日本精神神経学会2019@新潟

数年ぶりに日本精神神経学会で朱鷺メッセへ。
開催直前に地震があったのだが、現地入りしてみると、特に余震もなく、通常運行という感じ。

某シンポにも顔を出したが、この分野で業績を持っている私と川島先生がいないと正直盛り上がりにかけると思う。なお、川島先生には最終日にようやくお会いできた。

精神科医として駆け出しだった頃にお世話になった先生方にもお会いできて、近況などの情報交換や諸々の軽い打ち合わせ。まあ、こういう学会なんでしょう。

ECT関係に関してはポスター発表や一般演題にも可能な範囲で聴きにいく。コメントもいくつかさせてもらったが、概ね好評だったようだ。

私や川島先生が確立していった方法論は、意外に広まっていたなという印象も持った。


ECT の一種の変法に関して、もうちょっと詳しく、という声もあるので、学会でコメントしたことも踏まえて、追加。

まず、ECT 施行時に電極配置やパラメータ(パルス幅や周波数など)に注目したのは米国の Sackeim という人で、この人の仕事が有名で日本でもたびたび言及されている。結論としては、右片側性でパルス幅を短くした方が、副作用の低減・効果の点で有利だ、というのがこの人の主張。なのだが、これ、うつ病あたりのメンテナンスECTを強く意識したスタディで、薬剤のウオッシュアウトに確か2週間かけたりしている。
一般的に精神科で使われる薬剤は、痙攣閾値を上昇させる方向で働くので、これが血中から抜けてしまえば、最適パルス幅は(生理学的にも確かめられている) 0.3ms 前後の方が有効だ、という主張はそれ自体は間違っていないと思う。

ただ、ECT の積極的な適応は、統合失調症急性期で薬剤が効果がない場合などで、緊急的に行われることが多く、当然、2週間近くウオッシュアウトしている余裕などない。だから、Sackeim さんの業績をひいてパルス幅を短くしました、というのはエビデンスの使い方として何か間違っているような気がする。

また、その点を意識しすぎて、すべて長いパルス幅にするというのも、これまた違うように思う。某大学のグループが、(けっこうプロトコルを工夫してるものの) 0.5ms と 1.5ms の比較をやろうとしていたが、えーと、私も川島先生も「1.5ms の方がすべからくいい」みたいなことはこれまで一回も言ったことはない。通常の 0.5ms でけいれんが誘発されない場合は、長いパルス幅も考慮しましょう、ということを一貫して主張していると思う。

細かいことはともかく、ECTに関して意識的に取り組んでいる施設は、ほぼ、この点を意識して工夫している現状は今回の参加でわかった。これはちょっと嬉しい。

ECTはもう「ボタンを押すだけ」の治療ではなくなったのだ。

 

猪股弘明(日本精神神経学会会員)

 

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