医学部再受験組・学士入学組あるある?

以前に「データベースによっては私は別人登録されているみたいですが、上記の STM 関係の著者と ECT 関係の著者と HorliX の開発者は同一人物ですので、そこらへんよろしくお願いします」と書いたことがあるのだが、J-GLOBAL ではようやく名寄せ ID が統一されたようだ。

お手配ありがとうございました>関係者のみなさま

お知らせです。 2019/8

ECT

『advanced ECT techniques』をダウンロードできるようにしておきましたので、ご興味ある方はこちらからどうぞ。

で、青字部分をクリックするとダウンロード開始となります。

 

ロナセンテープ(ブロナンセリン)

医科向け医薬品ですが、貼付剤が一つのトレンドになっているようです。

向精神薬だと、ロナセンの貼付剤が 9 月頃から使えるようになるようです。他サイトですが

ロナセンの貼り薬が出ました。

という記事にあれこれ書いてますんで、よかったらご一読のほどを。

 

覚醒剤精神病と精神科救急

ちょっと前のことだが、TVの人気番組『相棒』で覚醒剤依存症と思われる(かなりインパクトのある)キャラが出て話題になった。

話はこれで終わらず、依存症では高名な、さる精神科医の先生が「こんな依存症患者はみたことがない。依存症に対するスティグマを広げる。けしからん!」というような主張をして、これまた物議を醸した。

でも、この主張、私なんかからするとちょっと違和感を覚える。
覚醒剤を使用するとそれなりの頻度で覚醒剤精神病という統合失調症に似た病態に移行することが知られているからだ(この他にも、覚醒剤使用で誘発された統合失調症というのもあるが、話が専門的になりすぎるので割愛)。

日本精神科救急学会のHPでも、この転機の典型例が記載されている。

精神科救急の現場から 第11話 覚醒剤に手を出して

例のシャブなんとかさんは、おそらく脚本家さんがこういった素材をかなり調べてキャラ設定されたのではないかと推測する。演出もかなりリアルだったし、少なくとも興味本位で描こうとしたようには感じなかった。

周囲を見た限り、ある程度精神科救急の経験のある先生は、このシーンで即座に覚醒剤精神病のことを思い浮かべていたようだ。では、なぜ、同じ精神科医でこのような認識の差が出るのかといえば、こういったタイプの患者さんが地域的に偏在されているためだと思う。

少々、資料が古いが、警察官通報から措置入院(強制入院の一形態)に至った都道府県別の件数をグラフにしたものを下に掲げておく。

関東首都圏、特に東京都が飛び抜けて多いことがわかるかと思う。

この年は、1500件/年ほどあり、平均すると一日に 4,5 件はこの経路で入院となっている。疾患別の内訳までは記載されていないが、ベースに薬物依存症がある場合は少なくない。年間に数十件程度の地域では、この手のケースを経験してみようもないというのが本当のところではないだろうか。

でも、北陸、沖縄あたりは平和で良いですね。

 

猪股弘明(精神保健指定医

 

負の連鎖

連鎖は続いていく。

農水省元事務次官「川崎の事件見て息子も危害加えるかも」

報道もポイントをおさえ始め、

「事件直前には長男が近くの小学校で行われていた運動会の音がうるさいと腹を立てたのを父親が注意し」→聴覚過敏の存在を示唆
「練馬区役所によりますと、これまでに長男についての相談はなかったということです」→親族の自発的な福祉への協力要請は否定

とまともな情報を提供し始めた。
家族内力動の異常による家族機能の喪失などというものは、その家族内だけでなかなか解決できるものではなく、適切な外部からの支援が必要だと思う。
それもハコモノやシステムをつくっただけではダメで、まともに機能させるには、ある程度の練度が必要なのだろう。
仕事柄、東京都世田谷区や横浜市中区などの実情はまあまあ知っているが、他の地域は意外に機能していないのかもしれない。


なお、ちきりんさんによれば、被害者の方は、統合失調症の妄想型だったそうです。ちきりんさんのツィートに本人のアカウントでリプライがあった模様。

 

猪股弘明(精神保健指定医)

 

 

登戸の事件と「精神鑑定」

まだ医療観察法ができる前の頃のことなのだが、以前勤めていた病院で触法病棟(文字通り法を犯してしまった患者さんだけを集めた病棟)を担当していたことがある。担当症例が指定医申請用のレポートに使えるわけでもないし、はっきりいって人気がある病棟とはいえなかったが、うら若き女医さんを差し向けるわけにもいかないという事情も察しており(ちなみに看護師も男性のみ)、病棟を受け持っていた上級医の先生の診察スタイルに惹かれていたこともあって、担当を指示されても悪い気はせず引き受けた。
その関係上、当時、いわゆる「精神鑑定」書などもけっこう読んだ。

例の登戸の事件では、犯人は既に自死しているため精神鑑定などは行いようもないのであるが、しばしば連想されている附属池田小の事件では、当然、行われている。

現物を読む時間もないので、wikipedia などの記載をまとめると「宅間はいずれにも分類できない特異な心理的発達障害があり、この延長線上に青年期以降の人格がある。本件犯行時、本人は情性欠如者であり、穿鑿癖、脅迫思考を基盤とした妄想反応である、嫉妬妄想があった。本件犯行そのものに踏み切らせた決定的なものは情性欠如であり、著しい自己中心性、攻撃性、衝動性である」だそうである。
統合失調症圏は否定的、人格障害的な背景が強いことを示唆している。

また、調べていて初めて知ったが、死刑囚は死刑確定後、行政に対し刑の早期執行を要求している。

『八つ墓村』の主人公のモデルは現在では統合失調症ということで理解されていると思うが、事件後、やはり自死している。

かつて自分を馬鹿にした小学生・村民に復讐したいという(ある程度了解可能だがかなり不健康な)感情から出発し、それが妄想的・脅迫的ともいえる社会正義的観念に発展しないと実際の犯行に及ぶのは難しいと思う。が、奇妙なことに特異な興奮状態の下それを完遂すると当事者たちは「もう自分の天命はまっとうした」と言わんばかりに自己の存在さえも抹消しようとする。

他者の殺傷と自己の抹消が分かち難く結びついているというのが普遍的なものであるなら、このタイプの犯罪者に「一人で死ね」という批判をするのはほぼ無意味なことになるし、歪んだ観念を形成する「前に」何か手を打つというのが現実的な予防策になるかと思う


と facebook にさらっと書いていたのだが、最後の予防云々に関して「実は、同居していたとされる親族は事件『前に』川崎市の精神保健福祉センターに相談にいっていた」ということを教えてくれる人がいた。

こういうことらしい。

詳しくはリンクをたどって欲しいが、2017年からかなり頻回に相談しているにも関わらず、ほぼ放置といってよく、これを知ったとき、一同「うーん」とある種の後味の悪さとやり切れなさを覚えたように思う。


今度は元政治家の橋下徹氏がこんな発言をして物議を醸している。

橋下徹氏、京アニ放火の青葉容疑者に「一人で死んでほしい」

橋下氏の場合、ディベートのような二元論に落としこんでいるだけにさらに性質が悪く、そのことも指摘されている。まだ動機の詳細などは明らかにされていないので、はっきりとしたことは言えないと思うのだが、他者の殺傷が正当化されるような妄想を抱き、精神が極限まで荒ぶっている者にこういった言葉は届かないように思うのだ。

 

猪股弘明(精神保健指定医)