世界デビュー

医師ならば、DICOM 画像ビューアの OsiriX には一回くらいは触れたことがあると思うが、近年、高額化が進んでおり、私の周囲では OsiriX 5.8 からフォークした Horos ユーザが増えている(こちらは無料)。

Horos は通常の使用、つまり 2Dビューアで画像を閲覧するとか、簡単な 3D 画像を構築するとかといった用途であれば、ほぼ問題なく使える。ただし、動作が不安定であったり、日本語が使えなかったりして、特に日本での普及の妨げになっていた。

私が放浪している間、手持ち無沙汰であった(と思われる)私の仲間がこれらの問題を解決しにいってくれた。具体的には、日本語リソースを追加したり、読めない画像を読めるようにしたり、といったことだ。

私もこの5月くらいからこの動きに合流。手始めに ROI 周りのUI の改変をまとめた

この改良を Horos 本体の方々が気に入ってくれたらしく、この度、私たちのコードが Horos 本体に取り込まれる運びとなった。

インストール後すぐに使えるインストーラー版では、この取り込みはまだ反映されていないのだが、先日更新されたソースコード上では既に結果は反映されている。こんな感じ。

ありがたいことに私の名前も PHAZOR, LLC (=フェイザー合同会社の英文表記)とともにクレジットされている。

OsiriX のユーザー数40万人には負けるとはいえ、世界170ヶ国、12万人が使っているソフトに貢献者として名前が載るというのは、光栄というか嬉しいというか、とにかく良い気分だ。

英文査読誌のファーストオーサーになった場合にも似たような感覚が沸き起こると思うが、こちらはやはり専門家向けだし、医療者の日常業務に直接役に立つということはそう多くないので、その分だけ喜びも抑制される感じはある。内なる充実感という意味ではこちらの方が上かもしれないが。

今回の改変では、ROI 操作時の UI に手を加えたので、ユーザーが直接使う機会もそれなりにあるはずだ。だから「気に入ってもらえるだろうか」とか「さらなる改良を求められるかな」などと想像が膨らみ、その分、わくわく感がある。もちろん、気に入ってもらえない可能性もある。だが、そういったネガティブな反応でも直接的であるが故にある意味嬉しい。

Horos にしても、そこからさらに派生させた HorliX にしても、「メーカーの押し着せではなく、自分たちが必要なものは自分たちでつくるんだ」という強い意思が込められているし、それが旺盛な開発ペースの源になっている。

こういうアプローチに興味を持たれた方には、ぜひとも使って欲しいと思う。

 

猪股弘明


(追記1)なお、「OsiriX と Horos と HorliX の関係がわかりにくい」という声をたまに聞く。ANN2b さんが、

HOROS -WIKIPEDIA 風解説-

HORLIX -WIKIPEDIA 風解説-

に簡潔にまとめてくれているので、そちらをご参照のほどを。

(追記2)2026 年現在、Horos はほぼ開発が終焉。時代の流れを感じる。
結局、継続性という意味では、horos より horlix の方が長生きしている。

 

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電子カルテ記載内容をテキスト処理したい

電子カルテのテキストマイニングに関連して。

MENTAT というのがあるらしい。
https://www.mentat.jp/jp/service/

精神科カルテからテキストデータ抜いてきて IBM ワトソンで解析、治療の難しさなどを評価・予測しカンファレンスなどで使われるらしい。

だからどうしたと言われそうだが、未来感みたいなのはある。

問題は予測精度だと思うので、関係者に問合せ中。

 

なお、私自身も OpenDolphin-2.7m というオープンソースの電子カルテの開発者なのだが(経緯は『OpenDolphin について』で)、医療関係者からそこそこ評価されているのはカルテ記載内容をプレーンテキスト(UTF-8)に書き出すファイルバックアップシステムを実装した点だ。
もともとはクライアント-サーバ間で通信障害が発生したときの臨時記録手段としてこの機能を付け加えたのだが、カルテ記載データの2次利用にも使えるのでは?という声も上がっている。
これに関しては検討中。

 

猪股弘明(精神科医)

 

その後、自然言語処理などにも実際に手を出す。
→『OpenOcean』や『 juman++ で分かち書き』など。

雰囲気つかめますかね?

