人さがし -事務&カウンセラー@メンクリ-

会社のコンサルがらみで経営者に代わって事務&心理職をさがすことになった(患者さんが来すぎて、本当にマンパワーが足りない)。

とりあえず、臨床心理系コースが設置されているめぼしい大学にコンタクトを取ったのだが、まずは学生課を通してくれという。

一つ目の大学は、きわめてフレンドリーでこちらのかなり無茶な要求にも極めて温厚に対応してくれた。

 

調子にのって某有名私大に電話したのだが、ここが… orz

「それは正規職員なのですか?」(こんなの、即答できませんて。そんなの応募した人材のスキルや適応度で決まってくるしょうに)

「学生のアルバイトなら、家庭教師と官公庁とoooとxxxとしか受け付けていません」(いやあ、これでも保険医療機関なんですが・・・)

「本学が考えているインターンシップというものは X■△ というもので(以下御高説、略)」(右耳から左耳に抜けてました)

みたいな不毛な会話がけっこう続いた。

最終的には、こちらの立場を理解してもらって、ある程度のアヤがついたのだが、明らかに最初は「有名企業に何人就職させたか」が数値目標にでもなっているかのような対応。「日本の大学っていまだにこうなのか」とちょっとびっくりした。

 

猪股弘明(医師ですが、コンサルっぽいこともやります)

 

80年代風サブカル批評と『おやすみ プンプン』

バブル真っ盛りの80年代後半、どういうわけかサブカルチャーが隆盛していた。また、それを「ニューアカデミズム」的な観点から批評するという流れもあった。

その後も、例えば『エヴァンゲリオン』のような精神や宗教をからめた作品が出現するとその系譜の批評がちらほらでたりする。が、時代が変わったのだろうかそれほどは社会に影響を与えていないような気がする。当時は、時代を巻き込むような勢いがあったような印象がある。

自分も精神科領域で働くようになり、精神医学が絡んでくるような作品に出会うと専門職的な視点から作品を眺めるようになった。

最近、おおと思ったのは『おやすみ プンプン』のヒロイン母殺害後のヒロインの行動。かいつまんでいうと、実母からとある宗教の布教の手先に使われていたり、肉体的・精神的な虐待を受けていたヒロインが主人公と結ばれた翌日、二人で母と対峙。逆上した母と揉みあううちに二人はその母を殺めてしまう。その後、二人のとった行動は、その遺骸を山中に埋めてしまうというもの。ここらへんの絶望感ややり切れなさは上手く描かれている。

そして感心したのは、その後のヒロインの描き方。

よく映画や小説には謎めいた「記憶喪失キャラ」が出てくることがあるが、実際に多いのは犯罪をおかした場合である。自分が犯した罪の大きさを受けとめきれずにその部分を切り離してしまう。具体的には、その部分の記憶がすっぽり抜けたり、別人格になって遁走したりする。一般的に「解離」といわれているような現象だ。

半ば解離がおこりかけた状態や PTSD 的な悪夢などヒロインのメンタル面の描き方がかなりリアルなのだ(120話)。さらにヒロインのメンヘラー化は進み、「自分だけを見ていてほしいから」とフォークで主人公の左目を潰そうとする(121話)。おそらく作者の浅野いにお氏はかなりここらへんを勉強したのではないかと思うが、作品には勉強した痕跡を残さず、そのエッセンスを上手く作品のなかに溶け込ませている。

一方で作品の伏線として宗教が大きな要素となっており、こちらはこちらで多くのエピソードが描きこまれている。ヒロインのメンヘラー化の行方や宗教的な伏線の盛り上がり方からみて作品は終盤をむかえているようだが、これら要素がきれいにまとまると相当レベルの高い作品になるのではないかと思う。

猪股弘明(精神科医)

 

抗うつ薬併用療法に関して

うつ病に対してカリフォルニアロケットという投薬方法がある。この分野で頑張っているのはストール先生のほかには、Pierre Blier という人。 Am J Psychiatry は眼を通すようにしているが(最近はちょっと…)この人の論文はよく見かける。

例えば

Combination of Antidepressant Medications From Treatment Initiation for Major Depressive Disorder: A Double-Blind Randomized Study. Pierre Blier et al, 2009

決定的なのはこの図でしょう。

Pierre Blier 2009 figure

面白いのは、 Fluoxetine 単剤よりも

1.他の3つの併用療法の方がすべて効果が上回っている

2.併用療法間には効果に大きな違いはない

というところでしょうか。狭義のカリフォルニアロケットは Venlafaxine (SNRI 日本未承認) + Mirtazapine ですが、フルオキセチンやブプロピオンでも代用可能というようにも読み取れます(どちらも日本では使えませんが)。

私はたまに SSRI + 少量の三環系・四環系 という処方をすることがありますが、(今まで意識していませんでしたが)発想にはこういった記事の影響があったかなと思います。

猪股弘明(精神科医)

 

 

