OsiriX をソースコードからコンパイル・ビルドする方法

医療と理工系分野の接点ということで前々から医療画像の分野には興味があった。

Windows では、K-Pacs などフリーの DICOM ビューアーがけっこうあるが(K-Pacs はその後、開発はストップしている。Horos開発ストップしそう)、このたび Mac を購入したので色々できそうなOsiriX を導入してみることにした。
32ビット版を使ってみてけっこう使えることが判明したので、今後の勉強のため?にソースコードからコンパイルことを試してみた。まず、開発者ページに飛ぶ。

HowToInstall

えーと、たぶん現時点での最新版である Xcode 4.3 では上のようにやってもうまくいきません。
なんですが、Mac は操作も慣れていないのになぁ~とぶつくさいいながらも、試行錯誤してなんとかコンパイル→ランまでできました。

RunOnXcode4-3

ポイントは、

(1) Xcode4.3 では、直接 SVN(SubVersioN) が使えるのでそこからソースファイル群を読み込んだ方が初心者には楽。

(2) Xcode4.3 では、スキームをセットしてターゲットを決めるので select & run という操作の表現自体が不適切。

(3) ‘Development’ target なんてできないので、ここで発想を変えて product をビルドできるような自然な手順を考える。

といったところでしょうか。

あと、なんでインストールするのに一見わかりにくい2段階の方法を取るのか考えてみるといろいろ勉強になるかと思います。

【追記】OsiriX オープンソース版のビルドに関しては、新しい記事があります(HorliX 開発ブログ『OsiriX Lite の現在』)。ビルドしても使えるかというと微妙なんですが。

【追記2】その後、HorliX というプロジェクトを始めました。
Horos に contribution
→ 分岐・独立(64bit 化して Mac AppStore で公開・配布)
→ 世界的にもそこそこ売れる
→ が、どこぞからか反感かったかアップルサイドの判断で公開中止
→ でも引き合いはあって直接配布に切り替える
→ マイナーアップデートを繰り返し、なんとか Catalina・BigSur でも動いている
というような流れできています。

 

猪股弘明(医師ですが、前職エンジニア

 

 

TMSとECT

少し前にNHKの番組でTMS( Transcranial Magnetic Stimulation 経頭蓋的磁気刺激)が取り上げられたせいか外来などでこれに関する問い合わせがちらほらあった。その番組は見逃したのだが、かなりかたよったつくり方だったようで、まるで夢のような治療であるかのように紹介されていたという話だ。
最近はTMSはマークしていなかったので、知らない間にこの分野の治療法が飛躍的な進化を遂げたのかと気になってさきほど PubMed などを調べたが、やはりそんなことはなかった。むしろ重症ではTMSはECTほど効果がないことを示す報告の方が眼につく。

Repetitive transcranial magnetic stimulation versus electroconvulsive therapy for the treatment of major depressive disorder, a randomized controlled clinical trial. Keshtkar M et al; J ECT: 2011; 310-314

前にも述べたと思うが、そもそもECTを使うのはうつが極まって食事をとるのもままならない患者さんや希死念慮が激しくてなかなかコントロールできないケースなどだ。うつだと中等症くらいまでなら、投薬+環境調整でなんとかなってしまう。現行だとTMSは今ひとつ使い道がはっきりしない。(妊娠を希望されていて薬を飲みたくない女性患者の方や癌末期で薬の服用すら難しい患者さんにはかなり有効な方法だと思うが、なぜかこちらの方の努力は一般には取り上げられないし、本格的にやっている施設も少ない)

(追記)…現状だとTMSやDCSは、ニューロリハビリかなあ。

 

猪股弘明(精神科医)

エルゼビア、涙目…なるか?

ネット上でもちらほら話題になりつつあるが、学術出版大手のエルゼビアのビジネスモデルに対して一部の学者が抗議の声を上げ始めた。口火を切ったのはフィールズ賞受賞者のガワーズ氏で、ブログに抗議の意図を掲載した。その後もこの流れは徐々に普及し始めているようで、出版・査読のボイコットを表明するサイトも立ち上がった。

私はプロの学者ではないのでどちらかといえば対岸の火事のように見ているが、これはけっこう意味のある運動ではないかと思っている。研究らしきことを始めればすぐにわかるが、商業学術出版を使うと文献の調達にけっこう費用がかかる。レビュアーが引用しろといっているから、ネットなどで落とすと一本 3000円くらいする。で、こういったものが書いている論文に必須かといえば、そうでもなかったりする。むしろ、クオリティが低くてがっかりすることの方が多い。(なので私は古典的な著作権を委譲するタイプのジャーナルに投稿するのを止めてしまった)
PLoS などのオープンアクセスが出始めた時点でこの手の雑誌は衰退する運命にあったのではないだろうか。

私はといえば、arXiv (究極のオープンアクセスでしょ、これ)やパブーなどの取り組みに注目している。というかこれくらいの発表媒体があれば、私などは十分こと足りる。


パブーは一時期(2019 春頃)閉鎖説も出ていたようですが、別会社が事業を引き継いだようです。よかったですね。

 

 

猪股弘明(東京都立松沢病院)

 

ECT に反対する人々

かつてはかなり物議を醸していたECTであるが、日本では見た目の問題などどちらかというと情緒的な批判が多かったように思う。アメリカの場合、もっと踏み込んだ批判をする人々がいる。

Doctors of Deception: What They Don’t Want You to Know About Shock Treatment

 

この本は、実際に ECT 治療を受けた患者さんが書いたもので、アマゾンでの評価も高いようだ。実際、これまで素朴に疑問に思ってきたことをけっこう明らかにしてくれている。例えば

・世界的に Sackeim がこの業界の権威とされているが、医師免許を持っていない(元々は心理学者)。アメリカでは ECT だけ施行するとか可能なのかと思っていたが、やっぱりダメらしい。また、キャリアの初期に ECT のデバイスメーカーのコンサルタントをやっていたことも明らかにされている。著者はこういったことに対してはっきりと批判している。

・ ECT の研究が盛んな精神科(West Forest, Duke や Columbia など各大学)はメーカーから多額の寄付金を受けていること。また、(これは著者の憶測だと思うが)ネガティブなデータを隠す傾向があること。

などなど。

 

猪股弘明(松沢病院精神科)

 

日本精神神経学会 2011@東京

ECTの症例に関して報告してきた。
概ね好評だったようだ。

山梨大の本橋先生、呉医療センターの竹林先生、豊島病院の中村先生…。日本のECT業界の主要なメンバーが集まってくれて、コメントしてくれたのは嬉しかった。

 

猪股弘明(都立松沢病院)