「甘いものを食べすぎると糖尿病になりやすい」は本当か?

薬子
糖尿病シリーズ第二弾。

「甘いものを食べすぎると糖尿病になりやすい」

は本当でしょうか?

厳密にいうと違うと思いますが、あたっている節もあるように思います。

 

 

まず、糖尿病の病態をもう少しほりさげてみよう。糖尿病の本質が「持続的に高血糖の状態にあること」であり、血糖を下げるホルモンはインスリン「のみ」であることから、「何らかの理由によりインスリンの効果が出なくなった状態」が糖尿病の病態の中心と考えられる。インスリンの効果が出ない機序には、①インスリン自体の産生が乏しくなる、②インスリンは産生されているものの各種臓器がインスリンに反応しなくなる、ことが考えられる。実際には、インスリン産生→反応悪い→無理やりインスリン産生(インスリンは膵臓 β 細胞でつくられる )→膵臓 β 細胞が疲弊→インスリン産生量減少、という両者絡んだ悪循環が進行していくようだ。なお、免疫系の異常で突如として膵臓 β 細胞そのものが破壊され、インスリン産生ができなくなった病態もあり、これは「1 型」糖尿病という。1 型糖病病は、食事などの生活習慣とは一切関係なく発症するため、甘いものを食べすぎたからといって罹りやすくなるものではない。

問題なのは上記の悪循環で進行する「2 型」糖尿病のことでしょう。「肥満」や「運動不足」が危険因子とされている。甘いものを食べて『運動もしなければ』なりやすくなるといえるでしょう。

 
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糖尿病とは?

薬子
今日は、コモンディジーズ中のコモンディジーズ、糖尿病に関してまとめます。

というのは、糖尿病はここ数年で治療薬・治療戦略が大きく変化したから。

現場復帰したときは、知識をブラッシュアップするのが大変でした。

苦労しましたが、それでもついていくことができたのは、糖尿病の病態に関する基本的な知識があったからだと思います。基本て大事ですね。

だから、一般の人でも知識が定着しやすいように基本的なところから書いていこうと思います。

 

そもそも糖尿病とはなんでしょうか?

糖尿病は、世間的にもかなり誤解を受けている疾患ではないでしょうか。いわく「甘いものを食べすぎているとなりやすい」とか「おしっこが甘くなる」とか。。。断片的なイメージが先行しているように思う。私も医療職につくまでは、似たり寄ったりでしたが。

まず、糖尿病の本質ですが「血液中の糖の濃度(=血糖値)が持続して一定値を超えている状態」と捉えるといいと思います。

ここでまずでてくる疑問が「糖は、運動するためのエネルギー源と習った。人間に必要なものである。血糖値が高いとなぜまずいのか?」というものです。

なるほど。確かに、例えば、通常の人でも食後数時間は高血糖の状態になることはあります。ですが、通常の食生活をしている人が重篤な疾患になるかというとそういうことはありません。なぜなら、通常は、インスリンというホルモンが分泌されて、全身の臓器で血液中の糖が取り込まれて血糖値は正常値に戻るからです。

問題なのは、持続的に高血糖が続くことです。糖分子に含まれるアルデヒド基やケトン基は、基本的に反応性が高く、無秩序にたんぱく質や脂質と反応します。これから始まる一連の化学反応(糖化反応)が、生体にとって非常によくないのですね。

具体的には、血管や神経にダメージをあたえ、糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症といった合併症をひきおこします。「糖病病を放置していたら、透析を受ける羽目におちいったり、失明してしまった」という話を聞くこともあるかと思いますが、それはこれら合併症によるものです。

また、このように数年~数十年にわたって慢性的に進行する病態の他に、何かの拍子に急激に血糖値が上昇する糖尿病性高血糖という状態もあります。こちらの場合は、意識障害をともなうものもあり、迅速な処置が必要です。
慢性的な症状も急性的な症状どちらもありますが、生体の許容量を超えた高血糖はいずれにしてもよくないわけです。

なお、血液中の糖が一定値(具体的には 180 mg/dl 程度)を超えると糖が尿中に漏れ出すため、「糖尿病では尿が甘くなる」というのは、ある程度、あたっています。ですが、単純に腎臓の病気で尿中に糖がじゃばじゃば漏れ出している病態も考えられるため、尿糖が糖尿病の本質かというとちょっと違うようです。

 

大海薬子

 

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受験めし

大海薬子
先生、中学理科の話、評判いいです。

できたら、「受験」にまつわるエピソードで1本書けないでしょうか?