EBM と単剤化神話

某SNS で EBM に関してのトピックがあった。この話題に関しては日頃から思うところがあったので、コメントをつけたのだが、けっこう評判がよかったようなのでここに再掲(若干、修整あり)してみよう。

以下は「 EBM なんて単純ですよ」という発言に対しての私のコメント。

『EBM が「単純」? ところが精神科領域だとそうでもないんです。

A「2種以上の精神科薬を処方されている患者集団」

B「単剤で治療されている患者集団」

AとBの治療効果と副作用を比較したら、治療効果はBの方が高く副作用はAの方が大きかったというエビデンスが出て、そこから「単剤化治療」が錦の御旗のように掲げられるようになったわけです。

似たようなタイプの薬を大量に重ねる多剤併用大量療法が抑制されたという意味でこのネガキャンは意義があったと思うのですが、これであおりをくったのが「この患者さんは不安焦燥が強いようだから、この薬を加剤」というように丁寧に診察して投薬をしていた医師です。

近年になって(特に)うつ病患者さんを対象に

C「SSRI or SNRI + 別のタイプの抗うつ薬で治療されている患者集団」・・・(※1)

を対象に設定し、BとCを比較するスタディがおこなわれるようになりましたが、結果は驚くべきものでした。(少なくとも)治療効果はCの方が高かったのです。(副作用に関しては今まさに調べられている最中)

私が「均質性の仮定」とか「隠れたパラメータ」うんぬんといったのはこれを踏まえてのことです。
初期のスタディでは、(包含関係でいえばC⊂Aですから)私の言い方では「均質性の仮定」が崩れている( or 過剰な一般化のバイアスがかかっている)ので信用ならないともいえるし、薬の種類と数という「隠れたパラメータ」を無視している点で臨床的なエビデンスとしては不十分なデザインであったといえるでしょう。

これで丁寧な投薬をしていた医師は救われたわけですが、逆に困った立場に立たされたのは製薬会社です。今までは「うちの**は単剤で十分に効果があるんです」でよかったのが、今度は「で、**とどの薬剤の組み合わせが一番効果があるの?」と突っ込まれる立場になってしまったわけです。

もちろん「単剤化」自体がビッグファーマの影響だったんじゃないの?という批判もなされています。
どうです。そんなに「単純」ではないでしょう?

(※1) SNRI + NaSSA (サインバルタ+リフレックス)は「カリフォルニアロケット」としてそれなりに普及してきたが、これ以外の組み合わせでもほとんどの場合、併用療法は単剤治療を上回るという報告が多い。』

なんで、いちいちこんなことを書いたかというと、ここらへんの状況がマスコミに変な伝わってしまい、いまだに「単剤化」神話を「単純」に信じているような記事が目につくからだ。
例えば、某新聞の『精神医療ルネッサンス』。

> 統合失調症の誤診やうつ病の過剰診断、尋常ではない多剤大量投薬、
>セカンドオピニオンを求めると怒り出す医師、患者の突然死や自殺の
>多発……。様々な問題が噴出する精神医療に、社会の厳しい目が向け
>られている。このコラムでは、紙面で取り上げ切れなかった話題により
>深く切り込み、精神医療の改善の道を探る。

担当の佐藤記者には何の恨みもないのだが(一回、取材を受けたが、実に熱心で人あたりの良いベテラン記者さんです。ただ、精神科医療に関する知識は???)、中途半端な勉強ぶりがかえってロジックの弱点になっちゃているような感じがする。この考え方だと「古典的なタイプの抗うつ薬単剤(トリプタノール、アナフラニール)」はよくて「睡眠剤+カリフォルニアロケット+抗不安薬」が多剤併用療法で批判の対象になってしまいますね。

 

猪股弘明(精神科医)

 

studygift 問題

パブーでマニュアル類を何冊か公開していることもあって(あれは本当にいいサービスだと思う)、創業者の家入氏の活動はそれとなく注目していた。ただ、ネット上で波紋を広げている studygift の件はかなり黒でしょう。

ネット上で見かけた意見の中では↓が私のような世代にはわかりやすかった。

 

つか、これ「赤い羽共同募金」類似の募金詐欺といっしょなんだよ。
昔はけっこうあったんだけど、今の若い人は知らないのかな?

主催者は退学になっていたことを知らないって言い張ってるけど、かなり
無理があるw
「○×牧場共同経営」とかとも似てるかな。たいてい事業なんてしないで
ドロンで、集団訴訟とかに発展するとがよくある。

まあ、今回の場合は、さっさっと返金したってことでサポーターからの
集団訴訟には発展しないだろうけどさ。そういう組織防衛はうまいな。

 

なるほど。

 

今でも、たまに再入学・再受験関係で相談メールがぽつりぽつりときたりするので、この場で書いておくと、私自身も2回目の大学(医学部)入学のときには、金策に苦労した。でも国公立なら、「学生支援機構のきぼう21」(以前の2種奨学金)+「学生寮」+「長期休暇の集中的アルバイト」でなんとかなる。

 

 

猪股弘明(精神科医)