ラジエーションハウスと SWI

えらくマニアックなところに目を付けたフジ月9ドラマ「ラジエーションハウス」、通称「ラジハ」。

こんなドラマやってたんだ。

漫画の1話目を読んだが、主人公がやったのは、SWI(Susceptibility Weighted Image 磁化率強調画像)というやつかな?

(Zスライスが選択された上で)座標(x, y)の位相θは

θ(x,y)=∫γ{B0 + (Gx・x + Gy・y)}dt    積分範囲は 0~TE

となるらしい。

B0 = μ0(1 + χm)H

なる関係があるから、組織間で磁化率 χm が違えば、それがコントラストとなってあらわれる、というのが理屈だろうか。(なお、銀歯は銀-パラジウムなどの合金。特にパラジウムは磁化率が 5.15×10-6と周囲の組織より高い)

実際には、銀歯の影響でボケてしまった強度画像に、位相画像から磁化率(か、関連数値)を逆算して取得し、それを強度画像に作用させ、隠れていたコントラストを描出させた、ということでしょうか。

漫画では、phantom.tif という TIFF 画像を読み込んできてなんかやってますね。ファントムでのデータを使って補正までかけるという芸の細かさw

猪股弘明(精神保健指定医)


MRI の基礎をすっ飛ばしていきなり応用編となってしまいましたが、もうちょっと基本から説明したものを某調剤薬局さんのブログに寄稿しましたので、ご興味があればご一読ください。

MRIってなに?-その1-

MRIってなに?-その2-』(「スピン」の説明してあります。測定原理的にはここがキモでしょうか)

MRIってなに?ーその3ー磁場の中に入るとなぜ体の中が見えるのか?

私も MRI の専門家ではないんですが、これくらいの知識があると画像の解釈がいくらか正確になるかと。

 

ブラジル・ガラパリと研究デザイン

ビタミン飲料業界におけるレモン並みに「自然高放射線地域」として引き合いに出されるブラジル・ガラパリ地方であるが、その健康への影響を調べた資料がネット上で手に入る。

http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-02-07-03

話は一見するとわかりやすい。

A「ガラパリの住民202人とその対照地域の住民147人についての調査結果によると、(抹消血リンパ球の)染色体異常(欠失、2動原体、リング)の頻度はガラパリと対照地域とでは有意に異なっており、検査細胞数中の染色体異常の割合(%)は対照地域の0.98%に対して1.30%とガラパリの方が高くなっている」

B「しかしながら、エスピリト・サント州の夫婦8000組とその妊娠終結(生・死・流産)44,000回について、産児の性比、先天性異常、流産、死産、乳児死亡、生殖能(受胎率、出産率)を調べた結果によると、対照群と比較して、「良い」影響も「悪い」影響も認められなかった」

ということで、C「染色体異常は生じるが、妊娠出産に関しては問題なし」と解釈できそうだが、たぶんそういう結論にはならない。

なぜなら、A と B では母集団が違うから。(なお、ガラパリはエスピリト・サント州にある)

C をいうためには染色体異常を調べたガラパリの集団の夫婦と妊娠終結を調べなくてはならないはずだが、どういうわけかこの研究デザインでは妊娠出産に関しては母集団を広げてしまっている。私の感覚ではこれはおかしい。例えとしては不完全だが「××川周辺では確かに水俣病類似の症状を示す患者が有意に多いが、××川のある○○県全体と他の地域では差はない。だから、××川周辺は安全だ」っていってるようなもんでしょ。特定の「濃い」地域を全体に還元しちゃえば、そりゃ薄まるよね。あと、便宜的に「妊娠出産」と書いたが、実は妊娠に関しては、このデータは何もいってない。妊娠終結44,000回がデータだから、妊娠のしやすさなんてことはこのデータからはわからない。

つっこみどころ満載のこの研究デザインであるが、C が仮にいえたにしても D「だからガラパリ程度に放射線量が上がっても健康(少なくとも出産に関しては)には被害はない」とはいえないはずだ。

この手の研究は統計的な均質性、つまり比較対象には質的な差はないという前提から出発しているが、実際のデータはバイアスがつきものでこれを評価する必要がある。すぐに思いつくのは「ガラパリでは長年に渡る放射線被曝の影響を低減するために既に選択圧がかかっており、放射線耐性を持った個体(例えばDNA修復を助ける特定の酵素の活性が高い個体)が有意に多い」というもの。

このバイアスの影響を打ち消すためには「他地域に住む人をガラパリに連れていき、その集団とネイティブのガラパリの人たちと比較する」ことが一案だが、しかしこれは福島で今おこっていることに限りなく近い。

一部の識者から「避難指示の範囲を拡大しないのは人体実験をしているようなもの」という指摘があるが、それは以上のような理由からだろう。