季節も季節(初出は1月。受験シーズン直前)ですし

nomad
ああ、じゃああの話にしようかな

 

寒くなってきましたね。

この時期の風物詩の一つといえば、「受験」があります。

ネット上にも、受験にまつわるいろんな情報が集まっています。けっこう驚いたのは、「受験日の前日夜と当日朝には何を食べたらいいか?」というまとめサイトがあったこと。便利というかお節介というか。。。

『将棋めし』が話題になったことからわかるように、頭をフル回転で働かせているときの栄養補給は大事です。

色んな意見があると思いますが

① 脳の神経細胞がもっとも利用しやすいエネルギー源であるグルコースを速やかに補給する

ということに加え

② 気分転換作用を期待する

という意味で集中しているときの食事は確かに重要だと思います。① に関して軽くまとめておくと、

・脳の主要なエネルギー源は、グルコース(従来は、グルコース「のみ」といわれてきましたが、現在はケトン体というものもエネルギー源として利用できることがわかってます。けれどももっともお手軽に利用できるのはグルコース。医療現場で、経口摂取不能な低血糖患者にまずおこなう処置はグルコースの静脈注射です)。

・グルコースの消費量を臓器別にみると、脳で 2 割程度が消費されている(脳は非常に「ばか食い」です)。

・ご飯や麺などの炭水化物が体内で分解されてグルコースになる。一部のスポーツ選手は大会前日・当日にパスタやバナナなどを多めに摂取する(腸内から吸収することに加え、グリコーゲンという形で体内に備蓄しておくことができるため)。

といったところでしょうか。

一昔前の漫画だと特別な日の前に「ビフテキ喰いいくぞ!」という表現があったりしますが、戦後の食糧難の時代ならいざしらず、現在は、恒常的にアミノ酸が足りてないということは考えにくく、栄養面からみるとあまり意味がなさそうです。特別な食事で発奮させるという効果はあるかもしれませんが。過度のプレッシャーは、心理的な意味で良くなく、当日前日の食事などは常日頃から食べ慣れているものでいいんではないでしょうか。気になるようなら炭水化物多めで。

ただし、受験当日は、どんなに神経図太い人でも少なからず緊張状態におかれます。緊張状態におかれると、変にお腹がすいたり、逆に、食事が喉を通らなかったりと一時的な「摂食障害」が出る場合もあります。こればかりは当日になるまでわかりません。念のため、飲み物や手軽に食べられるお菓子類は持っていった方がいいかもしれません。ちなみに私は、某国家試験当日は、日頃から愛飲しているペットボトルの紅茶飲料を気持ち多めに持っていって助かりました。変に喉が渇くわ、えづくわで食事どころではなく、糖分入りの飲料水は、重宝しました。

ところで、こういった短期的な栄養補給ということの他に思い出すことがある。某国家試験の二か月ほど前だったろうか、受験の重苦しさを実感し始めたとき、突然、掌の皮がぼろぼろと剥げはじめた(落屑、という)。片方の掌だけであれば、接触性皮膚炎だとかが考えられるが、そうではない。両の掌のみに対称的に小さい白いぶつぶつ(水泡)ができて、やがてぼろぼろと剥がれ落ちていくのだ。痛みや痒みはまったくなし。なんだこれは?と調べてみると、『掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)』というのがこれに近い。で、この病気の原因をさらに調べると、ビオチンという物質が不足してなるらしい。ビオチンは、かつて「ビタミン H」と言われていた補酵素の一種でヒトでは腸内細菌叢でつくられるらしい。どうやら、私の体内では、過度のストレス→腸内細菌叢破壊→ ビオチン産生量減少→掌蹠膿疱症、ということがおこっていたらしい。文字通り、「ストレスが身体に来て」しまったのだ。

