間質、の対になる言葉は?

薬子

むくみ」が好評だったようなので、付け足します。

そこで出てきた「間質」という言葉の連想からだと思いますが、「間質性肺炎って何ですか?」という質問をいただきました。

nomad
んー 、そういうのは質問というのか??? (´Д`)

じゃ、今日は私が説明。

 

 

ゲフィニチブ(イレッサ)の副作用ー間質性肺炎ー空咳

という試験対策用のキーワードの羅列丸暗記で「間質」を理解しているとそういうことになる。ちなみに「間質の対になる言葉は?」と訊くと、やはりというべきかほとんどの人がわかっていないので、たぶんそういうことなのだろう。

間質の対になる言葉は「実質」だ。臓器・組織においてその機能の中心となっている部分が「実質」であり、それ以外の部分はすべて「間質」である。

例えば、肝臓であればその機能の中心は「代謝・解毒」なので、実質は肝細胞そのもの、それ以外の血管内皮細胞・結合組織などはすべて間質である。肺の場合は、その機能の中心は「ガス交換」なので、実質は肺胞腔(肺胞+肺上皮細胞)、間質はそれ以外の肺胞壁モロモロということになる。

ここまでくれば、「間質性肺炎」という言葉の理解はできる。肺炎のうち炎症が生じる場所が主に肺間質であるものを「間質性肺炎」と呼んでいる。実質性肺炎という言い方は聞かないが、これは、実質に炎症がある場合は原因がほぼ細菌性・ウイルス性に限られるので、それぞれ「細菌性肺炎」・「ウイルス性肺炎」と呼んでいる、という事情による。

また、間質性肺炎は、炎症の首座が、(人体「外」環境に直接暴露されているといっていい)肺実質ではなく、間質という人体「内」であることから容易に想像がつくように免疫が関与している場合が多い。(先ほどチェックしたが、ゲフィニチブの副作用による間質性肺炎の機序はいまだに不明なようだ)

なお、間質性肺炎の症状は、息切れ・発熱・咳などであるが、炎症は気管支などには及んでいないため痰などはさほど分泌されず、咳は乾性の空咳になる。

これでキーワードはつながったかな?

 

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中学理科で学ぶ肝臓の構造と機能 ~国試をこすります~

前の記事でこんな図を載せました。

血液の流れは腸管→門脈→肝臓、胆汁の流れは肝臓→胆管→腸管なので、腸管で吸収される物質はものによっては腸管→門脈→肝臓→胆管→腸管とくるくるループすることがありうるわけです。いわゆる腸肝循環というやつですね。

薬剤師の国試でも出題される。

答えは 4 。必修なので教育的な問題ですね。ある意味、中学校の知識+αで解ける

ついでに…。

赤血球の成れの果てであるビリルビンもこの経路にのっているので、胆管が閉塞してしまうと胆汁(含ビリルビン)がうっ滞して血液中に漏れ出し高ビリルビン血症(いわゆる黄疸)になります。なお、この経路外で赤血球が溶血しても黄疸になりますが、肝臓でグルクロン酸抱合を受けていないのでこの場合の血中ビリルビンは間接ビリルビン(非抱合型ビリルビン)が優位になります(胆管が閉塞する場合は、抱合後なので直接ビリルビン優位)。両者は区別できるわけです。

ついでについでに…。

肝硬変になると肝小葉の微細な構造も破壊されるので、胆汁排泄がうまくいかずやはり高ビリルビン血症になります。肝の予備能の指標である Child-Pugh 分類ではビリルビン値が項目の一つになっています。

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むくみ

大海薬子
今日は、病態生理のお話をします。

この分野を苦手にしている薬剤師さんは多いのではないでしょうか?

でも、これを克服しないと患者さんが納得するような説明をその場でできないのではないかと思います。

ちょっとややこしいですが、いっしょに勉強していきましょう!

 

在宅など患者さんに近い位置で仕事をしていると患者さんやその家族が疑問に思っていることを訊ねられることが多い。
高血圧だとか糖尿病などは、患者さん自体が外来の主治医の先生からレクチャーを受けている場合が多いので、質問を受ける頻度は意外に多くない。
多いのは、疾患と目に見える症状との関連性がぱっと見わかりにくい病態に関するものだ。その一つに「むくみ」というものがある。

そこで、今回は「むくみ」に関して取り上げたい。なので、ちょっと専門家向けでしょうか。

「むくみ」は、医学用語では「浮腫」という。wiki では
「細胞組織の液体(細胞質間液)と血液の浸透圧バランスが崩れ、細胞組織に水分が溜まって腫れる」状態
と定義されているが、これで具体的なイメージが湧けばいいのだが、なかなかそうもいかないでしょう。ちょっとイメージを図にしてみました。

