医療系まとめサイトは成立しないと思う

現在(2018/07/28)、「モジュレーター」でぐぐると、私の記事が4位にくる。最近までトップ記事だったので少し残念。

 

2, 3 位の weblio は仕方ないとして、問題はトップの「沖縄バイオポータルプラス」の記事内容

こんな感じ。

 

ふむふむ…

代謝活動に関する酵素には、本来の基質と全く異なった化合物が酵素の活性部位以外に結合することにより、酵素活性が変化するものがある。このような酵素をアロステリック酵素といい、これに結合してその酵素活性を調節する化合物をモジュレーターという。

これ、最後、モジュレーターじゃなくて「エフェクター」じゃない?

なんかすごい基本的なところで間違ってるような気がするんですけど。

元記事となった AMBiS 社の記事は単なる勘違いですまされるけど、アクセス数欲しさにそれをノーチェックで掲載したまとめサイトは、色んな意味であとあとまで責められると思う。

公益財団法人がこれやっちゃいかんでしょう。

沖縄の人に悪い人はいないと信じている。

 

 

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東京医大の例のアレなど

東京医大の件

東京医大の裏口入学の一件が世間を騒がせているようだが、関係者の間ではこの事態はある程度は予想されていたように思う。

というのは、東京医大はどういうわけかその経営基盤が弱いようで、講師あたりをしている知り合いなども「お金なくて研究ができないんです」とよくこぼしていた。そこからくる拝金主義はどこかで破綻するだろうという予感を抱いていた人は多かったと思う。

私学医学部の経営事情一般に関してコメントするほど私はこの分野に詳しくはないが、こと東京医大で関係者の不信をかっていたと思うのは、臨床教授や臨床准教授という存在。

世間一般では「教授」や「大学の先生」というと研究業績もあってその分野の権威である偉い人とみなされていると思うが、医療関係者の間では「臨床教授」はそこまで評価は高くない。研究志向が強く、長くその教室で頑張っているが、教授になるほどの業績は上げられず、かといって単なる医員扱いするには忍びない…といった先生に与えられる通りのいい肩書きといった位置付けだろう。

もちろん、この特徴、つまり研究もある程度できて、臨床もできる、という特徴を活かして臨床教育などに立派に貢献されている尊敬すべき先生も数多くいることを私は知っている。

なのだが、こと東京医大となると…

なんで業績もほとんどないあんたが臨床准教授とかやってんねん

とツッコミ入れたくなるような人を教員にしていた。具体的には、それまで研究のケの字もしたこともないような私立病院の院長だとか理事長とかですね。その私立病院が教育的な病院ならわからなくもないのだが、ガチ経営重視のところだったりする。病院経営者のご子息の多い私立だからそれでもいいと言われれば元も子もないのだが、それであれば非常勤講師あたりの肩書きで留めておくのが良識というものだろう。

ここらへん、事情通からみたら「あ、あの院長、金で肩書きを手に入れたね」とわかると思うのだが、世間一般の人はなかなかそうもいかないだろう。

この騒動がどこまで広がるか私は予想もできないが、願わくば騒動後のこの大学(とその関連病院)の体制が健全化してくれるといいと思う。

→ 大学病院自体のその後は、まあまあといったところなんだろうが、当時ここに群がった人々がいまだにおかしなことをしているようだ。

ここで言及された病院の理事長は、その当時、外来教授かなにかやってたな、確か。どうしようもなくダメだと思ったのは、ほとんど関係ない斉藤環先生に訴訟を起こしたこと。

 

ブログ記事とマネタイズ

ところで話はガラッと変わるが、私はこれまで各種メディアに記事一本いくらみたいな感じで雑文を提供していたが(これは私に限ったことではなく多くの医師がアルバイト感覚でやっていると思う)、こちらでブログを持たせてもらうにあたって執筆料の代わりにアドセンスによる広告料収入を選んだ。

連載当初などは1日0円なんて日が多く、正直、選択をあやまったかなと思わないでもなかったが、関係者が SEO (Search Engine Optimization 検索エンジン最適化。この言葉もこちらに来て初めて知った。現在勉強中)などを頑張ってくれたおかげか最近はアクセス数も増加し、それなりに収益が上がってきた。

まだまだ最終的な判断を下すには時期尚早だと思うが、「コンテンツを権利ごと売って一時的にまとまった収入を得るのと自前で発信して長期的にマネタイズしていくのはどっちが得か?」という問題は、似たような立場にいる方なら興味あるところだと思うので、もうちょっと観察を続けてはっきりとしたことが言えるようになったら、どこかで発表したいと思う。

