精神科医の弱点

ECTはもっぱら精神科医がおこなうわけだが、では精神科医がすべてこの治療法に関して詳しいかというと残念ながらそうではなくむしろ精神科医の関心は薄い。精神科医が興味を持っている治療法は―一般の人がイメージするように―やはり精神療法や薬物療法だ。

私は、これまでこの治療法の関心が薄いのは修正型が日本に普及してそんなに時間が経ってないからだと考えていたが、どうも違うようだ。導入された直後の方がどちらかといえば、熱気はあったように思う。治療効果が期待したほどではなかったので熱気が冷めてきた、ということではない。むしろ、治療の最終手段として臨床現場では確固たる地位を築いている。

最近は、精神科医にとって電気という物理的な存在を治療に使うという発想に違和感があるためではないかと思うようになった。いつだったか「この患者さんの静的なインピーダンスは高いので…(うんぬん)…」と同僚と話していたとき、さる女性研修医から「インピーダンスって何ですか?」と真顔で訊かれたことがある。不審に思って尋ねると、高校の頃、生物を選択すると物理は未履修でも医学部は受けられたらしい(今はどうだか知らないが、当時はそうだったらしい)。大学の教養でも電磁気に力を入れてないとそういうことになってしまうらしい。確かに医学部の専門課程でインピーダンスって言葉は出てこなかったよなあ…。

むしろ患者さんの方がこの治療法に対して勉強熱心だ。躁うつ病でエンジニアなんて方は、精神科医よりも電気に関して詳しいから、ECTに関していろいろ訊いてくる。このブログを始めたのもそれがきっかけになっている。

時間もないのでエッセイ風にまとめると、ECTは精神科医にとって武器であると同時に弱点でもある、ということになろうか。あまり面白くないオチではあるが。

猪股弘明(精神科医)

※…ECTに関して詳しい精神科医であるかどうか見分けるにはこの質問がおすすめかもしれない。それは「ECTに使うパルス波って、電圧が方形波ってことですか? 電流がパルス状ってことですか?」というものだ。答えは、電流の方。電流が四角いパルス状に変化するよう電圧を制御している。現在、日本で使用されているECTの装置は、サイン波は定電圧サイン波、パルス波は定電流パルス波をそれぞれ出力する。

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