彼自身による秋葉太郎

秋葉太郎
前回登場したものの「影が暗すぎてよくわからないキャラになっている」とクレームいただいた…orz
製作者の演出ミスだな。
気をとりなおして、全身姿披露!

 

秋葉太郎
これが俺氏。
ジーンズ、ネルシャツ、バンダナ、オキニのアニキャラ。
人から変に思われるのは知っているが、俺はこのスタイルが落ち着くし、スタイルを変える気はさらさらない。

秋葉太郎
自己紹介しておこう。
現在、29歳。
東北出身。地元では神童といわれ、地元の県立高校から、現役で東京の国立大に入学。
知的好奇心としては京都の大学にも興味あったけど秋葉原に行きやすいから東京
コンピュータが好きで情報分野を専攻。好きなプログラムを書きまくってたら、世界から評価されて、博士号を4年でもらって院修了。
教授? いたけど俺は興味なかったから、あんまり教わったとか教えられたって記憶はない。

秋葉太郎
博士号取得後は、メーカーに就職。
ここが最悪だった。
研究ができるのはよかったんだが、上司が無能。
俺氏の華麗にして美しいプログラムが理解できなかったらしい。
「周囲の人から理解されるようにもっとわかりやすくプレゼンしなさい」とか俺だったら恥ずかしくて口に出せないような当たり前なこと言ってた。けど、俺からしたらナンセンス。美しいものに余計な説明はいらない。それがあいつはわかっていない。あんまりうるさかったから、最後は胸ぐら掴んで「無能なお前に俺の管理は無理だ!」ってはっきり言ってやった。

同僚からも妬まれたね。
俺氏が3日で書ける内容を奴らは5年かけてやっとこさ形にする。で、うまく動かなかったりする。できないんだったら素直に聞けばいいのに、遠回しに言ってくるんだ。「仲間にならないか」みたいな感じで。まったく気持ちの悪い連中だよ。俺氏は、こういうとき、馴れ合いよりも高貴な孤立を選ぶ。仲間になんかならなかったから、さんざん嫌がらせされたよ。

OLっていうのか。会社の女子も苦手だったな。これに関しては時間があったらおいおい語っていこう。

結局、最後は、色々なむしゃくしゃが溜まって、会社の研究所で大暴れしてジエンド。

秋葉太郎
その後は、大変だったな。

病院に連れて行かされて、発達障害という有難い診断名をいただいた。会社はそんないきさつもあったんで、警察のご厄介にもならず、辞めるときは自発的退職という形になった。

田舎の両親は掌返し。それまでの神童扱いが、犯罪者扱い。縁切られた。

仕事もない(する気もなくなったけど)。家族にも頼れない。

これには、流石の俺氏も途方に暮れた。

秋葉太郎
そんな俺氏を救ってくれたのは、市役所の福祉担当の牧田さんと青空のとし子ヘルパーだった。

牧田さんは、自立支援制度による介護利用というけっこう裏技に近い(と思う。介護ってお爺さん・お婆さんのためにあるんだと思ってた)手段を使って、行政による支援の手を差し伸べてくれた。

とし子さんは、俺氏の病気に理解があったかどうかわからないが、お姉さんのように接してくれて、荒んでいた俺の魂を癒してくれた。

それなのになぜ引き離す!?

 

と、キャラ設定を1回で終わらせたいというこちらの意図を汲むかのように一気にこれまでの経緯を語った秋葉氏であった。

次回は、この人物設定を医学的に検証してみます。

 

監修: 猪股弘明精神保健指定医

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phazor.info『ネット版 症例発表における倫理指針

で示された倫理規定に準じています。

つまり、個人が特定されないようにぼかして書いてます。ただし、モデルになった人物はいます。けれどご安心ください。該当する2〜3人の利用者さんの特徴を混ぜてますので、決してあなたのことを書いているわけではありません

 

高齢者介護だけが介護じゃないの巻

nomad
私と薬子さん、介護のカンファレンスに出席してきました。
今回は趣向を変えて、介護編。

精神科関連の地域医療/大人の発達障害 に興味のある方は是非どうぞ。

薬子
意外な人も登場します。

よろしく♪


とし子ヘルパー
ところで介護というと高齢者介護というイメージがありませんか?

