失神と TIA とパニック障害

失神、つまり、一過性の意識障害は、臨床的によく見られる症候だ。以前は、「心疾患が原因となるものは要注意。TIA(Transient Ischemic Attack …一過性脳虚血発作)であれば、特にすることはない」(by 私の初期研修の内科指導医)などと教えられていたのだが、今は状況が変わっている(TIA で意識消失になるということはそれほど多くないという事情もあるが)。

というのも、

・TIA発症後90日以内に脳梗塞を起こす可能性が15~20%とそれなりに高く、その 15~20%のうちの半数は、48時間以内に発症

・24 時間以内に症状が消えてもMRI拡散強調像では脳梗塞像が見られる場合が多い

ということが次第に明らかになってきて、TIA は「脳梗塞の一歩手前。けっこう危険な状態」という認識に変わったからだ。近年の疫学と画像診断の成果は凄い。そういうわけで、今では立派な治療の対象になっている。

評価は、ABCDDスコアが有名。

治療は、特に脳動脈の狭窄などがなければ、脳梗塞発症予防として低用量のアスピリン投与が推奨されている。

 

ところで、なんで柄にもなくこんな真面目な記事を書いたかといえば、知り合いの介護ヘルパーの方が、先日、エレベーター内で失神し病院に搬送されたから。

ちなみに、そこの病院では、心電図とったのみで無罪放免。まあ、TIAは疑わなかったわけですね。(エレベーター内での迷走神経反射くらいの読みでしょうか)

私が、興味を持ったのは「それ以降、エレベーターに乗るのに抵抗を覚えるようになった」というヘルパーさんの弁。いきなりパニック障害になることはないだろうが、回避行動の萌芽は見られる。

なお、件のヘルパーさんには、TIA絡みとパニック障害の話をして、けっこう感心された。いきなり意識が飛んだのだから、不安になるのは当然。不安を解消するためには、医師の総合的・包括的な評価を伝えるのがけっこう有効なのかなと思った次第。

 

つけたし

ABCDD (=ABCD2)スコア

名称 内容 点数
A (age) 60歳以上 1
B (blood pressure) 収縮期≧140 or 拡張期≧90 1
C (clinical feature) 片側脱力 2
脱力なしの言語障害 1
D (duration of symptom) 60分以上 2
10分以上60分未満 1
D (diabetes) 糖尿病あり 1

TIA発症後2日以内の脳梗塞のリスクは3点以下では1.0%、4~5点で4.1%、6点以上で8.1%。4点くらいから、入院治療が必要というのが、専門家のおおよその見解。

 

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