インターンとかアルバイトとか

ごくごく稀にだが問い合わせがあるので書いておくと、会社の方で正式な形でインターンなどの制度は取っていません

これまでにも、プログラムの実装、ちょっとした機械・電子工作、電子書籍の編集補助などで、人手が欲しいというときは何度かあったのだが、近場の大学に学生アルバイトを募集すると(有り難いことに)それなりに人が集まってくれたので、それでなんとかなってました。

最近だと、(医療系の AI の影響でしょうか?)理系院生レベルあたりの方からちらほらとより積極的な形で関わりたいというような問い合わせがきています。すぐに適当な仕事があるかというと必ずしもそんなことはないんですが、こちらの方は分野があってれば仕事を振りたいと思っていますので、お気軽にお問い合わせください。
コンタクトページからどうぞ(もちろん日本語で大丈夫です)。

 

猪股弘明
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医療画像の fusion とは?

今回は医療画像の fusion (一種の画像合成)のお話。
諸々の事情で MR(Magnetic Resonance 磁気共鳴)系の fusion を取り扱っていた。

なお、MRI って何?って方は、『MRI とは? -その1-』・『MRI とは? -その2-』・『MRI とは? -その3-』あたりをご覧ください。特に『その2』のスピンの説明はけっこう好評のようです。

 

しかし、MRI のプロトン密度強調画像程度でことが済んでいればいいんですが、この分野の技術進歩は速い。「拡散」強調(という撮像法。水分子の「拡散」というより「移動」といった方が正確なような気もしますが、ここでは慣例に従います)などは、以前より脳梗塞急性期の診断などに使われている。

大脳右半球に広範な梗塞像(白いところ)が見られる

上の画像は、脳梗塞の拡散強調像(DWI… Diffusion Weighted Image)です。拡散「強調」とは言うものの、実際に撮像するときは、移動しているプロトンからの信号を抑えるような工夫をするので、水分子が動きにくくなっている部位は、高信号になります。梗塞部位に含まれる水分子は、正常組織に比べ「動きにくく」なっているため、結果として梗塞部位は高輝度(白い)領域となって描出されます。

拡散強調画像は、基本 T2 強調画像をベースにしているので、本当に知りたい水分子の挙動(大抵の病変部で水分子は「見かけ」上、拡散しにくくなる。梗塞しかり、癌しかり)を取り出したい。このとき元の拡散強調画像より T2 などの影響を排除するため ADC(Appearant Diffusion Coefficient 「見かけ」の拡散定数) Map というのをつくる。
症例によっては DWI では異常を認めず、ADC Map で低信号(ときには高信号)となって描出されることがあるからだ。
水分子の拡散の度合いを知る上ではこの ADC Map は大変便利なのだが、その反面、組織のコントラストが普段見慣れているそれと違って形態などが読み取りにくい。ストレートに言えば「どこを見ているかわかりにくい」のだ。

この欠点を補うため、解剖学的な形態が読み取りやすい T1 強調画像に ADC Map を適宜「着色」した画像を重ね合わせると、医療者にとって「どこで何がおこっているか」直感的に理解しやすい画像が得られる。

一般に特定の情報を持った画像とそれとは別の情報を反映した画像を「位置を合わせて」合成して表示させることを fusion と言います。PET と CT の fusion はよく知られた例です。(参考:『PET/CT フージョン画像』)

右側頭葉(画像では左)に何かありますね

今回は、T1 強調に ADC Color Map ともいうべき画像を fusion させたわけです。もちろん、HorliX 使いまくり。規格(DICOM)があることゆえ私一人では決められない問題もあったりするのですが、目処がたったらプラグインの形でまとめたいと思っています。

 

猪股弘明(精神科医、理学士)

 

iPSからの・・・文春砲

あんまり時事ネタは取り扱うつもりはないのだが、なんだろ、これ?

安倍首相補佐官と厚労省女性幹部が公費で「京都不倫出張」

 これが文春砲というやつですか・・・。
でも、まあ、不倫どうこうと科学政策レベルでの iPSの予算配分の話は、基本的には別の事柄だと思う。が、しかし、世間はそうは思わないんでしょうね。

 

猪股弘明(精神科医)

木を見て森を見ず、な医療画像AI自動診断

東海大・高原先生(放射線科医)のお仕事が Yahoo ニュースに載っていたので、ちょっと紹介。

MRIで乳がん早期発見 着衣のまま痛みもなし

マンモグラフィーの画像から、乳ガンの早期診断をする、というのは一昔前の医療 AI の課題としてよくあったのだが、けっこうな数の医者が「マンモグラフィー自体、かなり苦痛を伴うものなので、欲しいのは代換案なのだが、なんでマンモだけにこだわって研究してんの?」と生暖かい視線を送っていたと思う。

