、精神症状などがある。

非ステロイド系抗炎症薬:副作用として、消化管出血、消化管潰瘍があり、特にステロイド薬もしくは少量のアスピリン(商品名:バイアスピリン®など)との併用で頻度が増すことが知られている。他にも腎機能障害や心血管障害のリスクが報告されている。

 

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