今月号の精神神経学雑誌に『電気けいれん療法(ECT)推奨事項 改訂版』が載っていたので、目を通してみた。
・パルス波とサイン波装置に関して
「サイン波刺激よりもパルス波刺激が、定電圧治療器より定電流刺激治療器が推奨される」
とあるが、メーカーのサポート切れ云々に関しては触れられず。
また、パルス波で不発に終わったときの取り扱いもまったく言及なし。
・パルス幅に関して
まったく触れられず。
全体としては出来はいいが、私なんかからすると物足りない。

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今月号の精神神経学雑誌に『電気けいれん療法(ECT)推奨事項 改訂版』が載っていたので、目を通してみた。
・パルス波とサイン波装置に関して
「サイン波刺激よりもパルス波刺激が、定電圧治療器より定電流刺激治療器が推奨される」
とあるが、メーカーのサポート切れ云々に関しては触れられず。
また、パルス波で不発に終わったときの取り扱いもまったく言及なし。
・パルス幅に関して
まったく触れられず。
全体としては出来はいいが、私なんかからすると物足りない。
最近、小耳にはさんだところによるとECT(電気けいれん療法)のサイン波装置(通称『木箱』)のサポート終了が決まったそうだ。
数年前から生産は中止されていたのだが、未だに使われている施設があるので細々とながらメーカーのサポートがおこなわれていたのだ。
副作用などの観点から、大学病院や基幹病院では既にパルス波装置が供用されているのだが、諸々の理由(パルス波装置が高額、麻酔科医が必要etc)で生産が中止されたにもかかわらず、今でも現役で使われているのだ。
法的な問題は詳しくないのではっきりとはいえないのだが、メーカーサポート切れの医療機器を使い続けるのはかなり問題あると思うので、今後は公的には使えなくなると思う。
私が非常勤で勤務している病院は、サイン波装置はあるものの実質的には使っていないので(非常に曖昧な形ですが、私のアルゴリズムに従ってもらってます)、大して影響を受けないはずですが、日本の公的なアルゴリズムでは『パルス波無効→サイン波に切り替え』と謳われているので、何らかの手当てが必要なはず・・・なんだけど、今のところ、動きがみられない。
精神科治療的には、けっこう重要な役どころを担っているだけに、そろそろここらへん詰めないといけないでしょうね。
医師時代に書いた論文(case report ですが、ECT に関してというか一般的な電気的刺激と神経細胞の応答に関してかなり原理的な内容も含んでいます)が、publish されました。
『A case of schizophrenia successfully treated by m-ECT using ‘long’ brief pulse』
よかったら御一読のほどを。
某所でm-ECT講習会が開催されたのでインストラクターとして参加してきた。
ECT自体一般の人からは色眼鏡でみられる治療法だけど、関与する人(麻酔科医、オペ室看護師、ECTを専門とする精神科医)からは(誤解をおそれずにいうと)「m-ECTの使い方が下手だから」批判されることが多い。
私自身、適当な代換治療法があればm-ECTは使わない方がいいと思っているが、使わざるを得ない以上は可能な限り安全な手法で施行すべきだと思っている。
こういう企画はどんどんやった方がいいと思う。
そろそろ ECT に関する Long Brief Pulse Method も普及してきたようで提案者とはなによりだ。
これは、その後、猪股(元物理屋)・針間(精神病理)・糸川(分子生物学)という関係者からは「ありえない」と言われる著者の組み合わせで査読付きの英文誌に発表された。
もともとは豊島病院で不完全なかたちでおこなわれていて、僕らがもう少し洗練させて提案。今では広島の竹林先生なんかもやっている(私が把握していない所でもおこなわれていると思う)。麻酔科の雑誌にも arXiv に書いたやつが引用されたりしてこれも嬉しい。
ところで臨床的にかなり有効と思われるこの方法であるが、これからすぐに広く普及するかといえばたぶんそうはならないと思う。ガイドラインの問題があるからだ。日本では国立武蔵病院のガイドラインが標準的でほとんどの施設がこれに右習いしている。そこでは
「サイマトロンで電気量 100% で不発時→サイン波の利用」
と明記されている。だから、たいていの精神科医は設定を変更することは発想として持っていないはずだ。
なら、あなたたちのやっているアルゴリズムは、標準アルゴリズムから逸脱しているのかといわれそうだが、これは半分あたっていて半分は間違っている。確かに日本の国立武蔵が(何の根拠もエビデンスも示さずに決めた)アルゴリズムからは逸脱しているが、その大元となった APA(米国精神医学会)のアルゴリズムには「パルス幅は 0.5msec 固定」などとは一言も書かれていないからだ。
短パルス刺激を用いるに際してまだ解決されていない問題は、適切なパルス幅に関することである。
(APAタスクフォースレポート:p91)
とこれがまだ未解決の問題であることをはっきりと言い切っている。そこでは超短パルス波の使用に関しての言及もある。基礎的な研究に目を転じると、軸索の変性、薬剤の暴露、刺激部位などなどによってニューロンの発火最適パルス幅が(主に長い側に)変化することがそれこそ山のように報告されている。
日本で「0.5ms固定」になってしまったのは、たぶん、本邦にサイマトロンを導入した世代が、普及することを優先して細かい技法上の選択肢を無視・単純化して伝えたせいであろう。
なお、われわれも長パルス波をのべつまくなしに使っているわけではなく、「通常の設定(0.5ms)でけいれん波が誘発されないとき」に限定して使っている。長いパルス幅を使うと高電圧に持続的に暴露される時間は増えるわけだから、副作用のリスクが増大する可能性がある。が、この副作用の評価はまだまだ不十分なので全例に使うわけにはいかないのだ。また、導入に際しては病院幹部の許可を取っているし、日本精神神経学会でも関係者でこの方法に関して検討をすませている。もちろん、単独で治療の責任の負えない初期研修医と後期研修医にはこの方法は教えていない。