高原先生の DWIBS 以外にも各種方法論が提案されている。

「AI による自動診断」というのは一つの流行で、その手の研究が増加するのはわからないでもないんだが、他に決め手がありそうなときは、そちらを優先する、というのが医療人の基本的な考え方だと思う。

私も皮膚の画像から、悪性黒色腫などをひろいあげるシステムつくろうかと思ったことがあるのだが(『それは一枚の画像から始まった』あたりをご参照のほどを)、あくまで、「早期診断」レベルで、この分野の練習くらいで取り組んでいた。少なくとも、治療に繋がるような医療の本筋ではないなと思っている。

そもそも皮膚の写真を撮るダーマスコピー(dermoscopy)は、撮像条件を一定にすることが難しく、撮れた画像にしても(原則的には)皮膚表面の情報しか取得できない。
こういう状況下では、画像情報だけにこだわるのは、研究としては成立しても、実際の臨床に決定的な影響を与えるものか?と思う。

この手の研究に手を出すときは、木(画像)だけを見て森(病態)を見ずにならないように気をつけたいところだ。

 

猪股弘明(精神科医・東京都医学総合研究所客員研究員)


最近、Newsweek が、『AI vs 癌』の特集をしたのだが、

やはり、というべきか、こういう記載が・・・。

「専門の放射線診断医と同じくらい正確に(乳癌検査の)マンモグラフィーの画像を読み取れたり、皮膚科医と同じように皮膚がんを識別できたりするアルゴリズムが既に登場している」と、M.D.アンダーセン癌センターの病理医オク・チヨンは言う。「技術の進歩には目を見張らされる」

 

あー、マンモ(による乳がん検出)とダーマスコピー(による皮膚がん検出)ですか。臨床医の考えていることは、もうちょっと別のところにあると思いますけどね。

 

『iPSからの・・・』再考

実質、『iPSからの・・・神経系細胞誘導』の続き。
その最後の方で「事業として成立する前に研究開発費が枯渇する「死の谷」が迫っている」という趣旨の報道記事を紹介したのだが、その後、これは現実的な問題になって、

iPS研究予算「いきなりゼロは理不尽」 京大・山中氏支援継続を政府に求める

という事態になっているようです。

ただ、この手の記事は、ある程度ミスリードを誘うようなところがあって、SNS などでは「予算ゼロで研究が止まったりしたら大変だ、早速研究所に寄付した!」みたいな反応がでていた。

いや、そういうことではないような・・・ (- -;)

まず、これは山中先生関連の(主に備蓄事業を対象とした)「大型予算」がゼロになるだけであって、iPS 関連の予算がゼロになるわけではない。国からの科学関係の予算分配としては、科研費が有名だが、例年11月くらいに申請が行われ、審査に通れば、翌年6月くらいから交付される。科研費にはグレードがあって、基盤Sであれば、5年で2億の予算がつく。1人で申請も可能だから、これ単独でも当たれば1年で4千万使える。このクラスに申請する人は、大学の教授職についている人が多いし、所属組織にはある程度実験装備も整っている場合が多いから、そのような環境なら研究費だけで4千万というのは、かなり使い勝手がある。
また、科研費申請できるような研究機関であれば、複数人の研究者を抱えているのがほとんどだから、複数あたれば、組織としての「基礎」研究としては、かなり余裕がでると思う。
さらに、臨床的な実用化が視野に入っていれば、AMED という機関からの予算配分も期待できる。1案件あたりの予算としては、AMED は大型のものが多い。
実績のある方々が数多く在籍しているわけだから、これらの予算が取れないということは現実的には考えにくい。

だから、「ゼロになる」という強調の仕方は、ちょっとどうなんだろと思う。
研究活動は縮小するかもしれないが、会社が不意に倒産するように事業がピタッと止まるというようなことはありえないはずだ。

また、研究フェイズの上でも、いったん、枠組みを再考した方がいいように個人的には思う。iPS に関しては、幹細胞への初期化や各種組織への分化誘導、生体への導入あたりまでの技術確立は文句なしに素晴らしいと思う。が、そのレベルから実際に人体に生着させ、機能を獲得するというのは研究テーマとしては別の話になってくるのではないだろうか?(ここらへんは前の記事を読んでください)
状況が膠着したら、一つの考え方に縛られるより、打開のために異なるアイディアを持ってそうな複数の人に予算を分配して機会を与えるというのは、あっていい考え方だと思う。


実際、枠組みを新しくする構想は前からあったようですね。

iPS細胞、産業化見据え 再生医療研究の新指針れ

この時期にこのような主張をするのはなんでだろ?

 

と疑問に思ってたら、その背景をさらりと書いている記事があった。

日本の iPS 研究は、なぜガラパゴス化したのか?

現在の延長線上には、臨床応用は難しいという認識は私だけではなかったようで、ちょっと安心。あと、国際的視点が興味深かった。

 

 

猪股弘明

PHAZOR合同会社
精神科医