妄想は消えても猜疑心は残る -妄想性障害-

精神科ついでにもう一記事。

精神科には興味があって研修の一環として単科の精神科病院で勉強させてもらったことがある。良い研修病院の条件の一つに「症例が豊富なこと」というのがあると思う。この点に関しては私が研修を受けた病院は間違いなくあたりであった。研修前は「単科だからS(シゾ、統合失調症のこと)ばっかりだろう」ぐらいに考え、正直あまり期待していなかったのだが、統合失調症といっても様々であるし、統合失調症のように見えて実はバイポーラー、統合失調症なんだけどパニック発作もおこす、なんて症例もあり、研修前の感想がいかに浅薄であったかと今となっては思う。

ところでそういう医師にとって取り組みやすい症例の一つに妄想性障害がある。鑑別疾患として妄想型の統合失調症や認知症があげられるのだろうが、前者とは妄想の広がり方、後者とは妄想以外の社会機能の保たれやすさといった点で違うので鑑別は割合容易だ。要するに「妄想がある」というその一点だけ健常人と異なるのだ。

私が担当した症例は『息子が私の財産を狙っている。いつ殺されるかもわからない!』といって突然家を飛び出し、所持金がなくなるまでホテルを転々としていた高齢の男性であった。(お金がなくなったところで御用→強制入院となったわけですね)

予後が良いことが知られており、薬剤にもよく反応する。興味深いのは寛解の過程で、一言でいうなら「素にもどっていく」という感じである。一時的とはいえ「命を狙われていた」などとトンデモナイ妄想を持った家族の元に帰っていくので、その距離感の縮め方が精神科らしいというかなんとも興味深いものであった。



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