2020診療報酬改定 -ニューロモジュレーション関係-

さらっと眺めてて気がつきましたが、ニューロモジュレーション関係は、けっこう点数ついてますね。

 

まずは TMS( Transcranial Magnetic Stimulation 経頭蓋的磁気刺激療法 )


施設基準通すのが少しばかり面倒ですが、点数的にはまずまずではないでしょうか。

 

治療法ではないが、MEG( Magneto-Encephalo-Graphy 脳磁図 )

唐突に17100点とかなりの点数で新設され、なんか理由があるのか?と思っていたら、なんでも先進医療から外れたということで、こちらに廻ってきたようです。診療報酬版「損失補填」と言えなくもなく、賛否両論あるかもしれません。

 

 

最後は DBS(Deep Brain Stimulation 脳深部刺激療法)

7 本未満でも 71350点。侵襲度も高く、手間暇考えるとこれでも低いくらいでしょうか。

 

 

猪股弘明(精神科医)

 

サイマトロンの設定変更

懐かしい写真が出てきたので、公開。
めっちゃマニアックですが。
サイマトロン(ECTで用いる医療機器)で各種パラメータを調節するとき、こんな感じになる。
P-WIDTH = Pulse Width 。これを右に回すか左に回すかである意味、患者さんの運命別れます。
理論わかってない人は触らない方が無難かも。

こういうのも嬉しいですね。

 

猪股弘明(精神科医)

 

「ひきこもり」と精神科訪問診療

現在、臨床業務としては、横浜市の某区のメンタルクリニックで外来を担当しているのだが、ここは外来の他、カウンセリング・デイケア・精神科訪問診療もやっている。

そのクリニックのマネージャーの方と雑談していたら、やはり最近、多いのは「ひきこもり」の訪問依頼だそうだ。それも区の福祉担当者からの紹介が多いという。
「ひきこもり」というと、「対応が後手にまわっている」とか「新しい制度・モデルが必要だ」とか不安を煽って大騒ぎしている人もいるようなのだが、この考えには常日頃から違和感を持っていた。

「ひきこもり」となっている原因のある程度は、ベースに精神疾患がある場合が多い(もちろん、「ひきこもり=精神障害」が成り立つわけではないが)。発達障害・うつ病・躁うつ病・統合失調症…etc バラエティに富んでいるが、どれも精神科の守備範囲だろう。やることも外来・入院の時と大きくは違わない。面接をし、見立てをし、当面の治療方針を立て、適切に社会資源を使う、時には家族調整を行う。
既存のシステムを活用することでもある程度の対応が可能なように思うが、どうだろうか?

若干問題があるとすれば、このルートの使い方の上手い下手が各自治体においてかなりの差があること。

当たり前のことを当たり前にやることは、意外に難しいが、珍妙な制度を新設するよりは、よほど現実的で効果的だと思う。

 

猪股弘明(精神科医)

ベンゾジアゼピン系受難の時代に

近年、ベンゾジアゼピン系薬物は一種の迫害を受けているのだがその筆頭はデパス(一般名:エチゾラム)だろう。

こんな記事があった。

発売から30年 睡眠導入剤「デパス」に深刻な副作用が次々と

なのだが、私はデパスはけっこう使っている。市中のクリニック外来で来院頻度が多いのは適応障害で、もともと健常な人でも環境からのストレスで軽く抑うつ症状を呈する患者さんは多い。
だから、治療方針も「ストレス源からの隔離」が第一となり、症状に対して対症療法的にデパスを出したりする。
もともと健康な人が多いから、2週間も休養を取ってもらえば、かなり回復するし、「薬は飲みたくない」という人も多いから、自然にデパス使用量は減ってくる。
ベンゾ系薬物の漫然とした長期投与は論外だと思うが、デパスをそんなに目の仇にしなくてもいいのではと思う。
軽い適応障害あたりでいきなり SSRI (現在、主流になっている抗うつ薬)いれてグダグダな病態になるよりなんぼかマシだと思う。


なお、この Friday の記事自体、けっこうツッコミどころがある。facebook タイムライン上では医師の諸先生と、ここではもうちょっと一般的に(と言っても薬剤師さんメインですが)ディスカッションされました。

 

猪股弘明(精神保健指定医)

 

学会委員

諸々の事情で、再び、日本精神神経学会の ECT・rTMS等検討員会の委員になりました。
再び、というのは以前にもやっていたことがあるからで、このときは(2013 年頃)ECT のサイン波装置の廃止勧告や rTMS の保険収載などに関与した。
サイン波装置は、副作用が強い・生死に関わる有害事象が比較的多いといったことにくわえ、この頃、製造元がサポートを打ち切ることを決めたため、学会として使用を禁止する明確なメッセージを出す必要があったのだ。
メッセージを打ち出すのは簡単なのだが、課題としては、通常使用ではサイン波・パルス波装置のけいれん誘発性を単純比較するとサイン波装置に利点があったため、「パルス波装置出力最大でけいれんが誘発されない場合、どうするのか?」というアルゴリズム上の問題が発生した。

が、このとき、私はサイン波装置の代換手段として、パルス波装置(サイマトロンというやつですね)の設定を変えて使えば代用が効くでしょうというような提案をして、役を降りた。この問題は、そのうち成り行きで決まっていくだろうくらいに考えていたからだ。

 

ところが、今年6月の学会に久しぶりに参加してみると、これがいまいち決まってなかった。

この間にも方法論的な提案はなかったわけではない。

・前投薬的に薬物を使う(テオフィリンやカフェイン)
・麻酔薬を変更
・電極配置を変える
・パルスのパラメータを変える
・大出力の装置を承認してもらう

といった手段がこれまでのところ提案されている。他の学会、特に外科系のそれであれば、あっさり決まったのかもしれないが、まあ、なんていうんだろうか、精神科医の集団というのは、薬の使い方や精神療法の是非に関して議論するのは得意でも、この手の侵襲的な治療手段を決めるのは苦手な側面がある。そろそろ決めた方がいいのでは?という漠然とした雰囲気はあったのだが、はっきりとしたことは決まってなかったというのが実情であった。

他にも色々な事情があったようで、この夏、学会各種委員は全面的に入れ替えになり、結果として私にもお鉢が回ってきたという次第だ。

ECT のアルゴリズム以外にもやりたいことはあるので、前向きに取り組みたいと思っている。

 

猪股弘明(精神科医)