ROI

ROI という言葉がある。Region Of Interest のことで、文字通り関心領域と訳される。

医療画像を見たとき、慣れた医師であれば、どの部分に注目して何を計測すればいいかわかっているが、DICOM Viewer はたとえ OsiriX MD といえども自動でこの作業をおこなってくれるということはない。したがって、操作者が「関心」領域をコンピュータに教えなければならない。

例えば、心胸郭比を求める場合は、以下のような操作になる。

まず、計測したい画像を立ち上げる。次にメニューバーよりアイコンの機能を変化させるボタンを押下。心胸郭比の場合は、関心領域は直線になるので、Length を選ぶ。

開始点でクリック、ドラッグして、終了点で再度クリック。

するとその直線の撮像時の実空間での距離が計測できる。

心胸郭比は、12.500/29.455 x 100 = 42.438 [%] ということになり、心肥大はないと判定できる。ちょっと直線の引き方が甘いのは大目に見てほしい。

 

と、なんでこんなチュートリアル的な内容を柄にもなく書いたかといえば、この分野で早速リクエストがきたから。海外の方の要望は、ド直球という感じですね。

確かに、関心領域が近接した場合、表示が見にくい。

なので改変。

 

 

英語版では、omrd さんの要望に沿って不要なレーベルを全て削ぎ落とす。日本語版は、漢字の視認性は捨てがたいと思い、残しておいた。

なお、これはぐりぐりのテストコードというやつで、狙った動作をさせるために変数管理などかなり無理をさせている。色の調整などを含め、リリース版に含めるためには、もうちょっと修正が必要。

 

(追記)なので、まず、色目の修正。

のデフォルトのグリーンから始まって、トパーズイエロー→キャロットオレンジ→マドンナブルー→…の順で描画する。

ただし、これは描画途中であって、いったん手を離して ROI を確定すると、最後に確定した ROI がデフォルトのグリーンで表示される。文字にするとわかりにくいですが、使ってみるとたぶんこの動作は一発でわかると思います。

また、色もいわゆる「洋色」メインにしました。

実装も「オブジェクト」・「クラス」を意識してコーディングし、かなりシンプルな形になったかと思います。

なるべく一般性を失わないようにと心がけたせいか面積系の ROI でも一発で狙ったように動きました。

キャロットオレンジ→トパーズイエロー→デフォルトグリーンの順に囲んでいったので、最後に書いた部分がデフォルトのグリーンで描画されているわけですね。

「海馬の体積が何パーセント減って…」などというとき役に立つかと。

(参考:『アルコール依存症患者では視床枕の体積減少がみられる』

 

上記の改変の結果、今のところ ↓ のような操作性になっています。

 

(追記2)上記の機能は、ROI-color-rotation-UI という呼称が割と一般化したようです。

ソースコードを提供した Horos さんのリリースノートにも、この表現が使われています。
色がくるくる変わっていく感じが表現できていて、なかなかいいかと。

 

解剖ちゃんホーリックス

関係者の公開許諾が取れたのでちょっと書かせてもらうと、ホーリックス(HorliX)にはアイコンを変更したバージョンがいくつかあり、そのうちの一つは群馬大医学部解剖学教室向けである。

群大解剖学教室は、最近の大学らしく情報公開を意識したネット活動をおこなっており、HPはかなり凝っている。twitter 公式アカウント @Kaibo_chan にも絵師 @robops さんデザインの‏可愛いキャラアイコンが設定されている。

「解剖ちゃん」という。

私が、Horos に絡み始めたのもこのアカウントの中のひ…  いや解剖ちゃんがそそのかしたせいである。

確か「Horos 実習で使う予定なんだけど ”なんちゃって” じゃない正式な日本語化ってできないかしらね?」みたいな感じだったと思う。

その話はひとまず置くとして、解剖ちゃんは(自分たちが講義で使いたいという現実的な目的があるにせよ、それをなるべく安く使いたいという要望はあるにせよw)時にめげそうになる私を励ましてくれた。内輪でやった βテストにも参加してくれた。その感謝の意を込めて、記念に公式キャラをアイコン化したホーリックスを一台贈呈したのだった。

これである。

なんだろう、このメインビューとドックアイコンのミスマッチ感は(笑)?

これ以上ないというくらい機能主義的にデザインされた HorliX/Horos/OsiriX の UI に、萌え要素がちょっぴり入った解剖ちゃんアイコン。私も最初は正直「あれ?」と思っていたが、使っていくうちに愛着が出てきた。解剖ちゃんもアプリ起動時に「私が、私が跳ねているっ!」と喜んでくれた(と思う)。

実際に実習で使われるかどうかはまだ不明だが、もし使われるなら、将来医師になる学生さんたちの良い思い出になってくれればと思う。10 年後に「そういえば、解剖の時、変わった DICOM ビューア使ったよなあ。あれ、今もあるの?」などと思い出してもらえれば、開発者としては嬉しい限りだ。

 

