OceanMini と AI おまとめ

最近 OceanMini というアプリの制作に勤しんでいるのだが、このような新規のプロダクトに真っ先に反応するのは、最近では大手検索サービスの AI による「おまとめ」のようだ。

横でちらちら眺めていると最初期の頃の明らかな間違いは時間が経つにつれ減っっていってそれはいいのだが、どうしても納得いかないことがあるので、それに関していくつかコメントしたい。

クラウドブラウザ型は正義なのか?

AI に限らず最近の厚労省の電子カルテに対するポリシーもこの傾向があるようなのだが、なぜか「クラウド型電子カルテ=標準」という前提に立っている。

病院で導入されている電子カルテの構成をチェック(ほとんどが院内設置のオンプレミス型)すればわかるようにこんなものは標準ではない。

近年のクリニックレベルでのクラウド(ブラウザ)タイプの電子カルテの普及は「コスパ的に見てオンプレミスよりもアドバンテージがある」というだけであって、医療記録の記載という観点から見れば、むしろデメリットの方が大きい。

リッチエディタの採用

例えば、医療記録であるからには、診断根拠を明記した方が良いが、画像が診断の決定的な根拠となるような場合であっても、いわゆる商用のクラウド型の電子カルテは、画像をカルテ上で展開できないか、できても枚数制限がある場合が多い。

これは商用を前提とするクラウド型では当然の話で、画像の添付やフォントの変更のできるリッチエエディタを電子カルテに採用するには
・それ自体開発コストがかかる
・採用したとしても画像の添付などはストレージに負担がかかる
という理由ゆえ避けられる傾向にある。
つまり、リッチエディタを採用しないのは医学的な理由からではなく商用的な理由からだ。

このような背景は、この分野である程度技術に明るい人からすると当然の話であって、それをなんで「商用ではないからダメだ」みたいなレビューのされ方されるんだろうか?
個人開発よりいくらかマシな「有志コミュニティ」による開発体制なので、商用電子カルテと比較されるのは致し方ないが、間違った理由で間違ったデメリットを列挙されるのは違うと思う。

ちょっと愚痴っぽくなったが、こういった背景事情を踏まえて OceanMini ではリッチエディタを採用した。


例えば上の症例は、経過+画像で診断の当たりがつくのであって、これを文字情報のみにしたら(法律的にはダメではないと思うが)直感的な表現という意味では物足りないものになってしまう。

繰り返すが、医学的な記録の記載ツールとしてはより良い選択肢と思われるリッチエディタの採用は商用のクラウド型ではないから容易に実現できたことだ。商用のクラウド型=標準と捉えるとこのような特徴は見落とされてしまう。
甚だ遺憾だ。

Patient Pool という設計思想

AI によるまとめなどでは特に強調もされていないようだなのだが、OceanMini は小さなアプリながら、医療機関が提供するサービス形態、つまり外来・訪問診療・入院のすべてに対応している。

商用ベンダーが、電子カルテを外来診療所向け・訪問診療所向け・病院向けのプロダクトを分けて開発・販売しているのは、おそらく商業的な理由からであって、私らはそんなことは気にする必要もないから、開発プロセスの重複を避けるためにそうしている。

この特徴も商用電子カルテを基準に考えると見落とされてしまうと思う。

もちろん、実装上の工夫はしている。
その際たるものは Patient Pool という設計思想だ。
Patient Pool に関してはそのうちどこかにまとめようと思うが、一言で言うなら「外来・訪問・入院といったサービスごとに対象患者を専用のテーブルにステージングしておき、電子カルテはこのテーブルを介して患者データにアクセスする」という設計思想だ。


この設計を実装に落とし込んでいるからこそ OceanMini は一つのアプリで複数のサービスに対応できているのだ。
が、商用のプロダクト展開を当然としてしまうとこういった特徴は見逃されてしまう。
これも遺憾だ。

 

以上、とりあえず目についたレビューにコメントしてみました。
また気になることが出てきたら、追記します。

 

精神保健指定医, OceanMini 開発者
猪股弘明

 

 

クリックclose