国内AEDの半分に故障の恐れ 日本光電の10万台
医療機器製造販売会社、日本光電工業(本社・東京都新宿区)は 20日、同社が販売した自動体外式除細動器(AED)の一部に心電図を解析できない不具合があったと発表した。同じ部品を使う機種は全国に約10万7千台あり、今月下旬にも点検を始めて故障が見つかれば修理する。厚生労働省によると、国内で設置済みのAEDは約21万台で、点検対象は約半数に上る。
同社によると、点検対象のAEDは米国製で、商品名は「カルジオライフ」。型式は「AED―9100」「同9200」「同9231」「同1200」の4種類で、国内外で約30万台が販売されている。心電図解析は心臓に電気ショックを与える前に必要な検査で、これまでに2件の不具合があったという。うち1件は奈良県で4月、80代の女性に使用した際のトラブル。女性はその後、死亡したが、AEDの不具合と死亡の因果関係は不明という。
というニュースが目を引いた。
というのもサイマトロンの発売元が光電メディカルという日本光電の子会社だからだ。エレクトロニクス立国と言われる割には日本は医療機器分野、特に人体に侵襲を加える医療機器への開発意欲は低い。医療機器というのはつくりっぱなしというわけにはいかず、今回のニュースのように何か問題がおこった際には迅速な対応が求められ、当然、承認も慎重ならざるをえず、結果としてメーカー・行政ともにこの分野には及び腰となっているからだ。必然的に海外で承認済みのものが国内で使われることになる。
困るのは、そのせいで仕様が国内で明らかにされず装置自体がブラックボックスとなってしまう傾向があるということだ。このニュースをダシにしていってしまうとシミュレーションをやる際、パルスの電流制御の方法を知りたくて光電メディカル経由で開発元に訊いたことがあるのだが、案の定、なしのつぶてであった。電流制御はサイマトロンのキモとなる技術でそうやすやすと明らかにしたくないんだろうが、自分たちが何やってるかわからないというのは私のような人間にはかなり気持ちの悪い事態で、今回のようなことがあったりするとなおのことなんとかならないかと思ってしまう。
今回の件は、あちこちで流れたニュースを総合すると装置を自己診断するソフトが機能しなかったためそれをとりかえる、ということですみそうだ。が、そもそも心電図解析のアルゴリズムに致命的なバグがある(ある種のVT・Vfを正常ととってしまうなど)、という可能性も考えられ、その場合にはアルゴリズムくらいは公開されていないと事例解析にならないと思うのだ。
■追記
もうちょっと詳しく調べないとわからないのだが、現行の心電図解析のアルゴリズムはかなり簡略なものが採用されており事実某社の製品では
機種により解析アルゴリズムには違いが持たされており、同じECGが入力された場合に製品Aでショック指示が出たとしても、製品Bではショック指示が出ないことや、またその逆も考えられます。
と表記してある。
やはりこれアルゴリズム自体の検討もやった方がいいんではないかと思う。循環器内科医はBLSの講習もいいのだが、こういう仕事もすべきだと思うよ。
猪股弘明(医師)