最後にはなりますが、キャラデザインのブログ記事での使用・紹介、および Mac app へのアイコン化を対価なしに快諾していただいた @robops 氏に深く感謝いたします。

 

(追記)今度は、昔、ウチでバイトしていた学生さんが面白いことやってくれました。


ぼくのかんがえたさいきょうのウマむすめ-ホーリックス-』(秋葉ちゃんねる

やや、悪ノリですが、嫌いではないので、許す(笑)。

一方、『ホーリックス、Horlicks、そして HorliX』は打って変わって好まとめ。


真面目に書けばできるじゃん(笑)。

(追記2)この記事、「ホーリックス」でググってもけっこう上位に来てますね。ええと上で説明しているのは、アプリの方の HorliX (ホーリックス)です。
競走馬のホーリックスは Horlicks 。母が Malt だったので、麦芽飲料の Horlicks にちなんで命名されたようです。
若駒の頃は、そんなに目立たない馬だったようですが、真面目な性格だったようで、その後、本格化。1989 のジャパンカップでオグリキャップと死闘を演じ、見事、2’22″2 という芝 2400m の世界レコードを打ち立てました。
HorliX は Horos + OsiriX で HorliX なんですが、競走馬の方も意識はしていてそのアイコンは、「大海原に白馬」となってます。もちろん、ホーリックスが芦毛だったためです。

 

DICOM XA

医療画像を吐き出す医療機器は、レ線撮像装置やCTなどの他にもMRIや超音波などがある。ダイコムの世界では、それらの機器/画像を区別するためによくモダリティという言い方をする。CR, CT などの特徴的な略語が与えられている。

radialist 先生が取り組まれていたのは、XA (X-ray Angiography) の画像複号に関する事案だ。いわゆる「透視」というやつで、インターベンションはこの画像情報によるアシストがなければ、たぶん仕事にならないと思う。

リアルタイムではもちろんだが、後の利用のためにも手軽に再生できることが望ましい。

もちろん、OsiriX MD や病院備え付けの高額なビューアなどでは再生できるし、おそらく HorliX/Horos でも典型的なものなら再生できる。

問題は、これを再生できるお手軽な windows 用ビューアがないって話で、医局などでちょっと画像を見てみたいというような場合、かなり不便だと思う。HorliX/Horos のソースコード上で参考になりそうな箇所をみつけたら、チェックしていきたい。

 

MPR

一般の画像処理には疎い私は、最初、MPR と言われてピンとこなかった。

MPR とは Multi Planer Reconstruciton の略で、3次元モデルを適当な断面で表示させたものということでいいと思う。

それなら、わかる。

今、HorliX は、テストをしているが、その時「カラーで MPR ができるのは OsiriX MD だけだ」というようなことを言われた。

その言葉が何を意味しているのかわからないのだが、こういう画像のことだろうか?

 

CT の画素を適当なパレットで着色して、任意の断面で表示させるということなら、それほど難しくないような…。

 

船出

github リポジトリの方は大掃除となったが、ファイル構成などを自分好みに変えたので、かなりすっきりした。

今の問題は、ローカルのリポジトリの肥大化で、調べたら20Gを超えていた。

アーカイブしている app がけっこうあるとはいえ、とんでもないサイズになったものだ。今では、ビルドするだけでも10分以上はかかる。→ Ver1.0.7 にいたってはめでたく? 30 分超え。もう笑うしかない。

マカーでもなんでもない私がこれまで開発に使ってきたのは、MacBook という機種だ。マックのノートの中では最も非力なマシンで、このままでは計算資源という点から、開発に支障がでそうだ。

 

技術的には、読めない DICOM ファイルが特定され始めた。問題が明確化されるという意味では良いのだが、意外に根が深そうなので、その点はやや不安。
今のところわかっているのは、Philips の超音波関連のスタディで、部分的にしか読み込めない。weasis でも試したが、やはり、部分的にしか読み込めなかった。(なお、本家 Horos は無条件に crash する)
某大学の解剖学教室で調べてもらったところ、OsiriX MD では問題なく読み込めるようである。さすがだ。

解析はこれから。Xcode と向き合い始めてから、ほぼ一月。これからが本番といったところだろうか。不安な面もあるが、わくわくもしている。

なお、これに関係して、ネットで情報収集をおこなったが、

Dr. Radialist’s Diary

が興味深かった。某有名病院の循環器科の先生の公開ブログ、と思いきや、ダイコム関連の話題も豊富。

やはり、動画関係のダイコムで苦労されていた。DICOM XA という規格があるのを始めて知った。

HorliX プロジェクトは、もともとは、 OsiriX が高額になりすぎて手が出しにくくなったから、Horos を日本語環境で使いたいから、というかなり現実的・個人的な目的で始められたが、その先は意外に広いようである。

(追記)ところで DICOM XA の規格のキモは、JPEG-LS の展開・圧縮だと思うが、日本語の情報は極めて少ない。

JPEG 2000 と JPEG-LS と Lossless JPEG

で、オープンソースソフトウェアを利用して実現する方法が開示されているので、興味のある人は一読を勧める。