血液の液体成分(血しょう)は、心臓から送り出された後、
①動脈→②組織(間質)→③静脈・リンパ管
の順に灌流し、再び心臓に戻ってくる。この流れが何らかの事情で阻害され、液体成分が②に留まっていると、組織はぱんぱんに膨れる、つまり「浮腫」の状態になる、という理屈です。

次に、どういう場合にこの流れが阻害されるか?考えてみましょう。

一番、わかりやすいのは、①→②の流量が増大する場合でしょうか。
具体的には、炎症がおこって①動脈の血管透過性が亢進している状態や低栄養状態で血管内の浸透圧が低下し水分が過剰に組織に移行する状態がこれにあたります。

また、深部静脈血栓症などで③静脈・リンパ管が物理的・機械的に閉塞した状態も灌流がうまくいかず浮腫をひきおこします。

わかりにくいのは、心不全で足がむくむ場合(下腿浮腫)でしょうか。これは右心不全では、静脈がうっ滞し静脈血圧が上昇し、結果として②→③の流れが阻害されるためです。

以上、かなり図式的に浮腫に関して軽くまとめてみました。

ところで、「浮腫」からこのような病態をぱっとイメージできる医療関係者は医師や看護師をのぞいて、そう多くない、というのが私の印象です。
あくまで経験的な推測ですが。
理由はいろいろあると思うのですが、

・臨床的な訓練が不十分
・臨床生理に慣れていない(解剖用語や浸透圧だとかの物理化学的な概念が乱れ飛ぶので統合して理解することが難しい)

というのが背景にあるのかなと思います。

まずは、臨床で必要とされる概念を使える形で理解し、患者さんの症状と結び付けて考えられるようにする、というところから始めるのがよいのではないかと私は思います。

 

大海薬子

 

* * * * * *

ところで、某所で話題になったのはこの動画。

浮腫で困っているおばあちゃん宅を薬剤師さんが訪問し、その評価を行なっているところを切り取った動画のようです。
一見すると、それっぽい雰囲気でサービスしているように見えます。
なのですが、これを視聴した多くの医師は「これは診察になっていない」とあまり評価していませんでした。
どこかわかりますか?

薬剤師に必要な基本的臨床医学を研究・実行する会』(facebook内グループ)では、こういった質疑応答がほどほどに(笑)活発に議論されています。
ご興味のある方はどうぞ、ご参加を。
元は薬剤師・医師限定だったのですが、現在は看護師さんなどの医療関係者もOKにしています。
ただし、人数が増えすぎてきたため、現在(2021/8 〜)は、入会時にある程度のチェックはしています。それほど厳しいものではないですが、本当に医療関係者なのかネット上で資格・経歴が確認できる程度の準備はしておいてください。
そこまでではない人(医療系の資格は持っているが、家族介護などで一時的に現場から離れていた人など)や医療に興味のある一般の方は『医療を考える(仮)』(同じくfacebook内宮ループ)の方が適しているでしょうか。
こちらは軽めの時事ネタなどを取り上げていく予定です。

ちなみに私がこれに関して述べたコメントは以下の通りです。

じゃあ、訪問薬剤師さんが現場で何を優先して見なきゃいけないかって話なんだけど、ちょっと考えてました。
聞くところによると、現場では訪問薬剤と訪問看護とで患者の取り合いになっていると聞いてます。だから、訪問看護と同じようなことをするのは得策ではなさそう。
やはり、差別化を図る上では、薬剤師のストレングスポイントである「薬」にフォーカスするのが有効ではないでしょうか。
このケースは「20年前の子宮癌のオペでリンパ郭清して、それ以来、浮腫が出現。(おそらく心不全が進行して)増悪傾向にあった。そこで2週間前より主治医が(たぶんお試し的に)ルプラックを開始した」って状況だと思います。
だから、これ主治医の側からすると「ルプラックの効果はどの程度で、それが適当なチョイスなのか?」ってのが気になるところなんですよ、たぶん。
その点を重視するなら、患部はもちろん水分の in-out (厳密なものは無理なので水分の摂取状況をさりげなく聞いておくとか)や腹水の貯留(お腹チラ見する程度でもいいんです)をチェックする・・なんかが優先して観察すべき項目になるでしょうか。
そこまで意図が明確なら、事前に医師とそこらへんをすり合わせてもいいですよね。
なんかしら改善点がありそうなんですよ、この動画。

 

猪股弘明(医師)