こういうのをタナボタというのだろうか、かねてから小林慎治(当時、京都大所属)という人から 「OpenOcean は GPL に違反している」という根も葉もない批難を受けていたのだが、別系統でこの件に関して彼の現所属組織(保健医療科学院)から謝罪のメールをいただいた。
単なる彼の事実誤認だと思っていたのとネット上での彼に関するあまり良くない噂 (ただし、これ患者さんが一方的にー京都大学や岐阜大学ではなくー愛媛大第一内科 の小林慎治という名の医師を罵っているだけなので、この情報を頭から信用している訳ではないです)から個人的に関わりたくないと思い放置していたのだが、OpenOcean とは別件のオープンソースのプロジェクトで何かトラブルを起こしたらしく、当方にも現所属先の保健医療科学院の幹部の方から事実確認などの照会を受けた。
なるべく主観的な感情などを入れず、事実と明らかに異なる点に関していくつか返答させてもらった。
そのうちのいくつかを書いておくと
・彼は www.moss.gr.jp というサイトで
「OpenOcean は dolphin-dev の Fork の Fork の Fork」
と紹介していたのだが、これは完全に誤り。
dolphin-dev/opendolphin → Hiroaki-Inomata/OpenDolphin-2.7m → OpenOcean
の順で Fork しているので明らかに一つ多い。正確には Fork の Fork。
・「(皆川和史という人の)著作権表示を隠蔽しているから GPL 違反」という主張をしているのだが、おそらくこれはスプラッシュ画面などで (C) air-h-128k-il という表示をしたことに起因していると思う。が、これに関しては当時の LSC に確認を取ったところ「配布元がわかりにくくなるので、むしろスプラッシュ画面などの(C) 表示は変えてくれ 」という返答をもらっていた。その旨の回答をさせてもらった。
また、ついでで言っておくと LSC からは「皆川は現在では会社にも出勤しておらず、OpenDolphin の担当ではないから、気にしなくてもいい」という回答ももらっている。
さらにいうと、後期 LSC やメドレーからは「皆川が OpenDolphin の著作権者であるという主張はかつてはなされていたが、現在では確かめる術もない。いわゆる原始著作権者ではなく、著作権表示を契約上保持していただけのようだ」との回答をもらっている。
(要するに皆川は本来の意味での著作権者ではない という示唆です。あれだけのコード量ですから、全部が全部皆川さんが書いたとは私も思ってませんが、当初考えていたよりコードを著作権ごと買い取っていた部分が多かったようです。もちろん、こういった部分の著作権は今後は-契約にもよるのですが-メドレーが保持することになります)
・上に関することでもあるが、GitHub 上で「一般公開」していたソースコード上では、author 表示の類は一切変えていない。
・GitHub 上で OpenOcean のメンテナをしていた際、小林慎治がプルリクエストを送ってきたのだが、一方的に「マージせよ」と言い張るのみで迷惑した こと。(一般的にオープンソースのプロジェクトでは、メンテナがレビューしたのち、メンテナの責任においてマージする)
と言ったところだろうか。
他にも細かい点も指摘したのだが、主な点はそんなところだろうか。
保健医療科学院の担当の方はかなり丁寧に調べてくれたようで、他のプロジェクトの関係者にも調査をしてくれたようだ。
もちろん、他のプロジェクトの調査内容の詳細は私はわからないのだが、なかには、法律違反を煽る内容もあったとか。
何が決定打になったかわからないが、結果としては「国家公務員法違反(守秘 義務違反、信用失墜行為の禁止、政治的行為の制限に関する違反)の疑いがあるので厳重注意をした」という処分になったということだ。
なお、担当者からのメールには「不快な思いをさせて申し訳ありません」という謝罪の言葉も添えられていた。
この言葉には、いくらか救われた。有り難かったですね。
air-h-128k-il
(参考1)これは特に誰というわけではないですが、けっこう SNS のアイコンなどに無頓着な人がいるようなので、一般的なお願いということで挙げておきます。
著作権法違反が疑われるコメントの掲載はできかねます
(参考2)ちょっとマニアックですが GitHub も SNS 的要素はあります。プルリクエストを送る場合やイシューを立てる場合、内容もさることながら、アイコンなどにもやはり気を使いましょう。
オープンソースの世界 〜残酷な自由さ〜
(参考3)小林慎治の X(twitter) チェックしたら、事実誤認が多すぎたので、所属先に連絡したら、結局、鍵垢になったようだ(2023/6 〜)。
検証もしない思いこみだけで書いた内容が多かったので、これは妥当なチョイスでしょう。
→2025.9.7 時点でチェックしたら、また復活してました。
