スージャヌと併用療法

以前、

組み合わせと最適化と IT

というエントリーで経口の糖尿病治療薬は併用療法にトレンドが変わってきている、というようなことを書いた。

そのトレンドにそった新薬が登場した。

先日(2018/03/23)、シダクリプチン(ジャヌビアⓇ)とイプラグリフロジン(スーグラⓇ)の配合錠であるスージャヌⓇの製造販売が承認され、年内には市場に出回る予定だという。

スーグラとジャヌビアの合剤だからスージャヌ。安直なネーミングという意見もあろうが、この種の配合錠は今後も上市されるだろうから、この命名規則で徹底するなら徹底してほしい。

ところで、私はこの手の併用療法が大好きだ。

単剤で上手くいかないとき、自分なりの判断基準で併用薬を選ぶ。奏功したときは気分が良い。うつに対する SSRI + α しかり、高血圧治療薬しかり。

今回は、以前のメインであった SU 剤をすっ飛ばしての DPP-4 阻害薬 + SGLT2阻害薬だから、なおさら私好みだ。さっと見たが、治験の成績もよい。1 日 1 回投与(朝食前または朝食後)ですむというのも便利。

機序に関しては『「新しい」糖尿病治療薬』あたりを参照のほどを。

難を言えば、成分量 1:1 (実際には 50mg : 50mg )で配合されているので細かい調整ができない点。専門家筋からは、顔をしかめられるかもしれないが、2 剤のところを 1 剤ですむというのは、患者さんの服薬コンプライアンスを考慮するとメリットは大きいと思う。

 

 

フーコー『精神医学の権力』書評

精神科シリーズ第三弾。

高校の頃、哲学にも興味があり、フランス語も読めないくせにミシェル・フーコーの著作に惹かれた。全然理解できませんでしたけどね。

医師になり精神科を通過しているときにフーコーの『精神医学の権力』という本を読んだことがある。そのときに某所で書評を書いた。精神科の専門の先生方にも評判がよかったようなので再掲する。 “フーコー『精神医学の権力』書評” の続きを読む

妄想は消えても猜疑心は残る -妄想性障害-

精神科ついでにもう一記事。

精神科には興味があって研修の一環として単科の精神科病院で勉強させてもらったことがある。良い研修病院の条件の一つに「症例が豊富なこと」というのがあると思う。この点に関しては私が研修を受けた病院は間違いなくあたりであった。研修前は「単科だからS(シゾ、統合失調症のこと)ばっかりだろう」ぐらいに考え、正直あまり期待していなかったのだが、統合失調症といっても様々であるし、統合失調症のように見えて実はバイポーラー、統合失調症なんだけどパニック発作もおこす、なんて症例もあり、研修前の感想がいかに浅薄であったかと今となっては思う。

ところでそういう医師にとって取り組みやすい症例の一つに妄想性障害がある。鑑別疾患として妄想型の統合失調症や認知症があげられるのだろうが、前者とは妄想の広がり方、後者とは妄想以外の社会機能の保たれやすさといった点で違うので鑑別は割合容易だ。要するに「妄想がある」というその一点だけ健常人と異なるのだ。

私が担当した症例は『息子が私の財産を狙っている。いつ殺されるかもわからない!』といって突然家を飛び出し、所持金がなくなるまでホテルを転々としていた高齢の男性であった。(お金がなくなったところで御用→強制入院となったわけですね)

予後が良いことが知られており、薬剤にもよく反応する。興味深いのは寛解の過程で、一言でいうなら「素にもどっていく」という感じである。一時的とはいえ「命を狙われていた」などとトンデモナイ妄想を持った家族の元に帰っていくので、その距離感の縮め方が精神科らしいというかなんとも興味深いものであった。