「物理屋」さん

以前からたびたび触れているように MRI では、スピンが測定原理の中心にデンと居座っているため、医療者であっても何らかの理解は必要だ。

私も「高校で習う物理からの類推+歴史的な導入背景の把握」でこの概念を理解した方がいいのでは?みたいなことを提案した。(こことかこことか)
だが、これには限界があることも知っている。ニュートリノという素粒子では、奇妙なことに電荷がなくてもスピンがあることが知られているからだ。
実用的には、どのようなプロセスで理解していってもかまわないと思うのだが、最終的には「スピンとは、素粒子の基本的属性の一つであり、古典的には理解し難いが、その振る舞いを予測する理論も存在する。自然はそういう風につくられている」と受けとめるしかないと思う。
物理学では、こういった概念が多い。われわれが人間として日常的に経験している現象の延長では決して正確にイメージできないが、いくつかの実証的な実験結果と理論(数式)から、その振る舞いを予測したり、実在性を確信したりするしかない類の概念だ。

ところで、常日頃から、このような概念を頭の中で飼っていて、それらを用いてあーだこーだと思考を巡らせている集団がいる。俗っぽくは「物理屋」さんと言う。大学では、理学系の物理学科というところに集中して棲息している。

本人たちは大真面目にやっているのだが、傍目からは奇妙なものに映るようだ。目に見えないものを対象にしている場合が多いから、頭の中のイメージを共有するような感じで議論を進めたりする。よく他学部の人からは「目隠し将棋でもしてるんですか?」とからかわれたりもする。

だが、このような抽象的・論理的な思考様態は、それなりに有効なようで、他の領域に移っても結果を出すことがある。クリックによる DNA の二重らせん構造の発見などは、その最たる例だろう。

物理的な計測をやっている人ならけっこう同意してもらえるんではないかと。

「二重らせん」を読み返す

あたりがイイ線ついていると思う。

 

猪股弘明(精神科医、理学士)

 

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