 

モジュレーター

以前に某医療機関のブログに寄稿したモジュレーター関係の記事がおかげさまで好評で、あちこちで引用された結果、現在(2018/07/25)グーグルで「モジュレーター 」で検索するとトップにくる。

 

この医療機関にはこれまでの記事の働きでその知名度向上に十分寄与したと思うし、今後、もうちょっとモジュレーター 関係に関して書きたいことがあるので、関係者にお願いしてモジュレーター 関係のコンテンツを引き上げさせてもらった。

記事では、パルモディアという具体的な薬剤からモジュレーター を説明していたのだが、一般的に言えば、モジュレーターの一種としてパルモディアがあるという関係だと思うので、時間をみつけて 一般的な性質に関して書きたいと思う。

特定教員

臨床教授などが大学内において、どういう位置づけなのか書いたが、最近、増えてきているのは「特任講師」やら「特定准教授」といった肩書。
これも「准教授」やら「教授」やらという呼称が使われているため、かなり立派そうに見えるし、「特別」という文言はへたしたら一般の「教授」より上の階位なのかと思ってしまう一般の人もいるかもしれない。が、全然違う。真相はむしろ逆。

単なる任期制の教員です。

寄付講座だとか特定のプロジェクトで研究やそれに付随する教員が必要な場合、終身で雇うよりは、それらの資金提供期間やプロジェクトの設定期間に合わせて専従者を雇った方が自然だ。

医学部以外だとポスドクとよく比較される。ポスドクは「研究に従事する」のが仕事で、特定教員の場合は研究はもちろん「教育」にも従事できる。

上手くやれている人もいるし、上手くやれていない人もいるが、設立由来がそういったことなので、過剰に評価する必要はないし、どちらかといえば、その間で成果を出せるかどうか試されている期間とみる方が妥当だろう。

 

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【Webで】薬剤師現場に出る -アルコール依存症と歩行困難-【添削】

今回は、けっこう新しめの投稿のリライトをします。

私の生徒さん(のようなもの)が書いたブログ記事を私が修正するとこんな感じになります。


70代男性、独居。以前アルコール依存症で入院されたことがある。その際、足が悪くなり当薬局に在宅の依頼をされた(なお、患者様の特定を避けるため、個人情報は適宜変更しています)。

訪問を何回か重ね打ち解けてきた頃、こういう質問があった。

患者
実は、私は若い頃、アルコール依存症だった。

そのせいで脳が萎縮している。

足が悪くなったのはその脳の萎縮のせいだと思うが、本当かどうか教えて欲しい

(あれ、脳の萎縮で機能障害でたっけ?)

(歩行障害だけ出るものなんだろうか?)

(あれ? あれ?)

………

……

 

即答できなかったので、勉強したことを書きます。

(訪問は本当に勉強になります。「患者様から学ばせてもらう」とはこういうことだったのかと日々痛感しています)

 

TOKIO のナントカさんではないですが、アルコール依存症は、治療が難しい疾患で、その原因の一つに、患者さん本人の治療への意欲が維持しにくいという点があげられる。

患者さんのモチベーションを維持するために治療現場では、様々な工夫がなされている。例えば、医療関係者からのアドバイス。

よく、こんな図がひきあいに出される。


参照: A Spiritual Evolutuion

 

左が健常者の頭部 MRI 写真、右が同年代のアルコール患者さんの MRI 写真。一見してわかるように、アルコール患者さんでは、脳室が拡大しており、それは、脳が委縮したことを意味している。

要するに「お酒ばっかり飲んでいると、脳がこんな風になっちゃうよ」と患者さんの不安を煽って治療につなげようという考え方だ。このとき

  • ここまで萎縮が進むのはかなり長期にわたる飲酒歴が必要
  • 萎縮があっても必ずしも機能が損なわれるということはない

ということは(あえて)あまり強調しない。イメージによるインパクトを期待しているわけだ。これはそれなりに効果があり、たとえ治療から脱落しても、「飲酒→脳の萎縮」は患者さんの記憶にかなり強く刷り込まれる。

冒頭の質問に戻ると、この患者さんは、過去にこのような治療歴があり、この手のイメージが強く残っていたがゆえこの質問に至ったと思われる。

こういった治療手法(=患者さんの不安を煽るような手法)が現在ではもはや時代遅れになりつつあるという事情と患者さんが既に依存症を脱しているという状況を鑑み、私はなるべく正確な情報をお伝えした方がよいのではないかと思った。