もちろん高齢者の介護は介護保険制度の発足のきっかけとなった介護であるため今も重要であることには変わりありません。

ですが、従来の介護保険の対象にならない方でも介護が必要な方はおられます。例えば、まだ若いけれど精神的な病気や身体的な障害のため日常生活をうまくおくれないような人たちがそうです。介護保険とは枠組みが違いますが(自立支援医療や地方自治体の独自の制度が枠組みになる)、これも介護の一つの形です。

当事務所ではこのタイプの介護に積極的に関わっています

とし子ヘルパー
あまり抽象的なことを言っていてもぴんとこないと思うので、今回から何回かに分けて具体的な訪問エピソードを紹介したいと思います。

ちょうど新人の新子ヘルパーが入所してくれたので、彼女に当事務所の名物利用者さんの秋葉ちゃんを担当してもらうことにします。

いいかな、新子ヘルパー?

新子ヘルパー
新子(しんこ)です。

がんばります!!

 

とし子ヘルパー
そして、訪問は基本チームで動くもの。

当事務所と縁のある先生方を紹介しておくわね。

 

nomad 医師
フェイザークリニックの nomad (のまど)です。

秋葉ちゃんの主治医やってます。

なんでお前だけ名前がアルファベットなんだよ、というツッコミはなしで。

 

大海薬子
大海薬局の大海薬子(おおうみくすりこ)と申します。

薬剤師ですが、現場に出ています

よろしくね新子さん。

 

こうして名物利用者さん秋葉ちゃんに対する新しいチームが組まれたのであった。

一方、その頃、横浜市内某所で秋葉ちゃんこと秋葉太郎は…

 

秋葉太郎
仲良くなってきたとし子ヘルパーともお別れか。

かわりに新人をあてがうらしい。

俺氏がちょっと回復してきたからってすぐそれだ。しょせん医療や介護なんてそんなもんだ。信用できない。

やっぱり働いたら負けなんだ

俺氏をなめてかかるとどうなるか思い知らせてやる。

待ってろ、新人。

 

 

新人ヘルパー新子さんの運命やいかに?

秋葉ちゃんとはいったい何者か?

こてこての展開でひっぱる介護編なのであった。

次回に続く)

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間質、の対になる言葉は?

薬子

むくみ」が好評だったようなので、付け足します。

そこで出てきた「間質」という言葉の連想からだと思いますが、「間質性肺炎って何ですか?」という質問をいただきました。

nomad
んー 、そういうのは質問というのか??? (´Д`)

じゃ、今日は私が説明。

 

 

ゲフィニチブ(イレッサ)の副作用ー間質性肺炎ー空咳

という試験対策用のキーワードの羅列丸暗記で「間質」を理解しているとそういうことになる。ちなみに「間質の対になる言葉は?」と訊くと、やはりというべきかほとんどの人がわかっていないので、たぶんそういうことなのだろう。

間質の対になる言葉は「実質」だ。臓器・組織においてその機能の中心となっている部分が「実質」であり、それ以外の部分はすべて「間質」である。

例えば、肝臓であればその機能の中心は「代謝・解毒」なので、実質は肝細胞そのもの、それ以外の血管内皮細胞・結合組織などはすべて間質である。肺の場合は、その機能の中心は「ガス交換」なので、実質は肺胞腔(肺胞+肺上皮細胞)、間質はそれ以外の肺胞壁モロモロということになる。

ここまでくれば、「間質性肺炎」という言葉の理解はできる。肺炎のうち炎症が生じる場所が主に肺間質であるものを「間質性肺炎」と呼んでいる。実質性肺炎という言い方は聞かないが、これは、実質に炎症がある場合は原因がほぼ細菌性・ウイルス性に限られるので、それぞれ「細菌性肺炎」・「ウイルス性肺炎」と呼んでいる、という事情による。

また、間質性肺炎は、炎症の首座が、(人体「外」環境に直接暴露されているといっていい)肺実質ではなく、間質という人体「内」であることから容易に想像がつくように免疫が関与している場合が多い。(先ほどチェックしたが、ゲフィニチブの副作用による間質性肺炎の機序はいまだに不明なようだ)

なお、間質性肺炎の症状は、息切れ・発熱・咳などであるが、炎症は気管支などには及んでいないため痰などはさほど分泌されず、咳は乾性の空咳になる。

これでキーワードはつながったかな?

 

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モジュレーターって何?【新薬高脂血症薬パルモディア説明会に参加しました。】

nomad
以下が、『パルモディア -薬子的『モジュレーター』解釈-』の元記事になります。

一か所気に入らないところがあり、リライトするに至ったわけです。

どこかわかりますか?

