東京都のサイトから派生した STOPCOVID19 各地域版で表示できるデータには限りがあります。
ここではデータの読み方や有用と思われる指標などを解説していきます(『新潟県新型コロナウイルス感染症対策サイト』を意識していますが、考え方はどのサイトのデータでも適用できると思います)。
日毎の陽性者数を追っていってもいいのですが、もう一歩踏み込んでみましょう。
陽性率
例えば、
検査陽性者数 / 検査人数 x 100 [%]
などという指標も興味深いですね。陽性率などと呼ばれています。
ほぼどの自治体も1日あたりの検査人数と陽性者数を発表してくれています(新潟県などは検査「件数」だけなのがちょっと残念なのですが、これでも「まあまあ」代用がききます)。
!ただし、地域によっては検査した日と結果が判明した日は違っていたりするので、実際計算する際は、数日間の平均を取るなどして工夫は必要です。
試しに新潟県と東京都の陽性率を算出しグラフ化してみました。
ただし、東京都では陽性者数>検査人数 となる日があるので、直近3日平均としました。
・東京都:陽性者数(直近3日の合計)/検査人数(直近3日の合計)
・新潟県:陽性者数(直近3日の合計)/検査件数(直近3日の合計)
です。新潟県では 4/17 に陽性者が 6 人に増え、驚かれた方も多いかもしれませんが、まだ 3 %台です。東京都では、50 %を上回る日も多く(検査した 2 人に 1 人は陽性)、状況は若干違うようです。
5/8 東京都福祉保健局から公式の陽性率が発表されました。
検査機関によっては、毎金曜日に(事後的に)集計が計上されるため、検査数(分母)が実際の数値より小さいため、ちょっとおかしな数値になっていたようです。それでも 10 %を超える日(かなり感染の勢いが強い)が続いていたことがわかります。また自粛のおかげでしょうか、(第一の)ピークは過ぎたように見えます。
検査は PCR という手法を用いますが、この検査方法は精度が 100 %ではありません。偽陽性や偽陰性といった問題があるのですが、ここではその説明はひとまず省いて、まずまず信用できるものとします。
1日に検査を100 件実施したとして、陽性者数がゼロならばまずは安心ですね。日本の検査方針は、新型コロナが疑われる人を優先にしておこなわれていますから、それでゼロならば、その地域ではそれほど感染の流行はみられていないと解釈できます。
数日おきに陽性者が1人出るかどうかといった程度でも、極端に心配する必要はないでしょう。この状態ならば、発見できた陽性者の濃厚接触者をさらに調べ、適宜、隔離などの措置をこうじることで、感染の拡大を防ぐことができるからです。
ですが、陽性者数が 10, 15, 30 … と増えてきたらどうでしょう?
(陽性率はもちろん 10[%], 15[%], 30[%] … )
(実際にはいつも検査数が 100 ということはないですから、大雑把な%で見るといいかと思います。この数値が日に日に増えてきたら、要注意!)
これは大雑把にはその地域での感染伝播の勢いを意味しており、心配する必要があるでしょう。行動パターンを変えた方がいいです。具体的には「不要不急の外出を控える」、「止むを得ず外出したとしても三密(密閉・密集・密接)を避ける」といったことを徹底することです。
潜在的な陽性者数(これは推測するしかありません)
日本は PCR の検査を疑いのある人にのみ実施することで、検査による感染の拡大リスク(例えば、医療機関でウイルスをもらってきてしまう可能性だってあります)を抑えてきました。しかし、3月末頃より都市部では特に感染経路が不明な陽性者が増えてきました。このタイプの陽性者は、
・(まだ検査されていないが既に感染している)周囲の人から感染した
・知らず知らずのうちに周囲の人を感染させている
と考えるのが自然ですから、実際の陽性者数は報告されている数値よりも大きいと考えられます。
このような地域にお住まいの方はより強い注意が必要でしょう。
国勢調査のように無作為にサンプリングして、国や自治体レベルでの陽性者数を推測することは原理的にはできますが、現在(2020/4/6)のところ、このような方向性の検査は実施されていません。
精度はひとまずおくとして、潜在的な陽性者数を統計的な手法で推定することはできます。具体的な出典は控えますが(推定ですので値はまちまちです)、現在のところ、報告されている陽性者数の数倍程度と見積もられています。
猪股弘明(医師:新潟県出身)
(適宜改変)