主治医に患者様の質問を聞いたところ、歩行困難は、ウェルニッケによる疑いが強いという。

ウェルニッケ(この場合は、ウェルニッケ-コルサコフ症候群)とは、大量飲酒によるチアミン、ビタミンB1の吸収阻害により脳がダメージを受けることによって引き起こされる症候群で、急性期のウェルニッケ脳症と慢性期の(ウェルニッケ)コルサコフ症候群からなる。

①ウェルニッケ脳症:精神錯乱、筋肉の動きの調和が乱れる、眼を動かす神経が麻痺する、などの症状が出現。

②コルサコフ症候群:ウェルニッケ脳症が慢性化すると起こる。記憶喪失を含む記憶や学習障害、歩行困難などの症状が出現。作話が特徴的。

なお、ウェルニッケ(コルサコフ)と略称されるのは、ウェルニッケ脳症を経由しないコルサコフ症候群もあるからだ。

確かに、処方薬にはビタミン剤が含まれていた。だが、ウェルニッケの可能性があることには気がつかなかった。私も、どこかで「脳の萎縮→機能障害」という単純な発想にひきづられていたのだ。ウェルニッケにしても大学の薬学教育では習わないし、習ったとしても現場に出る頃には忘れている。歩行障害の遠因は、アルコール依存症にあることは間違いないが、その直接の原因は、脳の萎縮によるものではなく、ウェルニッケ-コルサコフ症候群によるものである可能性が高かったのだ。

さて、次回、訪問時、これをどう説明しよう?


ちなみに、元記事はこんな感じでした。


70代男性、独居。以前アルコール依存症で入院されたことがある。その際、足が悪くなり当薬局に在宅の依頼をされた(なお、患者様の特定を避けるため、個人情報は適宜変更しております。)。

(質問)アルコール依存症で脳が萎縮して足が悪くなったのではないかと思う。足が悪くなったのは脳の萎縮が原因か調べてほしい。

(私)アルツハイマー型認知症(以後、認知症という。)も脳が萎縮するが、それが原因で足が悪くなった例は聞いたことがない。認知症で徘徊が問題になるくらいだから、脳の委縮だけで足が悪くなるとは考えにくい。

認知症は、神経繊維変化の出現により、物忘れをひきおこす。アルコール依存症も神経の変性によって不随意運動等が引き起こされる。

アルコール依存症の末梢神経障害は、アルコールの過剰な摂取で食事のバランスが崩れたことによる栄養素の欠乏が主な原因と思われる。今回の患者様の歩行困難は、大脳の萎縮によるものか、栄養から来るものかわからなかったが、主治医が、ビタミン剤を処方していることからビタミン欠乏による神経障害と考えられる。

と、ここまで予習をして主治医に患者様の質問を聞いたところ、歩行困難は、ウェルニッケの疑いという回答が返ってきた。

ウェルニッケ(=ウェルニッケーコルサコフ症候群)とは、チアミン、ビタミンB1の欠如による脳のダメージによって引き起こされる病態で、急性期のウェルニッケ脳症と慢性期のコルサコフ症候群からなる。

①ウェルニッケ脳症:精神錯乱、筋肉の動きの調和が乱れる、眼を動かす神経の麻痺

②コルサコフ症候群:ウェルニッケ脳症が慢性化すると起こる。記憶喪失を含む記憶や学習障害、歩行困難など。

詳しくはこちら(↓)のHP参照。

久里浜医療センター

参考までに小脳が萎縮するアルコール性小脳失調症もある。小脳は、バランスをコントロールする部位である。歩行困難、身体の胴の震え、腕や足のぎくしゃくした動き、ろれつが回らない、眼振(眼球が無意識に動くこと)を含む症状が出る。

次回訪問時、主治医の診断を踏まえ、栄養素の欠乏による疾患であることを説明したいと思う。

引用:こちらからの翻訳


これでも、そんなに悪くないと思います。ただ、以下の観点から修正しました。

・時事ネタと絡める

・「脳の萎縮」=「歩行障害」ではない例として、認知症を挙げているが、本筋からはそれるので削除。

・患者さんが質問したとき患者さんが頭に浮かんでいたことを推測し、適切な図を引用する

・アルコール依存症の治療法の歴史を軽めに触れ、自分なりの評価を盛り込む

・久里浜の引用もちょっとおかしなところがあるので、ウェルニッケを経由しないコルサコフについて言及

・現状の薬剤師卒前教育に関する問題点を軽く触れる

・次回に期待を持たせる

・アイコン、アイキャッチなどを追加

でしょうか。