 


新薬高脂血症薬パルモディア説明会に参加した。
まず、既存の薬ベザフィブラートの鍵と鍵穴の説明があった。【鍵穴:PPARα(ペルオキシダーゼ増殖因子受容体)、鍵(リガンドともいう):ベザフィブラート】
「新薬パルモディア(ペマフィブラート)は鍵穴(受容体)に入る鍵(リガンド)ではなく、モジュレーターです。」との興和(株)MRさんの説明がわからず、モジュレーターと鍵はどう違うんですか?と聞いてしまった。

その後、開発部門から模式図をいただいた。モジュレーターとは広義の意味で鍵であるが、生体の特定の機能のみを発現促進するように振舞うリガンドのことをいう。以下の模式図の通り、パルモディアは脂質代謝改善のみの機能を持つ(肝機能障害は従来のフィブラート系薬剤と比べおこりにくくなる)。

 

なぜ、このようなことができるのだろうか? 従来のフィブラート系薬剤も標的は PPARα で変わらない。

この機構を理解するポイントは、

・PPARα が核内受容体であり、直接 DNA の標的遺伝子部位と結合し他の因子により転写活性の調節を受けている

・ペマフィブラートは PPARα と結合することにより PPARα の立体構造を変化させ、他因子の結合状態を変えることで転写活性を調節している

にあると思う。アロステリック酵素の転写調節因子バージョンといえばわかりやすいか?

あるいは、膜受容体と比較するとわかりやすいかもしれない。『膜受容体とアゴニストの結合→細胞内シグナル伝達→遺伝子産物の産生』のような系では、特定の遺伝子機能だけを発現・促進させるというのは、なかなか難しい。それに対し PPARα + フィブラート は、これ自体が核内に移行し特定の DNA 領域と特異的に直接結合するため、望まない遺伝子産物をつくりだすことがない。さらに、自身の立体構造を変えることで、関連する一連の遺伝子のうち、例えば「脂質代謝に関連する酵素」をコードする遺伝子部位の転写活性を上げることができる。

もちろん、現実的にはこのように図式的・理想的には働いていないだろうし、臨床的な評価もこれからなのだが、薬剤設計自体はかなり工夫されたものではないだろうか。


nomad
気に入らなかったのは図です。

「別の」タンパク質が結合すると説明していますが、図はほぼ同種のタンパク質のように見えます。

ここで、注目すべきはそこではなくて、これらのタンパク質との結合部に関する立体構造が変わっているところでしょう。だから、転写活性が変わってくる、変わってもいいんだという説明になるはずです。

ある種の薬剤師さんが物理学、特に原子レベルでの分子の立体構造をイメージするのが苦手だ、という事情はうっすらとは理解しているのですが、苦手なことがわかっているならば修正すべきです。

特に高校時代、物理不履修者は、基本概念だけでもいいから現場に出る前にこの分野を理解しておく方が望ましいと思います。

医療には、総合科学的側面があり、物理・化学・生物の基礎の上に立脚しているので、何か一つが欠けていると実務に必要な知識の習得に困難を覚えるようになります。それが理由で現場に出れないとか出るのがおっくうになる、というのはもったいない話だと私は思います。

 

nomad フェイザー合同会社

この記事を含め当サイトの人気コンテンツを中心に電子書籍化しました。現在はアマゾンで好評発売中。2019/12/31 増補版を出しました。精神科領域を2章ほど追加。執筆担当は精神保健指定医の(HorliXOpenDolphin-2.7m の開発者としても著名)猪股弘明先生(amazon 著者紹介ページ)。こちらも概ね好評。

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日本(co.jp)はおろか USUK でも購入できるのはさすがアマゾンって感じです。
なお、アマゾンのキンドルライブラリは、購入済みの電子書籍の改訂版画出ても端末アプリのライブラリには自動で反映されません。カスタマーサポートにメールやチャットなどで連絡すると、すぐに(もの数秒で)反映されて、新しい版のダウンロードができます。

【参考】『アマゾン kindle ライブラリは、(日本では)電子書籍の改訂版が出ても自動で更新されない仕様のようですBioPhysical Psychiatry +

上記電書のネタ+αや新規の臨床問題などを facebook 上の

薬剤師に必要な基本的臨床医学知識を研究・実行する会』(猪股弘明先生が管理してます)

で取り上げてますので、興味のある薬剤師さんや医師の方がいたら(薬関係でやりたいことが一通り終わったので、現在は一般の方も参加可能となっています)、ぜひご参加ください。

 

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パルモディア -薬子的『モジュレーター』解釈-

薬子
2018年6月に興和から

高脂血症治療薬パルモディア®️(一般名:ペマフィブラート)

が発売された。

このとき出てきたのが「モジュレーター」という概念。

発売元は、『パルモディアは「リガンド」ではなくて「モジュレーター」です』と説明した。

リガンド? モジュレーター? 違いは何でしょう

 