聞くところによると今でも OpenDolphin は、皆川和史・増田茂・松村哲理らが作成したという主張を引っ込めてないとか。懲りないなあ。
反論の意味を込めて『OpenOcean が GPL 違反? 』・『小林慎治氏の OpenOcean に関する事実誤認 』を公開しています。
ここら辺の情報を把握している商用開発元がかなりはっきりと「そうではない」と否定しているのにこういった主張をやめないのは本当に不思議です。どこかの組織や個人と何か贈収賄的な関係があるんですかね。
あと、この一件が影響しているかどうか不明ですが、小林慎治さん、保健医療科学院は既に辞めており、2023.9 からは岐阜大学 医学部附属病院 先端医療・臨床研究推進センター(特任講師)の所属になってます。
(補足)若干、マニアックな内容なのでわかりにくいかもしれません。
プログラムで表記される (C) マークについて(すごく大雑把にいうと)、これは通常は「財産権としての著作権を管理している組織若しくは個人 」を表示していると理解されていると思います。LSC やメドレーの担当者が「配布元がわかりにくくなるので、むしろスプラッシュ画面などの(C) 表示は変えてくれ」と言っていたのはこの考えが背後にあるためでしょう。
もうちょっとわかりやすい例でいうと適当なPCでコマンドラインを操作しているときに
(C) Microsoft
(C) FSF
といった表示が出てくることがあります。
これは「このシステムや個々のコマンドの著作権を管理しているのは、以下の組織です」と言った程度の意味です。
ライセンス上表記しなければならない人(著作者人格権を持っている法人や個人)がいたとしても、このような表記になっています。
なお、プログラムの著作権法上の取り扱いのかなり基本的なことですが、日本の著作権法の場合、職務著作によるプログラムの著作者人格権は法人であってもかまいません(ここが小説や歌謡曲などの文芸作品と違う点です)。必ずしもコーダー=著作権者になるわけではないです。
この「財産権としての著作権を管理する主体としての (C) 」のわかりやすい例がなく、うまい説明ではないなと思っていたのだが、良い例を見つけた。
日本音楽著作権協会 (Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers JASRAC)だ。よくCDなどで
マークを見かける時があるが、これは (C) JASRAC と書くのと同じで、「この作品の財産権としての著作権は JASRAC が管理してますよ」という意味だ。
ちょっと前にとあるロックバンドのボーカルが「自分が作成した楽曲であっても、勝手に好きな時に利用できない。団体からの許可が必要」と言っていたのは、この事情をよく表している。
そもそも LSC ドルフィンのログイン画面にも (C) Life Science Computing Corp などとこの考えに基づく表記がある。2018 の経営陣の刷新を機に、他の有志や団体にもこの表記方式を許可するというのが LSC の方針で、LSC との話し合いの際にはこういったことの実務的な取り扱いを決めていたにすぎない。
なんでこれが (C) author の方、つまり GPL の著作権表記、になるのかわからない。
思うに小林慎治という人は、(嫌味でもなんでもなくて)少しの関連性があればなんでもかんでもオープンソースに結びつけるのではないだろうか。
われわれはいい大人なので、複数の意味が取れる時には、会話の中でごく自然にチューニングして、その文脈での意味を決定する。
この場合は、(C) 著作権管理主体(運営主体) の方だ。
当時のことを知っている人は思い出して欲しいのだが、2018 年当時、LSC は試用のクライアントバイナリとサーバの Docker 版を提供していたし、GlassDolphin も確か同様にクライアントバイナリを提供、われわれも OpenOcean を公開して一石を投じようと企図しているところだった。
複数のドルフィンのバイナリとそのソースがネットに公開されている状態で、それらが全て (C) LSC となっていたら、一般ユーザーからしたら混乱するだけだ。
特にわれわれのクライアントバイナリなぞ LSC の Docker 版サーバと通信できた。不具合が起きた時、OpenOcean バイナリが (C) Life Sciences Computing だったら、まずいであろう。
LSC はその状況を鑑みてポリシーを変更したのだろうし、われわれはそれを尊重すべきことだと思い、それに従ったわけだ。
もちろん、(C) マークとは別に、著作者人格権に基づく(and/or GPL などに基づく)クレジットをしなければならない場合も多いです。
ですが、これは、それが従うべき各国の法やライセンスに従って publish すればよい話で、著作権の、特に (C) マークの表記に関連づけて議論するような話ではありません。
特に上記の件では、説明したように当事者間で「それでよい」という合意ができている以上、第三者が口を挟むような案件ではありません。