一例モノ

ECTに関する超絶マニアックな症例報告を某国研究者向けSNSに置いておいたら、100 回読まれたとか。
いわゆる一例モノなのだが、ガイドライン的な治療戦略がうまくいかなかった時、後ろ向き研究の類より一例モノの方が役に立ったりする。
個々の症例から出発して、一般的なところに抜けていく、というのが臨床の面白みの一つではないかと私なんかは思うのだが、世界に 100人くらいは同様の考え方をしてくれている人がいたようで嬉しい限り。

猪股弘明 精神科医

東京都医学総合研究所客員研究員

お知らせです。 2019/8

ECT

『advanced ECT techniques』をダウンロードできるようにしておきましたので、ご興味ある方はこちらからどうぞ。

で、青字部分をクリックするとダウンロード開始となります。

 

ロナセンテープ(ブロナンセリン)

医科向け医薬品ですが、貼付剤が一つのトレンドになっているようです。

向精神薬だと、ロナセンの貼付剤が 9 月頃から使えるようになるようです。他サイトですが

ロナセンの貼り薬が出ました。

という記事にあれこれ書いてますんで、よかったらご一読のほどを。

 

発作全般化仮説

では、臨床的には頻用されているECTではあるが、なぜ効くのか?となると突然話がおかしくなってくる。
今のところ、なぜ効くのか明確な理由はわかっていないからだ。
ただ、ある程度の作用メカニズムは提案されていて、その最有力候補は発作全般化仮説という。

 

電気的ショック
→発作焦点の生成
→発作波の成長
→発作波の伝播
→発作波収束
→生物学的プロセス(BDNFやセロトニンの分泌↑)?
→鎮静・抗うつ作用の発現

 

特に、発作波が脳全体に伝播することが効果発現に必須と考えられている。これはよくわかる考え方で、臨床的にもけいれんがしっかり30から60秒ほどかかるとその後の経過も良い場合が多い。
少なくとも単なる電気刺激とは違うメカニズムが働いていることは確かそうだ。

(追記)最近は「生物学的プロセス」が重要だと考えられるようになってきた。というのは電気ショック後より効果が出始めるまで一週間程度かかるから。電気的刺激だけでよくなるなら、けいれん直後より回復するはずだがそうはならない。

ECT とは?

現在のところ精神科医としてはECTが研究テーマなのでこのお話をします。

ECTとは ElectroConvulsive Therapy の略で、日本語では電気けいれん療法と呼ばれている。

もともとは、「てんかん患者は統合失調症になりにくい」という経験論に基づいて(が、その後、この考え方は否定されている)発想された治療法。人間の頭部に電気を通電するとけいれんが誘発されるが、けいれん誘発後しばらくするとうつがよくなったり、精神運動興奮がおさまったりする。治療目的のみで使われているなら問題はなかったのだが、米国でも日本でも精神障害者の懲罰目的で使われていた時代が一時期あり、その反省から長らくその使用がタブー視されていた。『カッコーの巣の上で』でジャックニコルソンがかけられたいたので、それを通じてここら辺の経緯をご存知の方もいるかもしれません。

 

ところが適正に使用されれば、抗うつ薬や抗精神病薬より効果があることがわかりはじめ、近年は再評価され標準的な治療法に組み込まれている。

 

猪股弘明(精神科医)