なぜ、西浦の予測は外れるのか?

8割おじさんこと西浦氏の評判は、周囲では最悪に近いのだが、その理由など。

感染症数理モデルの SEIR モデルは以下の通り。


すぐに気がつくのは再生産数 R は、このモデルには直接には入っていないことです。

細かい誘導は省略するが、R = β/γ (1/γ が平均感染期間、β は感染率)です。
βの方が基本的な指標なのは明らかでしょう。デルタ株では β が大きくなっているから、「結果」として R が増大しているんだ、と考えるのが自然です。

注目すべきなのは第二式で、その第二項を無視すれば

dE/dt = βSI

という高校生でもわかるような1階の常微分方程式になります。

これの意味するところは
「時間当たりのE(暴露者)の増分は、既に感染が成立している人数(I)とまだ感染していない人数(S)とβ(感染率)の積に比例する」
です。(だから、感染初期では指数関数的に陽性者が増えていくわけですね)
この時点でも確率的に考えているわけですから、E を増やしたくなければ β をコントロールして感染対策を考える、と思考を進めていかなくてはいけないはずです。

実際には β は、株の種類やワクチン接種率の関数になっていると思われますから、その関数型を仮定してモデルから予測→現実の数値と突き合わせる、というプロセスを踏まないと「科学」にはなりません。
反証可能性というのは、科学の基本だと思いますが、西浦の言い分は(モデルに基づいていないため)反証可能性が不十分です。

筋のいい人なら気がつくと思いますが、ある時点での結果として出てきた R をいじっても数理モデルとしては何の根拠もありません。
微分方程式の系は、それとは無関係に時間発展していくからです。

西浦の予測が外れる主な理由はこれでしょう。

 

猪股弘明
精神科医(精神保健指定医)
理学士(物理)

 

コロナ後遺症の精神症状について

新型コロナ感染症については、現在(2021年2月)、ワクチンや後遺障害がトピックといったところだろうか。

今回は、コロナ後遺症に関して気になったことがあったので、ちょっと述べさせてもらう。

新型コロナの病態で厄介なのは、炎症反応が活発化し時に宿主自体の組織を不可逆的に損傷してしまうことだ。
だから、肺炎自体は軽快しても、呼吸困難感などの後遺障害が残ることが知られている。他の症状としては、倦怠感や脱毛などがよく挙げられる。

図は https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210131-00220218/ より。クリックで元記事に飛べます。

倦怠感や集中力の低下と言ったら、うつ病などでもよくみられる症状だ。慣例的な身体症状 or 精神症状という二分法に従うならば、精神症状に分類される。

では、精神症状があった場合、その治療は典型的な精神科的な治療(安定剤や抗うつ薬などの投与、精神療法、電気けいれん療法…etc)だけですむかいえば、そうはならない。
精神症状の中には身体的な疾患に伴って現れる精神症状というものがあり、この場合、対症療法的な精神科的治療はあってもいいが、より重視すべきはやはり元となった身体疾患の治療だ。
例えば、甲状腺ホルモンの分泌が低下した場合、なんとなく元気がない(≒意欲の低下)といった症状が出るが、抗うつ薬の投与が本質的な治療に繋がるものではないというのは言うまでもないでしょう。優先して考慮すべきは原疾患の治療なのだ。
他には、更年期障害に伴う抑うつ症状も有名だが、尊重すべきは婦人科的治療(ホルモン補充療法など)だ。マニアックな例としては、CNS ループスの精神症状がある。この場合、問診などでは統合失調症急性期とほとんど区別がつかない。幸いなことに両者は画像診断などで鑑別可能だが、神経内科的な治療が遅れると生死に関わる。

で、コロナ後遺症に話を戻すが、この場合も
・コロナ後遺症に伴う精神症状
・コロナ発症をきっかけとした心因反応
の区別は重要ではないかと考えている。
前者が本当に実在するならば、根本的な治療のためにはその病態の解明を急ぐ必要があるし、後者であれば、通常の精神科治療で事が足りてしまうからだ。

そして、私が気になっている点は、この区分が曖昧なまま実臨床の場で安直に「コロナ後遺症」という診断名が使われている節があるからだ。

例えば、こんな tweet を先日みかけた。

軽快してしまった新型コロナ感染症を直接的な原因とする過呼吸というのは考えにくく、おそらくは、もともとパニック障害などを持っていたか、環境変化などに起因する不安が高じての過呼吸発作かと思われる。
これを「新型コロナ後遺症」の範疇に含めるのは、ちょっとどうなんだろうと私は思う。