そのときは、「今から緊張してもしょうがないし」と自分に言い聞かせ、気持ち野菜や乳製品を多めにとることでなんとか乗り切った覚えがある。ある程度の年齢になってしまえば、過度のストレスをかわす知恵を持っている。しかし、これが小学生や中学生くらいの年齢だったらどうだろう? 過剰なストレスを感じながらもその回避方法を知らない、というのはなんとも不健康な状態ではないだろうか。この業界に入ると、受験を背景にした下痢や血便に悩まされる子供が数多くいることを知ることになる。時には精神的な病に発展することもある。過剰ともいえるストレスに子どもを曝すのは、今の時代、ある程度仕方のないことなのかもしれない。けれど、子どもが自身で処理しきれない情況になったとき、手助けするのは周囲の大人の責任だ。そのようなとき、危険信号は、「食」がらみで出ることが多い。このことを心の片隅のどこかに留めておきたいと思う。

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中学理科で学ぶ肝臓の構造と機能 ~がん細胞を撃つ!~

nomad
さて、中学理科肝臓シリーズ3話目(最終話)です。

うまく着地できるといいんですが。

 

がんのことを悪性新生物と呼ぶときがあるが、大学でその手の知識を学ぶまでこのニュアンスがつかめなかった。なんか体内に魔物でも飼ってるような感じで、そんなにひどいものでもないだろうと呑気なことを考えていたのだ…。

が、今はがんは「悪い生き物」なんだと思ってます、はい。中学理科の知識を利用してうまく伝わるかどうかわかりませんが。

 

肝臓まわりの図を再掲します。

おさらいですが、f が肝動脈、g が門脈で、「肝臓は肝動脈と門脈の両方から栄養の供給を受けている」のでしたね。肝小葉での両血管の走行を思い出してもらえばより理解は深まるかと思います。

ですが、これは組織が正常な場合です。肝臓内のがん組織はこの原則が成り立たず「肝動脈のみ」から栄養されています。

肝動脈の幹から造影剤を注入するとその先の肝動脈の走行を反映した造影写真が上のように得られます。三か所濃い陰影が見えますね。これががん組織が疑われる個所です。がん組織が血管を巻き込んでいる感じがしませんか?

ダメ押しで門脈系も造影してみましょう。(実際には上腸間膜動脈を造影しているのですが、意図はいっしょです)

写真上部中央に薄い円形の陰影が見えますね。この部分の組織には門脈は栄養していないことが推測されます。

「肝動脈は栄養しているが、門脈は栄養していない」というわわけでこの部分はがん組織であることが強く疑えるわけです。

この技術をさらに極めると肝の治療法に応用できます。肝動脈の根本までカテーテル(ここから造影剤を注入する)を進めたわけですから、さらにもう一歩がん組織を栄養している肝動脈の分枝までカテーテルを侵入させて、そこから抗がん剤を投与したり、何らかの仕方でその分枝を閉じてしまえば、かなり局所的ながん治療になると思いませんか?

 

以上、中学理科の血液循環模式図をベースにがん治療を無理くり解説してみました。なお、造影写真は医師国試からです。

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中学理科で学ぶ肝臓の構造と機能 ~国試をこすります~

前の記事でこんな図を載せました。

血液の流れは腸管→門脈→肝臓、胆汁の流れは肝臓→胆管→腸管なので、腸管で吸収される物質はものによっては腸管→門脈→肝臓→胆管→腸管とくるくるループすることがありうるわけです。いわゆる腸肝循環というやつですね。

薬剤師の国試でも出題される。

答えは 4 。必修なので教育的な問題ですね。ある意味、中学校の知識+αで解ける

ついでに…。

赤血球の成れの果てであるビリルビンもこの経路にのっているので、胆管が閉塞してしまうと胆汁(含ビリルビン)がうっ滞して血液中に漏れ出し高ビリルビン血症(いわゆる黄疸)になります。なお、この経路外で赤血球が溶血しても黄疸になりますが、肝臓でグルクロン酸抱合を受けていないのでこの場合の血中ビリルビンは間接ビリルビン(非抱合型ビリルビン)が優位になります(胆管が閉塞する場合は、抱合後なので直接ビリルビン優位)。両者は区別できるわけです。

ついでについでに…。

肝硬変になると肝小葉の微細な構造も破壊されるので、胆汁排泄がうまくいかずやはり高ビリルビン血症になります。肝の予備能の指標である Child-Pugh 分類ではビリルビン値が項目の一つになっています。

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