勉強会などでこの話題が出ることは多いですが、曖昧に(そして多くの場合、間違って)理解している方が多いようです。

ベザフィブラート

まず、従来のフィブラート系薬剤、ベザフィブラート(商品名:ベザトール®️など)の特徴をまとめましょう。

ベザフィブラートは、他のフィブラート系薬剤同様、細胞質内の PPARα (ピーパーアルファ)という受容体と結合し、核内に移行。他のコ・ファクターと転写因子複合体を形成して DNA に結合。脂質代謝改善遺伝子産物を発現させることで、体内の LDL コレステロール・トリグリセリドを減少させ、HDL コレステロールを増加させる。このとき、肝機能を障害させる遺伝子産物も発現してしまうため、副作用として肝機能障害が出現することがあります。

軽くイメージを掲げておくとこんな感じでしょうか。

ベザフィブラートを載せた PPARα 車は、核内へ移行。脂質代謝改善遺伝子産物も肝細胞障害関連遺伝子産物も区別なく転写翻訳してしまいます。

 

ベザフィブラートの改良

ベザフィブラートを改良してより意味のある薬剤を設計したい場合、なんとかして副作用である肝機能障害を抑えたいと考えるのではないでしょうか。発想としては単純ですが。

まさしくそれをやったのがペマフィブラートです。

ここで、着目すべきは「PPARα という受容体と結合し、核内に移行。他のコ・ファクターと転写因子複合体を形成して DNA に結合」という点です。

この転写因子複合体が肝障害関連遺伝子領域と結合するときには、転写率を下げるような機構があれば、上記の目標が達成できることがわかります。転写率を下げる、例えば、DNA とユルく結合(かなり比喩的な表現ですが)させればいいわけです。

そして、転写因子と DNA を「ユルく結合」させる最も簡単な方法は、ペマフィブラートが PPARα と結合し転写因子を形成した際、この転写因子の立体構造そのものを変化させることです。

イメージ的にいえば、こんな感じでしょうか。

 

図では、「立体構造の変化」を車のタイヤの形状で表現してみました。パルモディアを載せた PPARα 車はタイヤの形状が変化してしまいます。脂質代謝改善遺伝子領域ではがっちりと DNA 路面にタイヤが吸い付くものの、肝機能障害関連遺伝子領域ではタイヤの形状と DNA 路面が不適合をおこしています。実際にも PPARα-パルモディア転写因子は関連遺伝子のイントロン領域と結合するようです。(ただし、繰り返しますが、この説明はあくまで比喩的なものです。実際の転写過程では、他の因子もパルモディア-PPARα 転写因子に結合し、転写因子複合体とでもいうべきものをつくっています。他の因子も転写活性に影響を与えます)

 

ポイントは

  • PPARα が核内受容体(膜受容体→シグナル伝達系を使った場合、機序はまた違ったものになります。このような「直接的な」制御はできません)という点
  • ペマフィブラート-PPARα 転写因子の立体構造が変化する点

でしょうか。

確かに、パルモディアはリガンドのように特定の受容体と結合します。ただし、結合後、受容体の形状を変化させ、最終的な遺伝子産物の産生量を調整するように振舞います。だから、「モジュレーター」と呼ぶのですね。(人によっては、アロステリック酵素の転写因子バージョンと言った方が理解が早いかもしれません)

この用語が適切なものなのか、本当に意味のあるものなのか、私にはわかりませんが、ここでは、そう理解しましょう。

それにしても、パルモディア、狙ったつくったのか、それともたまたま見つけたものかわかりませんが、かなり精巧な働き方をするものだなと思います。

 

今後の評価

ただし、このような凝ったつくりこみをすると、その反動もあるようで、具体的には、パルモディアの代謝に関連する CYP などの酵素は、他の薬剤と被るものが多く、結果、併用に注意すべき薬剤が従来のフィブラート系薬剤に比べ増えています(シクロスポリン・リファンピシンが併用禁忌。クラリスマイシン・カルバマゼピン・フェノバルビタールなどが併用注意)。

パルモディアそれ自体は安全性の高い薬剤といえそうですが、肺炎を併発し抗菌薬の投与を受ける場合や、他に基礎疾患を持っており薬剤投与を受けている患者に対しては、相互作用のチェックが必要になりそうです。

 

よくある間違い

「他のフィブラート系と異なりペマフィブラート自体が PPARα と高選択で結びつき… 」とかいう勝手な解釈。いえいえ、ベザフィブラートもかなり選択的に PPARα と結合します。

『おくすり110番』

なんか説明がおかしいですよね。

 

も一つ。色んな意味で「罪深い」間違いをしている例を

医療系まとめサイトは成立しないと思う

にあげておきましたので、よかったらご一読のほどを。

 

 

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