 

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本田△と設計図共有サイト

W杯後、プログラミングにはまっているという本田圭佑選手のものと噂されている GitHub (日経的にはソフトウエア「設計図共有サイト」。先日、マイクソフトに買収されて話題になった)のリポジトリがこちら。

https://github.com/kskgroup

残念ながら公開されているプロジェクトはまだない。プルリク(=プルリクエスト。改変したソースコードを組み入れてもらうための依頼)送ってやろうと思っている利用者は多いはず。

フォロワーは既に 1.1k 人。

Takashi-Inui とかのアカウントは絶対誰かに取られていると思う。

 

なお、本田△は「本田+三角形」で「本田さん、かっけー」という意味らしい。この言葉が出始めの頃、患者さんに教えてもらった。洒落きいているけど、説明されないとわかんないね。

 

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【悲報】シンガポールの医療システム、ハッキングされる【クラウド大丈夫?】

BBC が伝えるところによると、シンガポールの医療システムがクラッキングされたようだ。

Singapore personal data hack hits 1.5m, health authority says

たぶん、サーバマシンにマルウエア仕込んだのがクラッカー側の勝因かと(この記事だけだと確かなことは言えませんが、システム側が VPN や SSL 使う限り正面突破は難しいので、裏口から侵入!みたいなイメージでクラッキングしたんだと思います)。
一応、私も電子カルテの作者なんですが、「これされたら…ポスグレ(というデータベースソフト)のデータ素抜かれるなあ…外部への送信は、この経路使われて…」とか思い当たるところがありすぎてガクブルです。

安直なクラウド化は絶対ダメだと思いました。

 

電子カルテ

OpenDolphin-2.7m: https://github.com/Hiroaki-Inomata/OpenDolphin-2.7m
ただし、今はメンテもほどほど。プロジェクトはOpenOcean に引き継がれています。
OpenOcean: https://github.com/air-h-128k-il/OpenOcean

 

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他人と何かを「共有」するということ

長らく放置していましたが、そろそろ手を入れていきたいと思います。

最近、嬉しかったのは以前に書いた症例報告(A case of schizophrenia successfully treated by m-ECT using ‘long’ brief pulse)が引用されたのを見つけたこと。

修正型電気けいれん療法により精神症状の改善がみられた薬物治療抵抗性のレビー小体型認知症の1例』Dimentia Japan

が、それ。

 

内容は「レビー小体型認知症(DLB)にm-ECTを施行したらけっこうよかったよ」というもの。

 

…DLB における神経変性や神経細胞脱落が S-D 曲線の右方シフトを引き起こすと仮定すると、mECT によるけいれん発作の閾値を上昇させる可能性がある…

 

 

素朴だが、的を得た考察。右方シフト仮説は、体裁を整えるために5分ででっちあげたことは内緒にしておこう(笑)。

 

以前にも京大の先生方が引用してくれたし、関西を中心に私の方法論広まってないか?

逆に変なのは、この方法論の発祥の地である松沢病院でなぜかこの方法論が定着していないこと。(それともこっそりやってんのかな?)
冷静に考えるとおかしいよね。

ペーパーの類はよく「名刺」に例えられる。パブリッシュされたものだから、外からこう見られたいという思いがそこには詰まっている。そのリファレンスに自分の名前が引用されているのは嬉しいし、内容が適切に接木・シンクロしてあればなおさらだ。そのシンクロの連鎖こそが「共有」の真髄であるように思うのだが、どうだろう?

【参考】ECT における long brief pulse の話題や HorliX (という医療画像ビューア)との絡みに関しては、

RAW ファイルを読み込む -ECT のシミュレーション結果を表示-

に書いたおきました。よろしければご一読ください。

 

 

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