『梅ちゃん先生』と『大森界隈職人往来』

周囲から「視ろ、視ろ」と薦められていた『梅ちゃん先生』を総集編でようやく視聴。開業の方向に誘導しようという意図?だったのかもしれないが、興味を持ったのは蒲田周辺の町工場の様子。

一回目の大学時代にボスから「0.1nm(1nm=10^-9m) 精度で位置決めできる装置をつくれ」という無茶苦茶な指示を受け、拙い図面をひいてここらへんの町工場に何度か足を運んだことがある(ここらへんの経緯は『下から見た ERATO』を読んでください)。「こんなのつくれっかよ!」とか言いながら、最終的には親身になって相談にのってくれた片岡鶴太郎的職人も当時は顕在であった。
ここらへんの事情を知りたい若い人は是非『大森界隈職人往来』あたりを読んでほしい。

ところで、あんまり感心しなかったのは、ここまで誠実な医療に対する志と高度な精密加工技術を持った職人マインドを描いているものの、これらがイノベーション的にはまったく噛み合っていない点。情緒的には、NHK的な結婚という形でしっかり結びついてはいるんですけどね。
当時の英米では、ハクスリーやシュワンが、高度な電子技術を持って生体物性そのものに肉薄していき、それらの遺産が、例えばペースメーカーなどの技術に受け継がれ現在の隆盛に繋がっている。

こういったことを考えると、「過去を振り返るのはいいんだけど、現在や未来につながる視点も持とうよ」ともの凄く野暮な感想を持ってしまった。

猪股弘明(精神科医)

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