 

猪股弘明
医師:精神科(精神保健指定医)

お知らせです 2021/01/27

まったく予定していなかったのだが、新年そうそう書き物することが多かったので軽くまとめ。

感染症 SEIR モデル関係

感染症数理モデルの基本 SEIR をなるべく数式に頼らずに直感的に理解する
とにかくわかりやすく書いた。

無症候性感染者が増えると感染爆発がおこるリスクが増大する
現在(2021年1月)は、昨年春先と感染状況が違うと思うが、何が違うか?何に注目しなければいけないか?をちょっと踏み込んで書いてみた。

きっかけはこれ

Metal 関係

Metal 入門 -初めの一歩-
MacOS/iOS のグラフィック API Metal に関する初歩的内容。
勉強がてら物色していると海外サイトでは Swift の PlayGround で metal のシェーダーをベタ書きする手法がよくみられていたのだが、日本ではあまり見かけない。Metal の基本を学ぶにはこちらの方が理解しやすいと思い、この手法を採用。
サンプルコードもそれに沿って書きおこした。
ついででその解説動画も撮った。日本語で書かれた Metal 関係の記事としてはかなりわかりやすいと思う。

Apple 製品との付き合い方

iPad アプリが落ちる場合、あれこれ試行錯誤するより返品できるなら返品した方が吉
当初は、タイトル通り iPad でアプリで落ちる場合の対処方法を意図していたのだが、ネット上で「交換」や「返品」に言及している記事が少なく(というかまったく見かけなかった)そこらへん厚めの記載になりました。
アップルは勝負所で「攻めた」製品を市場に投入してくるので、不良品も多いはずなんだが、マカーはあまりそういうこと言いませんね。
ちなみに私は Mac は「アップルがつくった Unix マシン」と思っているタイプの人間でマカーでもなんでもないです。ダメな時はダメと言います。
サポートの第一段階のよくわからないフリへの対処方法やラスボスに至るまでなどの話は機会があったら。

OpenDolphin 関係

OpenDolphin コード解説 -FileBackUpSystem と電子カルテのデータ構造-
そこでも書いてますが、これまでの問い合わせを考慮して実際のソースコードを参照しながら、より具体的により体系的にわかりやすく解説してみました。

OpenDolphin-2.7m を M1 Mac にインストールする
タイトル通り。M1(Arm) Mac が評判いいので、M1 Mac への OpenDolphin のインストール&デプロイを試みた。

OpenDolphin-wiki 風解説-
本家(いわゆる dolphin-dev)の著作権表記や運営形態におかしな点があるのではないかと以前から言われていたのだが、とりあえず github リポジトリ上で目についた点を調べ始めた。予想より多かったというのが率直な印象。

OpenDolphin と GitHub
着手。あれこれ言う人もいるかと思いますが、商標権諸々を持っているメドレー自体が「ソースコードは公開も開示もしなくていい。名称も使っていい」とほぼほぼ言っているから。

 

今後は、noteYouTube も活用していきたい。

 

猪股弘明
医師:精神科(精神保健指定医)

COVID-19 東京都・新潟県 PCR検査陽性率

これも、ほぼ自分用。

東京都

 

都公式の(PCR検査)陽性率が福祉保健局から発表されました。

陽性者数>検査件数 となる日があって、おかしいな?とは思ってたんですが、

・保険で行われた PCR 検査数は金曜日にまとめて計上

していたため、こういう事態になったようです(木曜日までは検査数=分母が小さくなる)。陽性者数だけ先行して発表していたわけですね。

グラフを見る限り、第一波のピークは過ぎ去ったように思えます。

 

新潟県

新潟県新型コロナ感染症対策サイト』より

 

 

猪股弘明(医師)

COVID-19 地域陽性者発生状況(ほぼ自分用)

いちいち各サイト周るのが面倒になってきたので PCR検査陽性者数だけ、持ってきて表示(都市部ではこの指標自体あまり意味ない感じにはなってきてますが・・・)。


東京都


神奈川県

はうまく取ってこれなかったので、こっちで。


新潟県

新潟県非公式新型コロナ感染症対策サイト』より

 

猪股弘明(医師)